DS33R41マルチチップモジュールのBSDLテスト

要約

このアプリケーションノートは、クワッドポートT1/E1/J1トランシーバ付き逆多重EthernetマッパのDS33R41を含む設計のPWB (プリント配線基板)ネットリストを、JTAG (Joint Test Action Group)規格に準拠するように変更する方法について説明します。これらの変更が必要となるのは、DS33R41が単一パッケージに複数のダイを集積したマルチチップモジュールとして設計されており、ボードレベルのJTAGテスト用BSDL (バウンダリスキャン記述言語)では定義することができないためです。このアプリケーションノートは、外部ピンマッピング表、内部ダイパッドボンド表、および接続情報を記載しており、これらを使って、設計者は正確なJTAGバウンダリスキャンボードテストを迅速に実行することができます。

はじめに

通信システム用のハードウェアを製造する場合、基本的な作業の1つは、各製造フローのためにシステムをテストする作業です。ハードウェアをテストするには多くの方法がありますが、最も定評のある方法の1つは、JTAGバウンダリスキャン方式を使用する方法です。バウンダリスキャンテスト方式は、製造後にハードウェア検証が実行されるように、製造前にハードウェアに対するいくつかのマイナーな変更を行います。設計時、JTAGをサポートするすべてのICデバイスは、JTAGテストアクセスポートを通じてシリアルデイジーチェーンで接続されます。検証は、テストアクセスポートに接続している専用JTAGテストシステムによって実行されます。JTAGテストシステムは、PWBネットリスト、BSDLファイル、およびPWB接続性テストベクトルを組み合わせて使用し、pin-to-pin接続を検証します。

BSDLテストは直接的です。しかし、クワッドポートT1/E1/J1トランシーバ付き逆多重EthernetマッパであるDS33R41のようなマルチチップモジュールデバイスは、単一パッケージに複数のダイを集積しているため、単一のBSDLファイルでは正しく記述することはできません。この欠点は、PWBネットリストに簡単な変更を加え、単一ファイルの代わりに2つのBSDLファイルを使ってデバイスパッケージを記述すると解決することができます。

PWBネットリストの変更方法

JTAGバウンダリスキャンテストが実行可能になるには、その前に、DS33R41パッケージとの外部接続を記述するPWBネットリストの一部を変更し、内部DS33Z41ダイとDS21458ダイのこれらの接続を分割する必要があります。この変更が行われると、ネットリストは2つの独立した参照番号でDS33R41パッケージを定義するようになります。これらの参照番号によって、2つの別個のBSDLファイルがDS33R41パッケージ内のDS33Z41接続とDS21458接続をそれぞれ記述することが可能になります。

表1、表2、表3、および図1より、ネットリストの変更作業を容易にします。表1は、DS33Z41ダイにのみ接続しているDS33R41パッケージのすべての外部ピンを示しています。表2は、DS21458ダイにのみ接続しているDS33R41パッケージのすべての外部ピンを示しています。表3は、DS33Z41ダイとDS21458ダイの両方に接続しているDS33R41パッケージのすべての外部ピンを示しています。図1は、同じ情報を見やすい形式で示しています。

このPWBネットリストの変更とJTAGバウンダリスキャンテストは、Cadence® Conceptで設計されたDS33R41エンジニアリング評価ボードのConcise Net Listフォーマットのネットリストを使用して実行されています。設計者は、ネットリストタイプと個々のスキルレベルに応じて、約30~60分で操作を実行することが可能です。大部分のネットリストファイル編集は、単純なテキストエディタで行うことができます。ただし、ネットリストタイプに応じて、ネットリストを列データに基づいて行を並べ替えられるMicrosoft® Excelなどのプログラムで編集することもできます。どのように編集する場合でも、細部まで注意を払うことが重要です。ヘッダやフッタ情報などの変則的なデータは維持される必要があり、ネットリストは常に元のフォーマットで保存される必要があります。

以下は、この処理を完了するために必要な各手順を示しています。

  1. テキストエディタでネットリストファイルを開き、DS33R41参照番号に接続されたすべてのネットをグループ化します。たとえば、DS33R41エンジニアリング評価ボードのDS33R41パッケージは、U01の参照番号を持っています。
  2. 手順1で分離されたすべてのネットを、DS33Z41ダイに接続されたネット、DS21458ダイに接続されたネット、および両方のダイに接続されたネットに分けます。表1、2、および3と図1を使用してこの作業を完了します。
  3. すべてのDS33Z41ネットの参照番号を、U01からU01_D1 (参照番号U01、デバイス1の省略名)に変更します。この手順は、DS33R41の元の参照番号がU01であると仮定しています。参照番号がU01でない場合は、U01_D1を適切に変更します。
  4. すべてのDS21458ネットの参照番号を、U01からU01_D2 (参照番号U01、デバイス2の省略名)に変更します。これは、DS33R41の元の参照番号がU01であると仮定しています。参照番号がU01でない場合は、U01_D2を適切に変更します。
  5. 22の共有ネットを複製し、正確に2つにします。これらを2つのグループに分けます。
  6. 手順5で作成した1つ目のネットワークグループの参照番号をU01からU01_D1に変更します。これは、DS33R41の元の参照番号がU01であると仮定しています。参照番号がU01でない場合は、U01_D1を適切に変更します。
  7. 手順5で作成された2つ目のネットワークグループの参照番号をU01からU01_D2に変更します。これは、DS33R41の元の参照番号がU01であると仮定しています。参照番号がU01でない場合は、U01_D1を適切に変更します。
  8. 新しく作成されたネットリストを保存します。

新しく作成したPCBネットリストは、実際、DS33R41の物理デバイスに対して2つのインスタンスが含まれます。1番目のインスタンスは、DS33Z41セクションに関するピン接続を記述しています。2番目のインスタンスは、DS21458セクションに関するピン接続を記述しています。新しいネットリストは、2つのDS33R41 BSDLファイルと任意の関連テストベクトルとともに、任意のJTAGテストスイートにロードすることができます。

ここで文書化された方式は、正常に動作することが試験および検証済みですが、他のネットリストフォーマットの場合に予期しない複雑な問題が発生する場合があります。JTAGバウンダリスキャンテスト時に追加のサポートが必要な場合は、下記の問い合わせ先情報をご使用ください。

表1. DS33Z41ダイのみのデバイスピン
Pin Description Pin Description Pin Description
A1 VSS J18 RXD[2] P13 VSS
B16 VDD3.3 J19 RXD[0] P14 SDMASK[1]
B17 VDD3.3 J20 VSS P15 SRAS
B19 VDD3.3 K3 VSS P16 SDA[11]
B20 VDD3.3 K5 VSS P17 VDD1.8
C19 VDD3.3 K6 VSS P18 SDMASK[2]
C20 REF_CLK K7 VSS P19 SDATA[18]
D10 VDD3.3 K8 VSS P20 SDATA[19]
D15 VSS K13 RMIIMIIS R11 VSS
D18 VDD3.3 K14 TCLKE R12 SDATA[12]
D19 VDD3.3 K15 TSERO R13 SDATA[6]
D20 VDD3.3 K16 TBSYNC R14 SCAS
E19 VDD3.3 K17 JTDI1 R15 SDCS
E20 MDC K18 RX_DV R16 SBA[0]
F11 VSS K19 RX_CLK R17 SDA[10]
F14 VSS K20 RX_ERR R18 SDATA[31]
F18 VDD3.3 L4 VSS R19 VSS
F19 VDD3.3 L5 VSS R20 VDD1.8
F20 MDIO L6 VSS T11 SDATA[13]
G4 VSS L7 VSS T12 SDATA[14]
G5 VSS L8 VSS T13 SDATA[5]
G7 VSS L14 RCLKI T14 VDD1.8
G12 VSS L15 RBSYNC T15 SWE
G13 JTMS1 L16 RSERI T16 SDA[8]
G14 JTRST1 L17 DCEDTES T17 SDA[0]
G15 MODEC[1] L18 TX_CLK T18 SDATA[16]
G16 VDD3.3 L19 TX_EN T19 SDATA[27]
G18 QOVF L20 TXD[0] T20 SDATA[26]
G19 REF_CLKO M5 VSS U11 SDATA[15]
G20 VSS M6 VSS U12 SDATA[4]
H5 VSS M7 VSS U13 VSS
H6 VSS M12 VSS U14 SDCLKO
H7 VSS M13 VDD1.8 U15 VSS
H8 VSS M14 SDATA[3] U16 SDA[1]
H9 VSS M15 SDATA[1] U17 SDA[4]
H10 VSS M16 VSS U18 SDATA[29]
H14 JTDO1 M17 VDD1.8 U19 SDATA[25]
H15 RST M18 TXD[2] U20 SDATA[24]
H16 CS M19 TXD[1] V11 SDATA[11]
H18 RXD[1] M20 TXD[3] V12 SDATA[10]
H19 RXD[3] N12 VSS V13 SDATA[8]
H20 VSS N14 VDD1.8 V14 VSS
J6 VSS N15 VDD1.8 V15 SDA[9]
J7 VSS N16 VDD1.8 V16 SDA[7]
J8 VSS N17 VDD1.8 V17 SDMASK[3]
J9 VSS N18 VSS V18 SDATA[30]
J15 VSS N19 RX_CRS/CRS_DV V19 SDATA[22]
J16 VDD1.8 N20 COL_DET V20 VDD1.8
J17 JTCLK1 P12 VSS W11 SDATA[0]
W12 SDATA[9] W19 SDATA[20] T16 SDA[6]
W13 SDATA[7] W20 SDATA[23] Y17 SDA[2]
W14 VDD1.8 Y11 SDATA[2] Y18 VDD1.8
W15 SBA[1] Y12 VSS Y19 SDATA[28]
W16 SDA[5] Y13 SDMASK[0] Y20 SDATA[21]
W17 SDA[3] Y14 SYSCLKI
W18 SDATA[17] Y15 VDD1.8
表2. DS21458ダイのみのデバイスピン
Pin Description Pin Description Pin Description
A2 TSSYNC3 D3 TCHBLK3 G9 RNEGO2
A3 RMSYNC3 D4 RLOS/LOTC3 G10 DVSS
A4 RCHBLK3 D5 RSIG3 G11 DVSS
A5 RPOSO3 D6 TPD G17 D0
A6 TSYSCLK3 D7 RNEGO3 H1 RCLK3
A9 TCLK2 D8 DVDD H2 TSIG3
A10 TVDD D9 DVDD H3 DVSS
A11 TRING2 D11 DVDD H4 TSYSCLK1
A12 TTIP2 D12 RCLKO2 H11 RSIG2
A13 TVSS D13 TSYNC2 H12 RVSS
A14 TCHBLK2 D14 RCHCLK2 H13 RVSS
A15 RSYNC2 E1 TTIP3 J1 DVSS
B1 DVSS E2 TTIP3 J2 TSERI3
B2 DVSS E3 TCHCLK3 J3 TCLKT3
B3 RSYNC3 E5 RVSS J4 DVDD
B4 RCHCLK3 E6 RTIP3 J5 TSYSCLK2
B5 RSERO3 E8 DVDD J10 RPOSO2
B6 DVDD E9 DVDD J11 RVSS
B8 TSIG2 E10 DVDD J12 RRING2
B9 TSERI2 E11 TCLKO2 J13 RTIP2
B10 TVDD E12 TPOSO2 J14 RVDD
B11 TRING2 E13 TSSYNC2 K1 RSYSCLK1
B12 TTIP2 E14 RFSYNC2 K2 MCLK1
B13 TVSS F1 TRING3 K4 RSERO1
B14 RCHBLK2 F2 TRING3 K9 RSERO2
C1 RCLKO3 F3 TNEGO3 K10 RSYSCLK2
C2 TSYNC3 F4 TPOSO3 L1 RVSS
C3 DVSS F5 RVSS L2 TRTRST
C4 RFSYNC3 F6 RRING3 L3 BPCLK1
C6 RSYSCLK3 F7 RVDD L9 TCHCLK4
C7 JTDI2 F8 DVDD L10 JTDO2
C8 RCLK2 F9 DVDD L11 JTMS2
C9 DVDD F10 DVDD L12 MCLK2
C10 DVDD F12 DVSS L13 JTRST2
C11 DVDD F13 RMSYNC2 M1 RRING1
C12 TNEGO2 G1 TVDD M2 RVSS
C13 TCHCLK2 G2 DVDD M3 RSIG1
C14 RLOS/LOTC2 G3 TCLKO3 M4 TCHBLK1
D1 TVSS G6 RVSS M8 RCHBLK4
D2 TVSS G8 BPCLK2 M9 RSYNC4
M10 RFSYNC4 R5 DVSS V6 RNEGO4
M11 TCLKO4 R6 DVSS V7 RCHCLK4
N1 RTIP1 R7 TSERI4 V8 RLOS/LOTC4
N2 RVSS R8 RVDD V9 RMSYNC4
N3 RPOSO1 R9 RRING4 V10 DVSS
N4 RNEGO1 R10 RVSS W1 TRING1
N5 DVSS T1 TTIP1 W2 TVDD
N6 DVSS T2 TVSS W3 TSYNC1
N7 RCLK4 T3 DVSS W4 TSSYNC1
N8 DVSS T4 DVSS W5 RCLK1
N9 TCLKT4 T5 DVSS W6 CST
N10 TNEGO4 T6 DVSS W7 TVSS
N11 TPOSO4 T7 RSERO4 W8 TTIP4
N13 TSSYNC4 T8 RVSS W9 TRING4
P1 RVDD T9 RTOP4 W10 TVDD
P2 RCHCLK1 T10 RVSS Y1 RMSYNC1
P3 RCHBLK1 U1 TTIP1 Y2 RSYNC1
P4 TNEGO1 U2 TVSS Y3 TCHCLK1
P5 DVSS U4 TCLKT1 Y4 TSERI1
P6 TSYNC4 U5 DVSS Y5 TSYSCLK4
P7 TSIG4 U6 DVSS Y6 RSYSCLK4
P8 DVSS U7 RPOSO4 Y7 TVSS
P9 JTCLK2 U8 RSIG4 Y8 TTIP4
P10 RCLKO4 U9 DVSS Y9 TRING4
P11 TCHBLK4 U10 DVSS Y10 TVDD
R1 RFSYNC1 V1 TRING1
R2 RLOS/LOTC1 V2 TVDD
R3 TPOSO1 V4 RCLKO1
R4 TCLKO1 V5 TSIG1
表3. DS33Z41ダイとDS21458ダイの共有デバイスピン
Pin Description Pin Description Pin Description
A16 WR/RW C16 A9 E17 A6
A17 D1 C17 A7 E18 A4
A18 A5 C18 A2 F15 RD/DS
A19 A0 D16 D5 F16 D3
A20 A1 D17 A8 F17 D2
B15 D6 E7 MODEC[0] G17 D0
B18 A3 E15 INT
C15 D7 E16 D4

図1. DS33R41:400ボールのBGA、色分けされたピン配置とダイマップ。

図1. DS33R41:400ボールのBGA、色分けされたピン配置とダイマップ。

参考資料

DS33R41 の JTAG テストに関してさらに質問がある場合は、テレコム アプリケーション サポート チームにお問い合わせください。

クアッドポート T1/E1/J1 トランシーバを備えた DS33R41 逆多重化イーサネット マッパーの詳細については、該当するデータ シートを参照してください。