電流検出アンプをシャットダウンする2つの方法
要約
このアプリケーションノートはハイサイド電流検出アンプをシャットダウンする2つの方法を説明します。これらの方法はどちらも次世代ポータブルマルチメディアデバイスでのパワーマネージメントに最適です。これらの方法によって、ユーザは同じ満足度を享受しながら、バッテリ寿命を延長することができます。
同様の記事がマキシムのエンジニアリングジャーナルvol. 63 (PDF, 907kB)に掲載されました。
概要
通常のオペアンプとは違い、ハイサイド電流検出アンプは入力ピンと電源ピンの間に静電放電(ESD)保護用ダイオードが内蔵されていません。そのため、VCCをはるかに超えるコモンモード電圧で動作することができます。また、標準電流検出アンプのVCC端子をグランドに落とすとシャットダウンモードとなり、入力ピンからわずかな漏れ電流のみが流れ、自己消費電流が流れなくなります。つまり、ハイサイド電流検出アンプのVCC端子はシャットダウンピンとして使うことができます。
方法1
LDOなどを電源として回路基板上の複数のICが動作するバッテリ駆動型デバイスで、ハイサイド電流検出アンプのMAX4173Fを使っているものがあるとします。電力を節約してバッテリ寿命をできる限り長くしたい場合、頻繁にLDOをオフにすることになり、電流検出アンプも一緒にオフにすることになります(図1)。
通常、MAX4173Fの入力は電源ラインの電流検出抵抗に接続されています。シャットダウン信号をシミュレーションするために、20mVP-Pの差動AC信号を20mV DC信号でオフセットし、10Vのコモンモード入力電圧に乗せたものをMAX4173Fに印加します。VCC端子の0V~5Vの方形波がVCCの損失をシミュレーションする波形です。 VCCが5Vとなっている間、アンプはアクティブモードで動作します。しかし0Vとなっている間はシャットダウンモードとなります。アンプの利得は50であるため、得られる出力は以下のようになります。
50 × (20mVP-P + 20mV)
つまり、1VP-Pのサイン波に1Vのオフセットがかかったものが出力されます(図2)。5Vの電源が印加したときはアンプがアクティブになり、この通りの波形が出力されています。VCCが0Vになるとデバイスはシャットダウンモードとなって、出力も0Vとなり、入力電流(電源電流)の消費がなくなります。
方法2
電流検出アンプをシャットダウンする方法は、もう1つあります。nMOSトランジスタをグランドパスに入れ(図3)、ロジックレベル信号でトランジスタをオン/オフする方法です。トランジスタをオンにすると、アンプは通常の動作となります。トランジスタのドレイン-ソース間で電圧降下が発生しますが、入力に対するオフセットと利得の誤差は無視できる範囲にとどまります。トランジスタをオフにするとグランドがフローティングになり、アンプもオフになります。
図4の出力波形を見ると、期待した通りの動作が得られていることがわかります。5Vが印可されている間は入力信号の増幅が行われ、0Vとなっている間はフローティングでVCCとほぼ等しい電圧が出力されています。シャットダウンの間、VCC端子を流れる漏れ電流はわずかに4µAでした。これは測定器の入力インピーダンス1MΩによるものです。測定器を接続していない状態では、nMOSトランジスタの漏れ電流のみがVCCから流れることになります。RS+端子とRS-端子の入力電流は、わずか0.3µAです。
まとめ
このようにMAX4173Fは、VCC端子をグランドに落とすか、nMOSトランジスタでグランドとの接続を切るだけで、シャットダウンモードとすることができます。最初の方法は、アプリケーションでLDOをオフにできるかどうかによります。2つ目の方法では、外付けFETが必要になります。いずれもポータブルな次世代型マルチメディアデバイスの電源管理に便利な方法です。これらの方法はバッテリの長寿命化を実現することができ、ユーザ使用体験も好評になります。他のハイサイド電流検出アンプも、同じような使い方が可能です。
「Power Electronics Technology」の2007年11月号にも、同様の設計アイデアが掲載されています。