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Customer Case Study

アナログ・フロント・エンド「ADPD4101」が導いた、 日本発超小型ヘルスケアIoTデバイス

logo超小型ヘルスケアIoTデバイスの開発・販売を行う2021年創業のスタートアップ
https://soxai.co.jp/

顧客課題: スマートリングの高精度化とバッテリーの長寿命化
導入製品: 光学バイタルセンシング用AFE「ADPD4101
導入効果:
  • オンチップ・フィルタによるAC周辺光除去(1kHzまで60dB)
  • システム消費電力30μA(LEDとAFEの合計)による省電力化
キーワード:ヘルステック, AFE, ノイズ除去, 消費電力削減, 小型化, スタートアップ

小さな指輪が実現する、ストレスフリーなセルフモニタリング。 製品化への道を拓いたのは、小型・超低消費電力アナログ・フロント・エンド(AFE)


日本人の多くの働き方は、少し不健全ではないだろうか。そんな疑問から発想した、コンディション管理用スマートリング「SOXAI Ring(ソクサイ リング)」。手掛けたのは、日本発のヘルステックスタートアップ、SOXAI社だ。24時間365日のセルフモニタリングを実現するため、バイタルデータの取得機能を約2.5mm厚×7.6mm幅の指輪に搭載した。その開発で大きな役割を果たしたのが、アナログ・デバイセズの光学バイタルセンシング用AFE「ADPD4101」だ。外部回路なしで外乱光を除去でき、測定精度向上と小型化に貢献。超低消費電力も、バッテリーの大幅な長寿命化につながった。さらに、アナログ・デバイセズは販売代理店の三共社を通じてエンジニアサポートも提供した。

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働き方・暮らし方のアップデートへ。
まずはセルフモニタリングをニューノーマルに。

昨今、ワークライフバランスやディーセントワークという言葉を聞かない日はないだろう。しかし、日本の実態に目を向ければ、睡眠を削ってまでの働き方がまだまだ残っている。睡眠時間の短さは、知らず知らずのうちに健康に影響を与えているかもしれない。こうした現状を憂い、SOXAI社を起ち上げたのが、同社代表取締役社長の渡邉達彦氏だ。 「『一病息災』という言葉があります。持病がひとつあると、日ごろから身体に気を配るため、むしろ健康でいられるという意味です。心身のセルフモニタリングが習慣となれば、睡眠や生活の質の改善につながり、大病の予防にも役立つでしょう。理想は、24時間365日のセルフモニタリングです」

Soxai Ringとアプリ

コンディション管理用デバイスの“新しいカタチ”へ。
辿り着いたのは、リングという形状。

現在、ウェアラブルのコンディション管理用デバイスは、スマートウォッチが主流である。しかし、頻繁に動く手首に装着すると、位置がズレたり、隙間ができやすい。また、入浴・睡眠時には多くの人が取り外す。バイタルデータを高精度に、かつ連続して取得することは難しい、と渡邉氏。

「ズレや隙間ができないようバンドをきつく締めると、相当のストレスです。一方、隙間をカバーするためセンサー感度を高めれば、多くの出力を必要とし、充電頻度が増える。これもまたストレス。利用者がストレスを感じれば、24時間365日のセルフモニタリングはおぼつきません」 考え抜いた末に辿り着いたのが、指輪タイプだ。

「手首で測る医療機器は少ないですが、パルスオキシメーターなど指先で測るものは多い。血流が多い手指は脈波信号が大きく、信号が安定しているので、測定に信頼が置けるんですね。指輪型であれば、指側面の動脈を低出力で測定できる。また、さほどストレスを感じずに常時装着していただけるため、連続データが取得しやすいんです」 セルフモニタリングのニューノーマルへ、スマートウォッチの先へ。SOXAI社を起ち上げた渡邉氏。しかし、道のりは平坦ではなかった。

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外乱光も、サイズも、充電回数もミニマムに。
このAFEの採用で、理想へ近づいた。

装着と充電のストレスは極限まで減らしたい。しかし、精度は妥協できない。渡邉氏を悩ませたのは、太陽や室内照明などの外乱光の影響だ。
「もともとは別のAFEを試していたのですが、肝心の精度を担保できませんでした。再検討の末、採用したのが、アナログ・デバイセズの「ADPD4101」です。正直、外乱光除去の威力には驚きました」

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赤色光、緑色光、赤外光に対応するPPG信号。例として、赤外光に対応するPPG信号のAC成分/DC成分にはマーカーを付加してあります。

同デバイスは、非同期変調干渉で生じる信号の破損やズレを、内蔵フィルタで除去(AC周辺光除去:1kHzまで60dB)。外部のフィルタやDC干渉除去回路も不要なため、精度向上に加え、小型化においてもメリットを提供する。
「『ADPD4101』の決め手は、もうひとつ。消費電力の低さです。充電のたびに、データ取得は途切れるし、充電は面倒ですよね。このデバイスのおかげでバッテリーは最大7日間持続*。週に1回の充電で済むようになりました」
同デバイスの消費電力は30μW。AFEだけでなく、LEDも加えたシステム消費電力である。さらに同氏は、今後の開発に向けても期待が高いと語る。
「指輪に収まるサイズながら入力チャンネルは8つ。取得するバイタルデータの種類の拡充を計画中ですが、このチャンネル数はきっと役立つはずです」

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「ADPD4101」の主な特長

  • 複数の動作モードを備えた8つの入力チャンネルで様々なセンサー計測に対応
  • システムの合計消費電力:30µW(LEDとAFEの合計消費電力)
  • 4個のLEDを駆動できる8つのLEDドライバ内蔵
  • 外乱光除去機能

国内での大きな反響、確かな手応え。
次はグローバルのトップを目指す。

いよいよ開発の見通しが立ち、満を持してクラウドファンディングサービス「Makuake」で先行販売を開始したSOXAI Ring。すると、1分足らずで目標金額を達成。開始5日で4,000万円を集めるという、予想以上の反響が待っていた。しかし、SOXAI社の夢はまだ始まったばかり。渡邉氏は抱負を次のように語る。
「もっと小さく、そして充電不要になれば、グローバルでもトップに立てると思っています。アナログ・デバイセズさん、三共社さんには、私たちのイノベーションを支え続けて欲しいです」

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