183.6MHz IF用に最適化されたGPS IF LCフィルタをMAX2538に使用

要約

このアプリケーションノートでは、MAX2538に使用するための183.6MHz用GPS IFフィルタの設計について説明します。シミュレーションと測定によって得られた応答と性能のデータを以下に示しています。フィルタは、バターワース応答の2次フィルタで、コンデンサをカップリングしています。挿入損失は3.2dBです。GPSカスケード利得は28.9dBで、ノイズ指数は1.8dBです。

MAX2538の概要

LNA (低ノイズアンプ)およびミキサMAX2538は、セルラとPCSバンドでのCDMA (Code Division Multiple Access:符号分割多元アクセス)アプリケーション用に最適化されています。MAX2538は、AMPS、デジタルセルラ、およびデジタルPCS用に切替え可能な信号経路を設けることによって、トリプルバンド/クワッドモードのアプリケーションに対応します。ミキサには、いずれのミキサ入力ポートでも区別なく使用できる切換えIFポートが用意されています。また、このファミリの全製品は、GPS (Global Positioning System:全地球測位システム)ダウンコンバージョン用のLNA/ミキサ/LO (局部発振器)の経路を内蔵しています。

目的

183.6MHzのGPS IF用に「1kΩでコンデンサ結合のバターワース2次LCフィルタ」を設計し、IF SAWフィルタの使用を廃止する(このソリューションによりコストとPCB (プリント回路基板)のスペースを節減)。


ステップ1:


簡素化と設計時間の短縮のため、フィルタ設計ソフトウェアを使用します。この例では、「Filter Solutions 8.1」*を使用しています。

フィルタ設計パラメータを以下に示します。

コンデンサ結合のバターワース2次バンドパスフィルタ
FC = 183.6MHz
BW = 15MHz
ZIN = ZOUT = 1kΩ
インダクタQ = 35~50
コンデンサQ = 350~500

図1.

図1.

以下の回路(図2)および周波数応答(図3)は、Filter Solutionsソフトウェアを用いて得られた結果です。図3に示す、上側の水色の線は、フィルタの部品に損失がない場合を示しており、赤色の線は、部品に損失がある場合に予測される性能を示しています。

図2.

図2.

図3.

図3.


ステップ2:


MAX2538 GPSミキサモデルを使用して、MAX2538 GPS差動ミキサ出力(ピン20および21)と1kΩ IFフィルタ間のマッチングネットワークを設計します。

図4.

図4.

ステップ3:


高周波回路シミュレータを使用して、GPS IFフィルタにマッチングしたGPS IFフィルタの周波数応答をシミュレートします。この例ではシミュレータにAgilent ADS 2002を使用しました。受動部品の数を削減して挿入損失を低減するため、マッチングネットワークに共振タンク(入力側の共振器)を組み込んで、ミキサの出力インピーダンスと1kΩフィルタをマッチングさせます。

図5.

図5.

図6は、MAX2538 GPSミキサにマッチングしたGPS IFフィルタの周波数応答を示しています。

図6.

図6.

ステップ4:


Agilent ADSで得られた回路を実装した後、GPS LNA入力からGPS IFフィルタ出力までの、MAX2538のカスケード測定を行いました。

図7.

図7.

テスト条件

VCC = 2.85V

FRF = 1575.42MHz、PINRF = -40dBm
IF = 183.6MHz
FLO = 2087.73MHz、PINLO= -7dBm
GPS LNA利得 = 17.5dB
GPSミキサ利得 = 10dB
GPS RF SAWフィルタ損失 = -1.8dB

フィルタの出力は1kΩであるため、測定目的のためにのみ出力端に1kΩの抵抗を使用しています。カスケード利得を計算するため、50Ω~1050Ωの間の不整合によって生じる減衰量に、測定した利得を加算しています。

減衰量 = 0.5 × |20log(50 / 1050)| = 13.22dB

カスケード利得 = 測定した利得+0.5 × |20log(50 / 1050)| (LNA入力から1kΩ出力(GPS IF出力)まで)

カスケード利得 = 15.7dB+13.22dB = 28.9dB

カスケード利得 = LNAの利得 + RFフィルタ損失 + ミキサの利得 + IFフィルタ損失 = 28.9dB

ディスクリートGPS IFフィルタ損失 = +28.9dB - 17.5dB + 1.8dB - 10.0dB = 3.2dB

カスケードNFは、LNA入力から1kΩ出力(GPS IF出力)までを測定します。

カスケードNF = 1.8dB

IF部で使用する部品の値:

C1 = 1.6pF ±0.1pF GRM36COG1R6B050 Murata (0402)
C2 = 1.1pF ±0.1pF GRM36COG1R1B050 Murata (0402)
C3 = 11pF ±0.1pF GJ61555C1H110JB01B Murata (0402)
L1、 L2 = 100nH 0603CS-R10XJB CoilCraft (0603)
L3 = 56nH ±5% 0603CS-56NXJB CoilCraft (0603)
R1 = 5.6kΩ ±1%

*Filter Solutionsは、Nuhertz Technologies, L.L.Cの製品です(http://www.filter-solutions.com)。