高精度なCTスキャン技術で、患者を救う
高精度なCTスキャン技術で、患者を救う
「問題の発生は『止まれ』の合図ではない。それは『道しるべ』になるものだ」 これはRobert Schuller氏の言葉です。アナログ・デバイセズは、この言葉を支えとして、非常に難易度の高い技術的な課題に立ち向かってきました。当社の全技術者は、音波、光、振動などの測定精度を高めることに対して揺るぎない情熱を持っています。それにより、世界を変革する技術が次々に生み出されているのです。そうした技術の中には、人命の救助に役立つものも含まれています。
救命につながる技術の代表的な例が、医療分野で用いられるCT(コンピュータ断層撮影)スキャンです。アナログ・デバイセズは、CTスキャナのメーカーと密に連携し、その進化を先導しています。その結果として、ハードウェア技術、システム設計、そして医師や患者に対して極めて大きなメリットがもたらされています。
概要
対象企業/業種: |
CTスキャナのメーカーを含む医療業界 |
アプリケーション: |
CTスキャン技術 |
課題: |
CTスキャンの実施時に照射される放射線量の削減、画質の向上、CTスキャナの価格の低減、患者の治療結果(アウトカム)の改善 |
目標: |
CTスキャン技術の有効性と実施効率を高めて、より良い診断結果が得られるようにする。それにより、患者の治療結果を改善する。加えて、装置の所有コストを低減し、最終的には医療費を軽減する。 |
レントゲン装置を超える高い分解能
CTスキャン技術が初めて導入されたのは1970年代のことです。それにより、X線を当てるだけのレントゲン装置を使う場合よりも、患者の疾患の診断において明らかに優れた効果が得られるようになりました。具体的には、CTスキャンにより、軟組織や血管を観察することが可能になりました。その結果、医師は診断のかなり初期の段階で、非常に小さな結節影や、癌につながる可能性のある腫瘍を発見できるようになりました。CTスキャンでは、コンピュータや回転式のX線装置を使用することにより、「スライス」と呼ばれる身体の断面図を取得します。この画像をコンピュータ上で合成することにより、身体の特定部分の3D画像を生成します。その画像を基にすることで、医師はより迅速かつ正確に診断を行えるようになります。
多くの医師は、1度目のCTスキャンで何らかの異常を認めた場合、更に詳しく調べるために2度目のスキャンを実施します。残念ながら、それによって被ばくのリスクが増大します。実際、1回のCTスキャンによって最大200回のX線照射が行われると言われています。したがって、スキャンの実施回数が少ないほどリスクは軽減されます。あるいは、1回のスキャンですべてを観察できるようになれば、最初から適切な診断結果が得られる可能性が高まります。早期発見が可能になれば、患者の治療結果は改善されます。
CTスキャンの高精度化が患者を救う
アナログ・デバイセズは、20年近くにわたりCTスキャン技術の最前線にいました。画質の向上、被ばく量の低減、高速化、そして究極的には患者の治療結果の改善を支援してきたのです。
CTスキャナでは、X線の照射結果を基に、患者の体内を視覚化するために必要なデータを生成します。CTスキャナのメーカーは、正確な結果を得るための重要な技術の実装に取り組みます。当初、アナログ・デバイセズは、お客様であるCTスキャナのメーカーに対し、システムを構成するための部品だけを提供していました。その過程で、イメージング技術に関する専門知識や、医療用機器に関する高度な専門知識を長い時間をかけて吸収していきました。
その結果、現在ではセンサーからデジタル・プロセッサに至るまで、高度なCTスキャナの設計に必要なあらゆる技術を提供できるようになりました。それらの中には、パッケージや性能を最適化するための専門技術も含まれます。このような包括的な技術を活用することにより、お客様は格段に容易(かつ迅速)に製品を設計することができます。ノイズやアーティファクトを抑えた質の高い画像を取得できるため、お客様、医師、患者にとってより良い結果が得られるようになったのです。
アナログ・デバイセズのハードウェアを利用することで、お客様はアルゴリズムの開発や画像の再構成に専念できるようになります。その結果、競合他社との差別化を図ることが可能になります。従来の装置では、取得できる標準的なスライス数は8枚程度でした。それに対し、当社の高度なハードウェア技術とソフトウェア技術を組み合わせれば、16~64枚のスライスを得られるようになります。最も高度な装置では、256枚以上のスライスを取得することも可能です。
標準的なCTスキャン
スライスの数が少ないということは、1回のスキャンで得られる情報量が少ないということを意味します。そのため、再スキャンを実施しなければならなくなる可能性が高まります。
高精度なCTスキャン
スライス数が4~16倍に増えれば、最初から適切な診断結果が得られる可能性が高まります。問題が早期に発見されるようになれば、患者の治療結果が改善されることが期待できます。
アナログ・デバイセズの先進技術を利用すれば、コンポーネントのサイズを縮小できます。そのため、CTスキャナの製造コストが低減されます。このコスト削減の効果はサプライ・チェーン全体に波及します。従来、コスト重視の市場では、16枚のスライスを取得できるCTスキャナは手が届かない製品でした。現在では、そのような仕様のCTスキャナが低価格で販売されるようになり、より広い範囲で利用されるようになっています。
最も難易度の高い技術的課題に、真っ向から取り組む
アナログ・デバイセズは、イメージングに関する高度な専門技術を活かすことで、CTスキャンの未来を劇的に改善することを目指しています。そうした技術を有していることが、当社がこの業界で成功を収めている理由です。また、その成功の裏にはもう1つの理由があります。それは、当社が、最も難易度の高い技術的な課題に対し、真っ向から取り組むという姿勢を貫いていることです。
一般に、CTスキャナなどの医療用機器向けに部品を提供するメーカーは、性能を最大限に高めたアンプやコンバータなどのコンポーネントを製造/供給するところまでを担います。つまり、システムの構築はお客様に委ねるということです。それをはるかに超える範囲を網羅しようというのが、アナログ・デバイセズのアプローチです。コンポーネントを供給するだけで後は一切関与しないということではなく、当社はお客様との非常に密な連携を図ります。その事業に深く関与し、お客様の目標と戦略を完全に理解するよう努めるのです。CTスキャナのメーカーの場合、KPI(重要業績評価指標)としては、画質の向上、放射線量の低減、コストの削減、患者の治療成績の改善が用いられます。そうしたレベルの課題をアナログ・デバイセズは心から歓迎して取り組みを進めます。
アナログ・デバイセズは、一見「止まれ」の合図だと感じられるものを「道しるべ」だと捉えます。そのようにして、難易度の高い問題に挑み、精度の向上に情熱を傾けます。当社の技術者の尽力により、CTスキャン技術はいくつもの主要な領域で確実に進化を遂げました。
もちろん、そうした進化は、より多くの命を救うことに貢献しています。