加速度センサーの仕様 用語の定義
加速度センサーの仕様 用語の定義
測定範囲とは、センサーが出力可能な加速度の範囲であり、一般に±gで規定します。これは、デバイスが測定でき正確に出力として表すことができる加速度の値です。たとえば、±3g加速度センサーの出力は少なくとも±3gまで加速度に比例します。加速度が+4gになると、出力電圧が飽和する可能性があります。入力信号の限界点は絶対最大加速度であり、測定範囲ではありません。±3g加速度センサーであっても+4gの加速度によって故障することはありません。
感度は、入力信号(加速度)の変化のに対する出力値の比です。感度は、入力加速度と出力値の理想的な関係を規定します(図1、灰色の線)。感度は特定の電源電圧における値であり、一般にアナログ出力加速度センサーでは単位mV/gで表し、デジタル出力加速度センサーではLSB/gまたはmg/LSBで表します。通常感度は誤差範囲(min、typ、max)で規定しますが、代表値と偏差(%)によって規定する場合もあります。アナログ出力センサーでは感度は電源電圧に比例し、たとえば電源電圧を2倍にすると感度も2倍になります。
温度による感度の変化は、一般に温度(°C)当たりの感度の変化率(%)で規定します。感度の温度特性の原因は、機械的なストレスと回路の温度係数の2つの要因によるものがあります。
図1. 非直線性は、理想的な応答(灰色で表示)と実際の加速度センサー応答(黒色で表示)との偏差を表しています。
このグラフは解説用に作成したものであり、実際の加速度センサーのデータを示すものではありません。
非直線性:入力加速度と出力値の理想的な関係は直線的であり、デバイスの感度によって表されます。非直線性は完全に一定な感度からの偏差であり、フルスケール・レンジ(%FSR)または±フルスケール(%FS)を基準にパーセンテージで規定されます。一般に、FSR = FS+FSです。アナログ・デバイセズの加速度センサーの非直線性はごくわずかであるため、ほとんどの場合は無視することができます。
パッケージ・アラインメント誤差は、加速度センサーのセンシング軸と基準とするパッケージ側面との角度で規定します(図2を参照)。パッケージ・アラインメント誤差の単位は「角度」です。パッケージング技術によって、一般にパッケージの約1°以内にダイを配置する事が可能です。
(直交)アラインメント誤差とは、多軸デバイス間の理論偏位角度(通常は90°)からの偏差です(図2を参照)。アナログ・デバイセズの加速度センサーはフォトリソグラフィにより同一のシリコン上に複数軸を形成するため、軸間のアラインメント誤差は非常に小さい値に抑えられています。
他軸感度は、その軸以外の軸に加速度が加えられたときに現れる出力量を表し、一般にパーセンテージで規定されます。前述のアラインメント誤差、製造時のエッチング精度、回路のクロストークといった複合的な要因によって複数軸の結合が生じます。
ゼロgバイアス・レベルは、加速度が存在しないとき(ゼロ入力時)の出力レベルを規定します。アナログ・センサーは一般にこの値を電圧(mV)単位で表し、デジタル・センサーはコード(LSB)で表します。ゼロgバイアスは特定の電源で規定し、アナログ出力タイプの場合、一般に電源電圧に比例します(ほとんどの場合、ゼロgバイアスの公称値は電源電圧の半分になります)。
ゼロgバイアスについては、次の仕様も規定されていることがあります。
- ゼロg電圧(V):入力加速度が0gのときの出力電圧範囲です。
- 理論値からの出力偏差(初期バイアス誤差):入力加速度が0gで25°Cの時の出力値で、g単位または、アナログ・センサーではmV単位、デジタル・センサーではLSBで表します。
- ゼロgオフセットの温度特性またはバイアス温度係数(mg/°C)は、温度当りの(°C)のオフセット変位量を示します。
- バイアス電圧感度は、電源の変化に対する「ゼロ・バイアス・レベル」の変化を表します。このパラメータの単位には、mv/V、mg/V、LSB/Vが使用されます。
- ゼロg総合誤差は、すべての誤差を総合した値です。
ノイズ密度はノイズ出力の電力スペクトル密度の平方根であり、µg/rt(Hz) RMSで表されます。1次のローパスフィルタを使用した場合の出力ノイズは次式で求めます。
ノイズ = ノイズ密度 * sqrt (BW * 1.6)
ここで、BWはローパスフィルタの帯域幅であり、アナログ出力タイプのセンサーの場合は、加速度センサー出力上のコンデンサによってユーザーが任意に設定出来ます。
アナログ・デバイセズの加速度センサーのノイズは無相関のガウス・ノイズであるため、複数の加速度センサーからの出力を平均化することでノイズを低減できます。
出力ノイズは理論出力からのランダム偏差であり、ノイズ密度とノイズ帯域幅の平方根を乗算した値です。このパラメータの一般的な単位はmg-RMSです。
図2. パッケージ・アラインメント誤差αとセンサー・アラインメント誤差θ。
αはセンサー軸とパッケージ軸のなす角度です。θは直交からのセンサー軸のずれであり、(ysensor – xsensor)と90°との差になります。
出力データレートは、デジタル出力タイプの加速度センサーの仕様で、データのサンプリング・レートを定義します。帯域幅は、任意の出力データレートでエイリアシングなしにサンプリングできる周波数帯域です。ナイキスト・サンプリング基準に従って、帯域幅は出力データレートの半分になります。
アナログ出力加速度センサーの場合、帯域幅は、DC(または低周波)加速度に対して周波数応答が−3dBとなる周波数のことです。