DcStepテクノロジによるトルク出力の最適化
DcStep™は、アナログ・デバイセズのTrinamicファミリで採用されている高効率なステッピング・モータ用整流方式です。ステッピング・モータで利用可能な出力トルクの大部分を最大プルアウト・トルクの80%で使用することを目的としています。DcStepテクノロジは、位置カウンタの整合性を独自の方法で維持しながら、負荷抵抗の急増に対応するための追加トルクを効率的に提供します。
DcStepテクノロジは、フル機能の閉ループ・ステッピング・ドライブとコスト効率の高い開ループ・システムの間の差を埋めるものです。DcStepテクノロジを使用してトルク出力を最適化すると、安全マージンが向上し、アプリケーションはステップを失わずに確実に目標位置に到達できます。
DcStepテクノロジの仕組み
通常、ステッピング・モータを使用するときは、最大プルアウト・トルクの40%~50%を安全マージンとして見込みます。このマージンは、開ループ・システムでの予期しない負荷のピーク、共振によるトルク損失、機械部品の経年劣化を補償するために必要です。また、ステッピング・モータは、ローター速度と逆起電力の依存関係が原因で、高速時にトルクが低下します。
過大負荷時にステッピング・モータがステップを失わないようにするため、このセンサーレス・テクノロジは、ステッピング・モータの利用可能な出力トルクの大部分を約80%で使用します。実際の動作点で負荷がモータの出力トルクを超える場合は、ステッピング・モータをDCモータのように動作させ、ステッピング・モータのトルク曲線の形に沿って移動することで、モータの速度を実際のモータ負荷に自動的に適応させます。
DcStepテクノロジは、逆起電力がモータのコイル電流と最大出力トルクに与える影響が大きい中速以上の速度で使用します。特定の設定や用途では、ステッピング・モータ・テクノロジは、同一速度でのトルク出力を向上させたり、最大速度を高めたりしてモータの機能領域を拡張します。これにより、エンジニアはよりSWaP効率の高いステッピング・モータを使用して、同じ結果を得ることができます。
ステッピング・モータ・ドライブにDCモータ特性を追加するDcStepテクノロジ
通常、開ループ・ステッピング・モータ・ドライブは過負荷状態になるとステップを失いますが、DcStepドライブはその代わりに速度を低下させます。こうした負荷に応じた速度制御により、実際のモータ負荷に合わせて速度が自動的に調整され、モータはステップを失うことなく可能な最高速度で動作します。これにより、ドライブは重負荷状況による抵抗を克服し、位置カウンタの整合性を維持することができます。これは、エネルギー効率の点でDCモータの動作に似ています。更に、DcStepには自動ランピングの機能も備わっています。ランピング・プロファイルをリアルタイムのトルク過負荷状態に適応させることで、目標位置に確実に到達できます。