携帯電話に適した高周波スイッチングIC

要約

このデザインアイディアでは、高周波数スイッチングコンバータがどのように携帯電話に給電できるのかについて示しています。このアーティクルでは、スイッチング周波数が電話や無線で問題となり得る、そして周波数が比較的高くないとスイッチングエネルギーはフィルタリングが困難であることが説明されています。この回路は高速(375kHz)でスイッチングコンバータを駆動し、フィルタ除去が容易な高周波数ノイズを生成します。スイッチトキャパシタ電圧コンバータのMAX1044が使われています。

スイッチドキャパシタ電圧コンバータは、バッテリ駆動システムに負電圧を供給する便利な電圧源になっていますが、携帯電話や無線機器では、スイッチング周波数の問題が発生します。キャリヤ周波数のサイドバンドとして現れるため、スイッチングエネルギーは、周波数が比較的高い場合でないとフィルタリングが困難です。

図1のIC1は、通常4kHzで動作するスイッチドキャパシタ電圧コンバータの一例を示します。このコンバータのBOOSTピンをV+に接続することによって、周波数を32kHz程度まで上げることができ、殆どのオーディオアプリケーションで用いられている周波数帯の上に干渉帯を移動させることができます。ただし、無線アプリケーションでは、これ以上のスイッチング周波数が必要です。

図1. このスイッチングコンバータを超高周波(375kHz)で駆動すると、高周波スイッチングノイズが簡単にフィルタリングできます。
図1. このスイッチングコンバータを超高周波(375kHz)で駆動すると、高周波スイッチングノイズが簡単にフィルタリングできます。

IC1のOSCピンは、500kHzの高い外部周波数によって内部オシレータをオーバドライブすることができます。この図の構成では、デューティサイクル50%の375kHz方形波でICを駆動しています。HCロジックゲートは、必要とされる電源電圧レベルの振幅を供給し、また、この駆動信号が内部スイッチへ送られる前に、内部2分周器により周波数が低減されます。この結果得られるサイドバンドは、キャリヤから190kHz程度となり、フィルタリングよって簡単に除去できます。

出力電圧、リップル電圧、および電源電流(IC1用)に対する負荷抵抗と出力容量(C2)の効果を次の表に示します。

表1.

Output Capacitance Load Resistance 1mΩ 100kΩ 10kΩ 1kΩ
C2 = 0.1µF -VOUT (V)
I + (mA)
MRIPPLE (mVP-P)
4.95
2.29
60
4.92
2.34
60
4.88
2.78
70
4.56
6.60
200
C2 = 1µF -VOUT (V)
I + (mA)
MRIPPLE (mVP-P)*
4.93
2.43
20
4.92
2.46
20
4.88
2.90
20
4.61
6.77
60
C2 = 10µF -VOUT (V)
I + (mA)
MRIPPLE (mVP-P)**
4.94
2.37
10
4.93
2.41
10
4.90
2.85
10
4.62
6.63
30
* Plus 100mV, 0.1µs spikes
** Plus 60mV, 0.1µs spikes

これから分かるように、負荷レギュレーションとリップル電圧は、より大きな出力コンデンサを用いることで改善できます。0.1µFのセラミックコンデンサをC2と並列に接続すると、C2 = 1µFおよびC2 = 10µF時の高速のスパイク電圧を約20mVに低下させることができます。また、リニアレギュレータを出力側に追加することで、負荷電流に伴う出力電圧の変動をさらに低減させることも可能です。

IC1が、データコンバータ用として負の電圧を発生する時、システムクロックやデータコンバータのクロックとIC1を同期化することによって、スイッチングノイズの影響を最小限に抑えることができます。別の方法としては、各データの変換と変換の間、負の出力電圧をC2で供給できる場合は、BOOSTピンを使ってこのチップをオフにすることも可能です。