TNJ-068 : 進み位相補償の限界とその理由(後編)OP アンプの入力容量の補償は話しが違う(と電流出力エラー・アンプ補償回路)

2020年08月20日
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はじめに

前回は高速 OP アンプ LTC6252 に負荷容量を接続したとき、OP アンプの出力側がその容量により位相遅れが増大し、動作が不安定になる状態を考えました。この場合は、二つの帰還抵抗の大きさが近接していると、形成される位相最大進み量が思いのほか小さいことが分かりました。これにより回路の増幅率が低いとき、進み位相補償が効かなくなります。

今回は、OP アンプ入力に存在する寄生入力容量により位相遅れが増大しているとき、これを進み位相補償が補償する場合のうごきについて考えてみたいと思います。前回の「回路の増幅率を低下させると進み位相補償が効かなくなる」ということが、 入力容量を補償する場合も同じとなるのかを探究してみます。

またスイッチング・レギュレータで用いられている、電流出力型のエラー・アンプにおける位相補償回路についても位相変化を考えてみます。電流出力チャージ・ポンプPLLも出力は電流出力なので、同様に位相補償を考えることができます。

 

サッカーとわたし

前回のTNJ-067で「広島に行って驚いたこと」という酔な(粋な…ではありません)出だしで広島カープのネタをお話しし、 そこで「ジェフユナイテッド市原・千葉が…」だなんて、プロ・サッカーと自らの話題を少しお話ししました。その最後に幼少のころに見た「三菱ダイヤモンド・サッカー」というテレビ番組のお話しもいたしました。

幼少のころからときは経ち、社会人になった後の1993 年。サッカー日本代表チームはカタールのドーハでFIFAワールドカップ1994 [1]へのアジア地区最終予選に参加していました。ワールドカップ初出場が目前という状況でした。そして起きた「ドーハ の悲劇 [2]」…。テレビ画面の左側のゴールに吸い込まれる、イラク選手のヘディング・シュートは、それこそスロー・モーションのようにも見えました(当時のイラク政治統治状況からすれば、イラクの選手も死に物狂いだったものと思われます)。 一緒にテレビを観ていた妻と、夜遅く、愕然としたものでした。 ふたりとも絶句でした。まだ、ありありと、良く、そのときのことを覚えています。この技術ノートを読まれる多くの方も覚えていることではないかと思います。

 

アナログ・デバイセズ株式会社は川崎フロンターレのスポ ンサー

アナログ・デバイセズ株式会社は川崎フロンターレ [3]のスポンサーになっています(2019 年時点。図 1)。良いカメラが無いのでいつもうまく撮影できないのですが、川崎フロンターレのホーム・グラウンドである川崎市等々力陸上競技場 [4]でのスポンサー紹介で電光掲示板に会社のロゴが表示されますし、ピッチ後縁にも「ANALOG DEVICES」の立て看板が設置されます(図 2)。カメラに拘らないためポケット・カメラでの撮影で、写りが悪くてすいません。[最後につづく]

図1. アナログ・デバイセズ株式会社は川崎フロンターレの スポンサー(下はMWE 2019のポスター)
図1. アナログ・デバイセズ株式会社は川崎フロンターレの スポンサー(下はMWE 2019のポスター)
図2. ピッチ後縁にあるANALOG DEVICESの立て看板(2019年現在。2019年8月4日、松本山雅FC戦のとき撮影)
図2. ピッチ後縁にあるANALOG DEVICESの立て看板(2019年現在。2019年8月4日、松本山雅FC戦のとき撮影)

 

OP アンプ入力容量のケースでの補償容量による進み位相補償

図3のような回路を考えてみましょう。ここでは LTspice で用意されている、ユーザがパラメータ設定できる OP アンプ、 「UniversalOpamp2」というものを用いています。「パラメータ」のとおり「モデル」ですから、寄生的な成分(入力容量)を排 除したシミュレーションをすることができます。図3ではここに外付けで、OPアンプの寄生入力容量に相当する CIN1, CIN2を接続しています。

OP アンプの寄生入力容量CIN1を記号𝐶INで表すと、𝐶INと𝑅1, 𝑅2により、ここでも遅れ要素が形成されます(CIN2は系の不安定性には影響を与えません)。前回はOPアンプ出力における遅れ要素を考えましたが、帰還抵抗と入力容量による遅れ要素も(OP アンプの帰還ループ内という考え方からすれば)同じもので、動作の不安定を誘発するものです。ちなみにこの遅れ要素が-45°の「遅れ」になる周波数𝑓𝑃

式1

となります。抵抗成分は𝑅1と𝑅2の並列接続です。

これを進み位相補償で補償することを考えてみます。ポイントは「入力容量を進み位相補償で補償するときは、回路の増幅率との関係はどうなるのか(増幅率の低下で位相補償が効かなく なるのか)」ということです。

図3に対して、進み位相補償コンデンサ𝐶𝐹を接続した回路を図4に示します。

これをさらに図5のように帰還系だけを取り出してみます。入力ノード𝑉INが(ここまで見てきた回路の)OPアンプ出力に相当し、出力ノード𝑉FB(Feedback Voltage の意味)がOPアンプの反転入力端子に帰還されるところです。この入力𝑉INから出力𝑉FBにかけての伝達関数を、今回も虚数単位𝑗を用いて計算してみます。以下のように式を立てることができます。

図 3. UniversalOpamp2 を用いたOPアンプ寄生入力容量の影響を検討するモデル(CIN1 のみ検討する)
図 3. UniversalOpamp2 を用いたOPアンプ寄生入力容量の影響を検討するモデル(CIN1 のみ検討する)
図 4. 図 3 に位相補償コンデンサ𝐶𝐹を接続した
図 4. 図 3 に位相補償コンデンサ𝐶𝐹を接続した
 
図 5. 図 4 の帰還回路部分を取り出した
図 5. 図 4 の帰還回路部分を取り出した

式2

なんだか面倒くさそうな式です。伝達関数𝐻(𝑓)にして式変形をちょっと加えて、

式3-4

 

入力容量を完全にキャンセルできる

この式(4)の分母の第2項(分数になっているところ)をイコール1 とすることで、𝐶IN𝑅1 = 𝐶𝐹𝑅2という関係を得ることができます。こうすると入力容量𝐶INの存在が全く影響しない、周波数に依存しない回路を

式5

として実現することができます。

ちなみにオシロスコープの 10:1 パッシブ・プローブの位相補償は、この𝐶IN𝑅1 = 𝐶𝐹𝑅2という関係を得ることにより実現しています。

 

入力容量の補償に関しては「回路の増幅率を低下させると進み位相補償が効かなくなる」とは異なるうごき

前回のTNJ-067では、回路の増幅率が低い状態、つまりふたつの帰還抵抗の定数が近接していると、補償容量𝐶𝐹を接続した帰還回路で、位相の進み量を大きく確保できませんでした。

しかしこの検討からすると、𝐶IN𝑅1 = 𝐶𝐹𝑅2という関係を得ることにより、入力容量𝐶INの存在が全く影響しない回路を実現できることになります。そしてそれは「増幅率の低下で位相補償が効かなくなる」ものではありません。前回のTNJ-067で示した進み位相補償とは振る舞いが異なっているわけです。

 

入力容量と補償容量により位相の進みと遅れが生じる関係

さらにつづけていくと…、

式6

この𝑈1(𝑓)と𝑈2(𝑓)それぞれは、進み位相要素となる分子の部分

式7

と、遅れ位相要素となる分母の部分

式8

と表すことができ、𝑈1(𝑓)と𝑈2(𝑓)の従属接続として数学的モデルを考えることができます(これは前回のTNJ-067と同様)。

式(6)の分子である式(7)の𝑈1(𝑓)の位相は

式9

この式(9)が45°の「進み」になる条件は

式10

となりますから、この周波数𝑓𝑈1

式11

つづいて式(6)の分母である式(8)の𝑈2(𝑓)は、この式の分母を有理化(実数に)して

式12

この式の位相は

式13

この式(13)が45°の「遅れ」になる条件は

式14

この周波数𝑓𝑈2

式15

として𝑓𝑈1と𝑓𝑈2のそれぞれを得ることができます。 𝑓𝑈1と𝑓𝑈2の比は

式16

TNJ-067で示した進み位相補償での条件、𝑓𝑈1 < 𝑓𝑈2であれば

式17

という関係になります。𝑓𝑈1 > 𝑓𝑈2であればその逆です。

 

入力容量の補償にプラスしてOPアンプ負荷容量の位相補償にも対応した場合には

一般的に入力容量𝐶INは小さいですから、この式(17)を満足できる条件は設定可能で、入力容量補償にプラスして、TNJ-067で示したOPアンプの負荷容量による位相遅れの進み位相補償も同時に実現できることが分かります。

それでもこのように𝑅1, 𝑅2, 𝐶IN, 𝐶𝐹の関係により、進み位相が始まる周波数を、遅れ位相の始まる周波数より低くも高くもできることも分かります。前回のTNJ-067で示した進み位相補償とは、詳細に検討してみると、やはり振る舞いが異なっているわけです。

 

それでもここでの考え方はこれまでと同じ

さて、もしここで前回のTNJ-067の図 5(図 6 として修正して再掲)のような負荷容量による位相遅れを、入力容量𝐶IN(図中に 赤枠でその位置のみ示しました)の補償もしつつ、進み位相補償で対応したい場合、どう考えればよいかに踏み込んでみましょう。

これは実は単純な話しで、今回検討した場合において、式(7)から得られる進み位相が形成される周波数𝑓𝑈1[式(11)]も、式(8)から得られる遅れ位相が形成される周波数𝑓𝑈2[式(15)]も、位相の変化していく振る舞いとしては前回の説明と何ら変わりません[形成される周波数はそれぞれの式のように異なりますが]。十分な進み位相を図 5の回路網で形成するためには、やはり𝑓𝑈1と𝑓𝑈2が十分に離れている必要があるわけです。

式(16)において、𝐶INと𝐶𝐹との項(𝐶INと𝐶𝐹はそれぞれ数 pF 程度でしょう)があることで、比の右側の分母は1より大きくなり、 分子の𝑅1と𝑅2との比は前回のTNJ-067のケースよりもよりシビア(𝑅1と𝑅2との比がより大きくないと、つまり信号増幅率がより高くないと効果が少ない)になるわけです。

ともあれ大きな流れとしては、今回説明したような入力容量補償込みで、負荷容量による位相遅れを進み位相補償したい場合でも、前回のTNJ-067で「回路の増幅率を低下させると進み位相補償が効かなくなる」と説明した内容と同じ事態になるわけです。

適切な進み位相補償を形成させたい場合は、ここでもやはり、「𝑓𝑈1と𝑓𝑈2を十分に離す」必要があることは、前回の説明と何ら変わらないことになるわけです。

 

電流出力エラー・アンプ(チャージ・ポンプ)の位相補償回路は動きが少し異なる

スイッチング・レギュレータで用いられている、図 7 のような電流出力型のエラー・アンプにおける位相補償回路([5]のFigure 16.から抜粋)について、これまでと同様に位相の変化を考えてみましょう。

この位相補償回路は図 8 のような電流出力型チャージ・ポンプ PLL([6]の Figure 3.から抜粋)での位相補償でも同様に用いられており(チャージ・ポンプが電流出力なので)、「ループ・ フィルタ」と呼ばれています。図 9 は図 8 のような電流出力型チャージ・ポンプの位相補償回路、つまりループ・フィルタです([7]から抜粋)。これを例として考えてみます。図の左側(CP 側)からチャージ・ポンプからの電流パルスが加わり、 𝐶1, 𝑅2, 𝐶2がインピーダンスとなり電流・電圧変換とともに位相特性を決定する素子になります。つまり図 7と同じです。 𝑅3, 𝐶3, 𝑅4, 𝐶4はスプリアス除去のためのLPFなのでここは無視します。右側(VTUNE 側)が出力です。

この素子番号を用いて入出力の伝達関数[トランスインピーダンス𝑍(𝑓)]を計算してみます(LPF 部分は無視します)。まず

 

図 6. TNJ-067の図 5 再掲と加筆(負荷容量 47pFによる位相遅れを進み位相補償で対応したシミュレーション回路)
図 6. TNJ-067の図 5 再掲と加筆(負荷容量 47pFによる位相遅れを進み位相補償で対応したシミュレーション回路)

 

図 7. スイッチング・レギュレータで用いられている電流出力型エラー・アンプと位相補償回路
図 7. スイッチング・レギュレータで用いられている電流出力型エラー・アンプと位相補償回路
 

 

図 8. PLL IC で用いられている電流出力型チャージ・ポンプ([6]のFigure 3.から抜粋)
図 8. PLL IC で用いられている電流出力型チャージ・ポンプ([6]のFigure 3.から抜粋)
 
図 9. PLL IC の位相補償回路(ループ・フィルタ。赤枠の部分が位相特性を決定する素子。[7]から抜粋)
図 9. PLL IC の位相補償回路(ループ・フィルタ。赤枠の部分が位相特性を決定する素子。[7]から抜粋)

式18

これから

式19

進み位相要素となる分子の部分は

式20

𝑈1(𝑓)の分母は1なので、単に表記を変えてあります。

また遅れ位相要素となる分母の部分

ここでもこの式の分母を有理化(実数に)してあります。

 

ここでの考え方はこれまで少し異なるぞ

まず式(19)の分子の部分である式(20)の𝑈1(𝑓)の位相は

式22

となりますが、式(7)などと異なり、式中の項(第 2 項)の分母側に周波数の変数𝑓があります。これはちょっとおかしいのでは?と思いませんか。

数学的にはこれで𝑈1(𝑓)の位相を問題なく求めることができるのですが(𝑓 = 0でarg[𝑈1(𝑓)] = −90°になります)、電子回路の計算として、とくに「ポール(極)とゼロ」というものを考えていくうえでは、式(20)のように𝑓が式中の分母にあるのはよろしくなく(より理論的には「𝑓の多項式である必要」が、 さらに厳密には「ラプラス演算子𝑠の多項式である必要」があります)、そのため実際には

式23

として二つに分けます。進み位相要素となる分子の部分は、新たに

式24

と考えることができ、1/𝑓となっていた部分を変形した結果として、「新たに遅れ位相要素」となる分母の部分

式25

が形成されることになります。これをもう一度式(19)のところに戻って整理しなおしてみると、

式26

と3要素の従属接続となります。

このようにPLLのループ・フィルタ(電流出力エラー・アンプでは位相補償フィルタ)は、「ポール(極)とゼロ」の視点から考えるうえでは、位相を変化させる3つの要素𝑈1′ (𝑓), 𝑈2(𝑓), 𝑈3(𝑓)に分割できるわけです。

 

位相の進みと遅れを考える(その1)

𝑈1′ (𝑓) , 𝑈2(𝑓) , 𝑈3(𝑓)のそれぞれを見ていきましょう。まず式 (24)の𝑈1′ (𝑓)が45°の「進み」になる条件は

式27

となりますから、この周波数𝑓𝑈1′ は

式28

つづいて分母の部分である式(21)の𝑈2(𝑓)の位相は

式29

この式(29)が45°の「遅れ」になる条件は

式30

となりますから、この周波数𝑓𝑈2

TNJ068_e31

𝑓𝑈1と𝑓𝑈2の比は

式32

 

位相の進みと遅れを考える(その2)

最後に新しくできた(できたって、生まれたわけではありませんが…)𝑈3(𝑓)を見てみましょう。式(25)は分母に𝑗があるだけです。実数項はありません。これは「周波数によらず常時-90°」になる要素なのです。結局、周波数𝑓 = 0(より厳密には「𝑓 = 0といえる低い周波数)においては、

arg[𝑈1′(0)]= 0°
arg[𝑈2(0)]= 0°
arg[𝑈3(0)]=-90°

となり、周波数𝑓 = 0における𝑍(𝑓)全体の位相はこれらの足し算

arg[𝑈1′(0)]+arg[𝑈2(0)]+arg[𝑈3(0)]=-90°

です。エラー・アンプの位相補償フィルタや PLL のループ・フィルタでの位相周波数特性は-90°からスタートする」ということになり、前回のTNJ-067の式(4)や今回の式(4)とは位相特性が異なるということになるわけです。

 

位相の進みと遅れをシミュレーションしてみる

図 10 は𝑅2を100Ω、𝐶1を10nF、𝐶2を1μFとしたときの𝑈1′ (𝑓), 𝑈2(𝑓) , 𝑈3(𝑓)それぞれの位相変化と回路全体𝑍(𝑓)の位相変化を数値計算により得たようすです。

上から𝑈1′ (𝑓), 𝑈2(𝑓) , 𝑈3(𝑓) , 𝑍(𝑓)の位相変化となっています。 上記の説明のように、𝑈3(𝑓)は[式(25)から]直流付近から位相が-90°になっています。式(24)で表される進み位相要素となる𝑈1′ (𝑓)により、周波数が𝑓𝑈1 ′ = 1.592kHz[式(28)から]のとき位相が+45°になり、さらに周波数が上昇すると+90°になります。式(21)で表される遅れ位相要素となる𝑈2(𝑓)は上記より高い周波数である𝑓𝑈2 = 160.7kHz[式(31)から]で位相が-45°になり、さらに周波数が上昇すると-90°になります。これによりいちばん下の回路全体𝑍(𝑓)の位相は-90° ⇒ 0° ⇒ -90°と変化していることが分かります。

図 11 に図 10の条件をLTspiceで構成し、𝑍(𝑓)の位相変化をシミュレーションした結果を示します。図 10の結果と同じになっていることが分かりますね。

図 10. 𝑅2を100Ω、𝐶1を10nF、𝐶2を1μFとしたときの𝑈1′ (𝑓), 𝑈2(𝑓), 𝑈3(𝑓), 𝑍(𝑓)それぞれの位相変化のようす
図 10. 𝑅2を100Ω、𝐶1を10nF、𝐶2を1μFとしたときの𝑈1′ (𝑓), 𝑈2(𝑓), 𝑈3(𝑓), 𝑍(𝑓)それぞれの位相変化のようす

 

PLL 設計時の思い出では

私は以前、RF エンジニアだったこともあり、PLL 回路の設計もしていました。そのとき使っていたPLL ICが図 8のような電流出力型チャージ・ポンプのものでした。そのあたりの回路設計 をしていたころ、図 9の「𝐶1と𝐶2の比を1 : 10くらいにする」という説明を聞き、「なぜなのだろうか」ときちんと理解することができませんでした。しかしこのように「𝑓𝑈1と𝑓𝑈2の比が小さくなると最大位相進み量も少なくなる」ということが理解でき、式(32)を考えれば、なるほどねと、そのむかし聞いた説明が腑に落ちることとなるわけでした。

図 11. 図 10 の関係を LTspiceで𝑍(𝑓)の位相変化をシミュレーションしてみた
図 11. 図 10 の関係を LTspiceで𝑍(𝑓)の位相変化をシミュレーションしてみた

 

おわりに…「数学的ネタが多いなあ」

このところの技術ノートは、続けてだいぶ数学的ネタが多いなあと自分でも思っています(汗)。しかし実際に回路の振る舞いを考えていくには、回路理論の側面から検討していかないといけないので、残念ながら数学的ストーリー展開になってしまうのでありました…。

学術での電気・電子回路/デジタル信号処理などの理論検討も数学ですし、理論物理学(「数理物理学」というそうですね [8])も数学です。結局は数学に立ち戻ってしまうのだろうなあと、 ぼんやり通勤途上などでも思うものでありました…。

 

サッカーとわたし(つづき)

[最初からつづく]ときは経ち、アナログ・デバイセズの社員になり数年後の2016年、川崎フロンターレのJ1サッカー観戦に初めて川崎市の等々力陸上競技場に行きました。私の等々力陸上競技場でのサッカー初観戦自体は、その前年年末の皇后杯決勝 (女子サッカー)でした。当時もアナログ・デバイセズ株式会社が川崎フロンターレのスポンサーであることは知っていました。 なお私は生まれたときから現在も千葉県在住人です。諸般の事情により、等々力陸上競技場のある川崎市中原区(小杉地区)界隈に出没するようになったのでありました…。

その試合は、川崎フロンターレと鹿島アントラーズのマッチでした。それから年に数回は観戦するようになりました。

川崎フロンターレは J1 連覇したほどのチームなので、やはり上 手い…。いつも思います…。パスが的確に通ります。トリッキーなパスもつながります。他のJ1チームも同じく上手いですよね。そのプレーに「うまい…」と声が出てしまいます。私の後ろで観戦していたお兄ちゃんが話しをしているのが聞こえました。「ヨーロッパに行かなくても、同レベルの試合が日本で見 られるんだから、幸せだよな」。最近のJ1を見ていると確かにそう思います。ドーハの悲劇のときは「パスが通らないな」とヤキモキしながら見ていたものでした。

しかし私は千葉県人です。2016 年 9 月 22 日、等々力陸上競技場で天皇杯3 回戦があり、たった一度、川崎フロンターレとジェフユナイテッド市原・千葉(当時も現在も J2)との対戦を観戦しました。当然(?)、私はアウェイ側に陣取ると、廻りの観客のその黄色のユニフォームには、良く聞く、慣れ親しんだ企 業のスポンサー名が。「やっぱ、落ち着くな」と隣にいる妻に話し、その日ばかりは「敵」の川崎フロンターレと対峙していました(ホント、裏切り者…)。

すると思うのです。「ジェフユナイテッド市原・千葉が J1 に昇格したら黄色のユニフォームを着て気が狂ったように応援しているだろう」と。

思い出します。私が初めて観戦したプロ・サッカーの試合は、ドーハの悲劇の翌年だったと思いますが、千葉県市原市の市原緑地運動公園臨海競技場 [9]での、地元 J1チーム、ジェフユナイ テッド市原・千葉の試合だったのです。それは長男が小学校1年生のころ、そしてそれは、子供会での遠足でした…(なんと幼稚な観戦歴のスタート…)。

それならば、千葉テレビ放送 [10]を見たり、JR京葉線終点、千葉市内の蘇我駅近くのフクダ電子アリーナ [11]に行けばいいだろうという選択肢は、深く問い詰めませぬよう…(汗)。結局は二重裏切り者のヨタ話しですね^^;。いろいろ諸事情ございまして^^;。

ところでマーケティング目線でみて、等々力競技場内で一番の有効な広告媒体は「負傷者救護担架」だと(総合建設会社O社広告)、いつも観戦しながら思っています(笑)。

(了)のはずが…

 

やはり書かずにはいられない!2019 年 10 月 26 日!

上記まででこの記事は終わりにしようと、そして以下の「酔ネタ1行」は、だいぶ能天気モードなので、「没」にしようと思っていました(執筆している時期も分かってしまいますし)。

「そういう今週末(2019 年 10 月 26 日)はJリーグ・ルヴァンカップ決勝戦で、川崎フロンターレ対北海道コンサドーレ札幌を初めての埼玉スタジアム2002に見にいく予定です(笑)」

しかし「やはり書かずにはいられない!」という、超激戦ともいえるスゴイ試合となり…。数年後にこのWEBラボを自分で見ても、日記としてその記憶を思い出せるようにする(なんて我田引水ですね^^;)話題として、以下をご提供しておきたいと思います(汗)。

  • 前半 10 分。コンサドーレがセンタリングからこぼれたボールを逆サイドからゴール。いきなり先取点をもぎ取られる
  • 以降、決定的場面があるも双方得点できず
  • 前半のアディショナル・タイム終了間際。フロンターレがコーナ・キックを逆サイドから股抜きシュートし追いつく
  • 相当な混戦のなか、後半 42 分。ゴール直近で縦にふわりと出たパスをフォワードが胸でトラップしそのままゴール!これでアディショナル・タイムを守り切れば勝てる!
  • アディショナル・タイム終了まであと 1 分を切ったところでコンサドーレ。コーナ・キックをヘディングで合わせゴールにぶち込まれる…。終了間際で同点。「ヘディング…。まるでドーハの悲劇だ」
  • 延長に突入(普段のJリーグなら引き分け終了になってしまう)
  • フロンターレの選手にVAR(Video Assistant Referee)でレッド・カードが出て10人での攻防になり、そのセット・プレーでフリー・キックから得点される…。コンサドーレがリード。延長前半終了。これでは…
  • 延長後半。フロンターレ、ゴール前の混戦からゴール反対側に出たショート・パスをフォワードがゴール!同点に持ち込む。隣で見ていた妻は、そのあまりの興奮に、妻は…、青い川崎Fタオルを振り廻しながら、叫び、跳ねながら、感極まり泣き出してしまう
  • 延長が終了し、PK戦にさらに突入
  • PK戦はフロンターレ側ゴールにて。周囲に座っていたフロンターレ観客はぞろぞろとゴール裏のサポーター席側に移動している…(空き席はあるの?)
  • PK戦結果は表1のとおり。4本目が終わったところで『万事休す』と思われたが、その後の2本を(サドンデスとなった最後の1 本を)止めたキーパー新井選手。スタジアムは超歓喜の渦に!チョーかっこいいぞ、新井選手!
1 2 3 4 5 6
川崎
札幌

表1. ペナルティ・キックの経緯(失はクロスバーに当たったミス・キック、捕はキーパーが捕球し止める)

しかし本当に超怒涛の超興奮ともいえる超接戦の試合でした。そのため「書かずにはいられない」というところなのでありました(皆様、お許しください…)。北海道コンサドーレ札幌のファンの方、また他のチームのファンの方、一方的な中継で申し訳ございません(__)。ホントは JEF を応援すべきヤツが…(汗)。ともあれ両チームとも素晴らしかった試合でした。ネットでもJリーグ・ルヴァンカップ2019決勝戦について、多数記事や動画がありますので、よろしければご覧ください(何度その動画を見ても、あの興奮が蘇える…)

著者について

石井 聡
1963年千葉県生まれ。1985年第1級無線技術士合格。1986年東京農工大学電気工学科卒業、同年電子機器メーカ入社、長く電子回路設計業務に従事。1994年技術士(電気・電子部門)合格。2002年横浜国立大学大学院博士課程後期(電子情報工学専攻・社会人特別選抜)修了。博士(工学)。2009年アナログ・デバイセズ株式会社入社、現在に至る。2018年中小企業診断士登録。
デジタル回路(FPGAやASIC)からアナログ、高周波回路まで多...

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