AN-1448: PBGA パッケージのリワーク推奨手順
はじめに
このアプリケーション・ノートでは、プラスチック・ボール・グリッド・アレイ・パッケージ(PBGA)をプリント基板(PCB)から取りはずすための推奨方法について説明します。
パッケージの説明
PBGA は、基板(PCB など)との相互作用モードにハンダ・ボールのアレイを使用することが大きな特徴であるパッケージ形式です。この機能により、ピンの数の密度を高くできるという点で、さまざまな構成(SIP、DIP、クアッド・タイプなど)のパッケージ形式よりも優れています。PBGA パッケージ内の相互接続には、ワイヤ・ボンディングまたはフリップ・チップ技術が採用されています。PBGA のダイには集積回路が含まれ、成形化合物で密封されています。
PGBA 部品のリワーク
PBGA 部品を PCB に取り付けた後に欠陥があることが判明した場合は、リワークを行って欠陥部品を取りはずし、機能するデバイスで置き換えます。デバイスを取りはずす前に、ハンダ接続が液化するまで欠陥部品を熱し、ボードから部品を取りはずしやすくします。
一般的なリワーク手順は、次のとおりです。
- 基板の準備
- 部品の取りはずし
- PCB ランドの清掃
- ハンダ・ペーストの塗布
- 部品のアライメントと配置
- 部品の取り付け
- リワークの検査
部品の取りはずしと層剥離
部品の取りはずし作業は PBGA や PCB に機械的ストレスを与えることがあります。欠陥デバイスを取りはずす際は、PCB や近くの部品を損傷しないように注意してください。特に故障解析を行う予定がある場合は、取りはずすデバイス自体も損傷しないように注意してください。規定のピーク温度を超えて部品を加熱したり、熱源に過度に晒すなど、PBGA 部品に過度のストレスを加えると、パッケージの層剥離や外部の物理的損傷が生じることがあります(図 2 ~ 図 3 を参照)。詳細な解析が必要になる部品の場合、不適切な取りはずしによって層剥離が生じると、真の故障メカニズムを特定するのが困難になります。効果的な故障解析を行うには、欠陥部品を正しく取りはずす必要があります。
基板の下準備
残留水分を取り除くため、リワーク作業前に PCB アセンブリをドライ・ベークすることを強くお勧めします。残留水分を取り除かないと、リフロー時にポップコーン・クラッキングによって部品が損傷することがあります。PCB アセンブリを 125 °C で 4 時間以上ベークします(ただし、これらの条件が PCB 上の他の部品の規定値を超えないことを前提とする)。この条件が他の部品の仕様を超える場合は、Joint Industry Standard IPC/JEDEC J-STD-033 で仕様規定されている別のベーク条件を使用してください。
部品の取りはずし
部品の取りはずし用に各種のツールを用意しています。部品の取りはずしには、ハンダがリフロー状態になるまで部品を加熱し、ハンダが液状に保たれている間に部品を機械的に取りはずすことが含まれています。プログラマブルな温風リワーク・システムは、温度と時間設定の制御機能を備えています。
リワークを行う場合は、部品の取り付けに使用する温度プロファイルに従います。リワーク温度は、耐湿レベル(MSL)ラベルに仕様規定されているピーク温度を超えてはいけません。完全にハンダがリフロー状態になる限り、(液相線範囲などの)加熱時間を短くしてもかまいません。パッケージ温度がハンダ・リフロー範囲になる時間を 60 秒未満に抑えます。ピックアップ・ツールの真空圧を 0.5 kg/cm2 未満に維持して、完全なリフロー状態になる前に、部品やパッドが持ち上がらないようにします。PCB から取りはずした部品は再使用しないでください。
PBGA 部品と PCB が損傷しないようにリワーク温度を制御してください。SOIC(標準アウトライン集積回路)や LFCSP(リード・フレーム・チップ・スケール・パッケージ)などのリードフレーム・パッケージと比較して、PBGA はその熱特性により、すぐに加熱されます。部品の周囲の領域をサーマル・テープでカバーすることで、保護性能が向上します。さらに、PCB を下側から加熱して、PCB の両面の温度差を小さくしてボードの反りを最小限に抑えることをお勧めします。
リワーク・ツールの設定を定義する場合は、温度プロファイルの特性評価を実行します。この特性評価は、特定の部品で初めてリワークを行う場合に特に重要です。また、ボディ・サイズ、ハンダ組成や PCB の材質、構成、サイズ、厚さなどが異なる PBGA 部品はサーマル・マス値が異なるため、これらの部品の特性評価も実行する必要があります。
特性評価には、温度と時間、およびその他の機器ツールの設定の監視を含める必要があります(図 4 を参照)。PBGA 部品の上部や PCB の上部など、基板アセンブリのさまざまな部分に熱電対を取り付けることができます(図 5 を参照)。時間と温度のプロファイル・データを解析して、評価結果から部品取りはずしの作業パラメータを取得します。
PCB ランドの清掃
PBGA 部品の取りはずし後、PCB のランドには余剰ハンダが残留するので、新たな PBGA 交換部品を取り付ける前に下準備をする必要があります。次の 2 つの手順でランドを準備します。
- ハンダを除去する。ハンダ吸い取り線とブレード・タイプのハンダコテを組み合わせて使用して、ランドから余剰ハンダを取り除きます(図 6 を参照)。部品のフットプリントの最大幅に一致するブレード幅を選択します。回路基板が損傷しないように、ブレードの温度を十分に低くする必要があります。ハンダ取りとハンダコテを使用して余剰ハンダを除去する前に、フラックスをランドに塗布できます。
- 清掃。洗浄溶剤を使用し、リント・フリーの布でハンダ除去部をきれいに拭きます。元々のアセンブリで使用されているペースト・タイプに特有の溶剤を使用します。
ハンダ・ペーストの塗布
交換する PBGA 部品をボードに取り付ける前に、元々ボード・アセンブリに塗布されたハンダ・ペーストを塗り替えると、PBGAハンダ接続の信頼性を維持できます。PBGA をボードに取り付ける場合、平坦性を確保するため、各ハンダ・ボールにハンダ・ペーストを均一に塗布してください。
ステンシルを使用して、ハンダ・ペーストを PCB ランドに塗布できます。均一なリフロー・ハンダ処理を実現するため、ステンシルのアラインメント精度が重要になります。ボード・アセンブリで使用されているのと同じ PBGA アパーチャの形状とステンシルの厚みを使用します。ペーストのリリースを均一にして、汚れを防ぐために、台形のアパーチャを使用します(図 7 を参照)。
特に部品の密度が高い場合や、形状に制約がある場合、ステンシルを使用して PCB ランドにハンダ・ペーストを均一かつ精密に塗布するのは困難な場合があります。この場合、ハンダ・ペーストを部品下部のハンダ・ボールに塗布することを検討してください。ステンシルを使用してハンダ・ペーストをハンダ・ボールの尖端に塗布するか、すべてのハンダ・ボールにハンダ・ペーストを施します(図 8 および図 9 を参照)。この処理には、専用に設計されたジグやリワーク機器を使用します。
部品のアライメントと配置
基板に部品を正確に配置することが重要です。スプリット・ビーム光学システムを備えたピック・アンド・プレース機器を使用すると、ボードへの PBGA の配置が容易になります。このタイプのイメージング・システムでは、PBGA ハンダ・ボールの画像をPCB ランドの画像に重ね合わせます(図 10 を参照)。配置に使用する機器には、回転を含む X 軸と Y 軸の微調整が必要です。
部品の配置精度は、使用する機器またはプロセスによって決定します。PBGA パッケージは、リフロー中に自動的に位置揃えを行いますが、配置オフセットが PCB ランド幅の 50 % 未満になるようにしてください。ずれが大きいと、ハンダ・ブリッジにより、短絡が発生することがあります。
部品の取り付け
すべてのリフロー・パラメータが最適化されているので、最初の取り付けで開発されたものと同じ熱プロファイルを使用します。
リワークの検査
リフロー後、組み立てられた PBGA のずれや損傷などの欠陥を検査します。X 線検査を実行し、ハンダ・ブリッジやハンダ・ボールなどの問題を確認します。部品が適切に機能することを検証するため、必要に応じて、電気試験の検証を行います。









