高精度の計測技術により、機械の状態を正しくつかむ
高精度の計測技術により、機械の状態を正しくつかむ
車を運転していたら、いつもと違う音がする――。これは誰もが経験することでしょう。その音はちょっとした不調が原因で発生しているのかもしれません。そうではなく、安全性や経済的な面で大惨事につながりかねない大きな問題が生じている可能性もあります。いずれにせよ、原因がわからないままでは不安であることは確かです。
自動車をはじめとする機械が、非常に軽微な振動や些細な音の違いを検出し、能動的かつ正確に分析する能力を備えているとしたらどうでしょうか。その場合、信号を捉えたら直ちに診断を実行し、問題が表面化する前に何らかの対応を図ることができるはずです。
そのようなことを実現するのは不可能なのでしょうか。実は、アナログ・デバイセズの「OtoSense」を利用することで、それが可能になります。
概要
対象分野: |
機械の状態検出 |
課題: |
機械の状態分析は、熟練の技術者によって行われるケースが多い。そうした人材の数は限られるので、機械の性能に関するスケーラブルな洞察を得るためには、AI(人工知能)をベースとする技術の導入を進める必要がある。 |
目標: |
任意のアセットから検出した未処理の信号を基に洞察を生成することで、機械の稼働率を向上させる。また、機械のユーザが、診断用の専門技術を広範囲に適用できるようにする。 |

機械学習の精度の向上、憶測の排除
大規模な機械を健全な状態に保つために、故障を予測して対応を図るというのは実現可能なことなのでしょうか。少なくとも、従来それは非常に難易度の高いことでした。そのため、一般的には、効率が悪く、コストのかかる定期保全や事後保全が選択されてきました。
アナログ・デバイセズのOtoSenseは、整備士に相当する機能を機械に組み込み、絶えず耳を傾けることで、その動作や状態を評価することを可能にする技術です。重要なのは、取得が困難な信号を確実に計測すると共に、リアルタイムに解釈を実施できるようにすることです。機械で生じる音や振動を継続的に測定すると、大量のデータが生成されます。1つのセンサーによって生成されるデータの量は、1秒あたり数百キロバイトにも達します。そのため、すべてのセンサーからのすべてのデータをリモートのクラウドに送信し、リアルタイムで正確に分析を実施することが難しくなります。そのような手法ではなく、エッジで継続的に解釈を実行するというのが現実的な選択肢になるということです。エッジでは、センサーによるデータの生成と同じ速度で情報を更新していかなければなりません。
OtoSenseは、機械で発生する音と振動の変化を検出/キャプチャします。その上で、それらのデータを合成し、機械の状態に関する洞察を導き出します。この能力を利用すれば、お客様はシステムをネットワークに接続することなく、取得が困難な信号を確実に測定し、価値ある情報を得ることができます。
OtoSenseのシステム構成図

OtoSenseの活用法
航空業界では、信頼性の高さと稼働率の高さが非常に重要な要素になります。完全に整備された航空機により、膨大な数の乗客を安全かつ予定どおりに目的地まで運ぶことが求められるからです。
航空会社では、大量の旅客機の保守に向けた診断/意思決定の手段として、AIの活用を進めています。現在、航空機による乗客の輸送量は、保守能力をはるかに上回るペースで増加しています。残念ながら、どの航空会社においても、エンジンやスタータの正常な動作を効率的に評価できる熟練の運航整備士は不足している状況にあります。大きな故障が発生した場合には、緊急着陸を実施し、すべての乗客をいったん航空機から降ろしてから再度目的地まで輸送し直さなければなりません。OtoSenseを活用すれば、そうした事態を防ぐことが可能になります。多くの場合、故障の初期の兆候を1分以内に検出することができるはずです。
センサーからのデータの確認、分析、結果の報告という一連の作業には、優秀な技術者であっても数時間を要します。また、経験が豊富な整備士や技術者が、対象となる機械について完璧に理解するまでには、何年もの訓練が必要になる可能性があります。その結果として熟練のレベルに達したのに、わずか数年でその技術者が定年退職を迎えるというのもよくあることです。
OtoSenseは、そうした専門家から膨大な数の機械について日々効果的に学習する機能を備えています。それにより、自らのレベルを着実に専門家のレベルに近づけていきます。OtoSenseを利用する場合、機械の状態検出(機械の稼働性能の監視)を自動化する手法を構築することにより、整備士が苦労して習得した専門知識を基にエンジンの監視の規模を拡大することが可能になります。また、主観的な評価ではなく、真の意味でデータ駆動型の専門技術として、状態検出の手法を確立することができます。

「疑念」を「驚嘆」に変える
それまでの常識を覆す新たな技術に対し、お客様は懐疑的な反応を示すものです。OtoSenseについても同様です。しかし、OtoSenseを導入した場合、その疑念が驚嘆に変わるまでにさほど時間はかかりません。お客様は、すぐにOtoSenseの能力を目の当たりにすることになります。OtoSenseは、正常な状態と異常が生じている状態の非常にわずかな違いを検出し、リアルタイムに専門家とやりとりを行って、その事象の正体を突き止めます。
現在、OtoSenseは航空宇宙、自動車、産業、医療などの分野に対して多大なインパクトを与えています。例えば、医療分野にOtoSenseを導入することにより、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者を監視し、咳をしていないかどうかをチェックすることができます。また、睡眠時無呼吸の検出、肺音の監視、高齢者の見守りといったことにも応用できます。あるいは、建築物において、緊急事態に対応するためのエリアやカメラが設置できない場所を監視し、建物内にいる人の安全性を確保することにも役立てられます。OtoSenseは、これから登場するであろう数多くのアプリケーションに採用されるはずです。
車を運転している際、いつもと違う音に気づいたとします。近い将来、そのような事態に遭遇したときには、ボタンを押してOtoSenseのような技術にアクセスするようになるでしょう。そうすれば、その奇妙な音や振動がオイル交換だけで直る類のものなのか、エンジンの徹底的な点検を必要とするものなのかということが即座に判明するはずです。
*Gartner, Markets & Markets, Research and Markets, Accenture, Transparency Market Research