DN-263: I2Cバスのホットスワップとバッファ
サーバー・システムが大きくなるにつれ、サーバーを監視する制御回路を搭載した入出力(I/O)カードもそれに比例して枚数が増え、複雑化してきました。ダウン時間ゼロが要求されるシステムでは、電源の入ったバックプレーンへI/Oカードを挿入する必要があります。多くのICベンダーが、電源とグランドのラインを安全にホットスワップ™ するチップを開発してきましたが、I2C™システムおよびSMBusシステムのシステム・データ(SDA)ラインおよびクロック(SCL)ラインを「ホットスワップ(活線挿抜)」するモノリシック・ソリューションはこれまで誰も開発しませんでした。これらのシステムの拡張により、各I/OカードのSDAとSCLの容量がバックプレーンの容量に直接加わるため、立上り時間と立下り時間の仕様を満たすことが困難になりました。LTC®4300-1により、ユーザーは、バックプレーン上で進行中のデータ・トランザクションを損なうことなしに、I/Oカードを電源の入ったバックプレーンへ差し込むことができます。双方向のバッファも備えており、バックプレーンの容量とカードの容量を相互に分離された状態に保ちます。
SDAラインとSCLラインを安全にホットスワップするLTC4300-1 のアプリケーションを図1に示します。LTC4300 はペリフェラル・カードの端に置かれ、SCLOUTピンはカードのSCLバスに接続されており、SDAOUTピンはカードのSDAバスへ接続されています。電源の入ったバックプレーンへ、スタガコネクタによってカードが差し込まれるとき、最初にグランドが接続状態になり、次にVCCが接続状態になります。
グランドとVCCが接続状態になった後、SDAINとSCLINがバックプレーンのSDAとSCLの各ラインに接続します。この間、1Vのプリチャージ回路がアクティブとなり、公称100kの抵抗を通して低容量(10pF以下)のSDAピンとSCLピンを1Vに強制して、接続の瞬間にこれらのピン間に現れるワーストケースの電圧差を小さくします。これらのプリチャージと低容量の特長を備えているので、ホットスワップ時のバックプレーンのSDAバスとSCLバスの乱れが小さくなります。
カード挿入時のSDAバックプレーン・バスとLTC4300-1のSDAINピンの電圧を図2に示します。等価SDAバス容量をエミュレートするため、グランドへ接続した100pFコンデンサが使われています。挿入直前に、バックプレーンのSDAバスは4Vに近づいており、LTC4300-1のSDAINピンは1Vへプリチャージされています。SDAINピンの抵抗が大きく、容量が小さいため、このピンの電圧は挿入の瞬間にバックプレーンの電圧まで上昇しますが、バックプレーンの電圧はほとんど影響を受けません。これで、2つの信号線は互に短絡状態になります。
カード上でのバスの競合なしにバックプレーンでStop BitあるいはBus Idleが発生したら、LTC4300-1はプリチャージ回路をディスエーブルし、入力から出力への接続回路をアクティブにし、バックプレーンのSDAバスとSCLバスをカード上の対応するバスに接続します。
容量バッファと立上り時間アクセラレータ機能
入出力間の接続回路の主要な特長は、双方向のバッファが備わっていることです。この特長の利点を利用したアプリケーションを図3に示します。I/Oカードがバックプレーンへ直接差し込まれていると、バックプレーンとカードの容量がすべて直接足し合わされ、立上り時間と立下り時間の必要条件を満たすことが困難になります。ただし、LTC4300-1を各カードの端に配置すると、カードの容量をバックプレーンから分離します。与えられたI/Oカードの容量はLTC4300-1がドライブするので、バックプレーンがドライブする必要があるのはLTC4300-1の低容量だけです。LTC4300-1はさらに、SDAおよびSCLの4個のピンすべてに対する立上り時間アクセレレータ回路を備えているので、システムの立上り時間の必要条件を満たすのに役立ちます。10pFと100pFの等価バス容量に対して、アクセラレータによって改善された立上り時間を図4に示します。
まとめ
LTC4300-1により、ユーザーは2線式バス・システムのバックプレーンのSDA信号とSCL信号を損なうことなしに、電源の入ったバックプレーンへI/Oカードを差し込むことができます。さらに、接続回路は双方向のバッファを備えており、バックプレーンの容量とカードの容量を分離された状態に保ちます。立上り時間アクセラレータ回路も立上り時間の必要条件を満たすのに役立ちます。