頑丈で広帯域、超低コストで中インピーダンスのRFプローブ

要約

このアプリケーションノートでは、頑丈で低コストなRFプローブを、実験室で簡単に作成する方法について説明します。50Ωの回路で約400kHz~1GHzにおいてこのプローブを使用すると、ローインピーダンス回路の故障診断時に、相対測定を行うことができます。

はじめに

実験室で入手可能な材料で、頑丈で低コストなRFプローブを簡単に作成することができます。このプローブは、ローインピーダンス回路を故障診断するときの相対測定を行うのに役立ちます。アプリケーションとしては、スプリアスの原因の特定、相対スプリアスレベルと高調波レベルの測定、および故障したアンプやSAWフィルタの特定などがあります。回路の50Ωポイントをプローブで測定するときには、約400kHz~1GHzのプローブが役立ちます。

プローブの設計仕様

RFプローブは、SMAコネクタと、このコネクタの後の直列コンデンサと抵抗器、およびプローブ先の役割になる短いセミリジッドケーブルで構成されています。図1を参照してください。SMAコネクタは、標準SMAケーブルを介して、スペクトルアナライザに接続します。このプローブの中インピーダンス(1kΩ)によって、ローインピーダンスである50Ωの回路において、このプローブは使用することが可能で、回路に重大な影響を及ぼすことはありません。抵抗値は、回路のインピーダンスに比べて大きな値(20:1程度が良好です)を選択します。ブロッキングコンデンサの値は、対象となる周波数帯域の中心で自己共振するように選択します。これによって、抵抗値に対してローインピーダンスを確保することができます。ここで選択した0603サイズの部品は、1000pFと1kΩです。

図1. 頑丈なRFプローブ

図1. 頑丈なRFプローブ

プローブの性能

図2は、プローブの応答の平坦性が、400kHz~1GHzにおいて1dBであることを示しています。これによって生じる測定誤差は、通常のずれに比べて小さな値です。アンプが故障したときなどの故障診断時に見られる通常の誤差は10dBを超えます。さらに、同軸ケーブルを除去し、プローブ先端として抵抗器そのものを使用することで、プローブの最大周波数が1.9GHzにまで延長されます。この手法は、3GHz付近でピークになる共振を低減します。この改造プローブは破損しやすいですが、同軸ケーブルの寄生容量が応答の平坦性に及ぼす影響の程度が下記グラフに示されています。図1の長さ11mmの同軸ケーブルは、「短い同軸ケーブルで優れたRF性能獲得」と「半田付けの面積を増やした長めの同軸ケーブルによる機械的な堅牢性の改善」の間のトレードオフの結果です。

図2. 50Ωのインピーダンスポイントをプローブで測定するときのRFプローブの周波数応答

図2. 50Ωのインピーダンスポイントをプローブで測定するときのRFプローブの周波数応答

50Ω/1050Ωの簡単な電圧分圧器を想定した場合、プローブのSMAコネクタ端の測定電力レベルは、プローブ先端での測定電力レベルよりも下回り、理論的に-26.4dBとなります。これは、図2の400kHz~1GHzのグラフにかなり一致しています。図2の周波数応答は、較正済みの信号発生器の出力両端に接続された50Ω抵抗器の両端をプローブで測定することで得られます。さらに、50Ω回路と並列に接続されている50Ωのスペクトルアナライザに1kΩを加えることを想定した場合、理想的な1kΩのプローブによって、50Ω回路に-0.2dBだけ負荷がかかります。

プローブの組み立て

図1に示したプローブを組み立てるには、最初に、50Ωのマイクロストリップ伝送ラインとSMAバルクヘッドコネクタが付いている不要になったプリント基板を切断します。慎重にストリップをカットしてギャップを空けて、ここに1000pFのコンデンサと、その後に1kΩの抵抗器を半田付けします。このコンデンサと抵抗器はどちらも0603サイズの部品です。直径0.086インチのセミリジッド同軸ケーブルを11mmの長さに切断します。一方の端で芯線を2.5mm、もう一方の端で2mm剥き出します。短い方の端がプローブ先端になります。同軸ケーブルの下の残りのストリップを取り除いた後、長い方の端を曲げて、抵抗器の近くのストリップラインに半田付けします。次に、外側の導体からすぐ近くのグランド金属部まで半田ブリッジによって、同軸ケーブルを取り付けます。十分な量の半田を使用して、同軸ケーブルをプリント基板にしっかりと取り付けます。必要な場合は、銅箔テープを使用して隙間を埋めます。グランド端子として機能するよう、同軸の芯線の断片を同軸ケーブルに並ぶように半田付けします。プローブとグランドの先端に小さな半田の塊を付け加えて、回路と適切に接触するようにします。

この記事に類似した内容が、2004年10月号の『RF Design』誌に掲載されています。