想像できたでしょうか

もし病気になっても、自宅や外出先でも医療ケアを受けられる日を・・・

 

化学反応から思わぬ成果が生まれるように、テクノロジーの分野でも、異業種間のコラボレーションからしばしば斬新なブレークスルーが誕生します。
医療現場にブレークスルーをもたらすために―。現在、世界トップの研究機関と、世界をリードする半導体メーカーとの共同開発プロジェクトが進められています。連携するのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者とアナログ・デバイセズの技術者たち。舞台は、このプロジェクトのためにMIT内に設立された「MEDRC」(Medical Device Realization Center: 医療電子デバイス実現センター)です。
今日、医療界では“ポイントオブケア”がキーワードとなっています。医療の現場を病院や診療所ではなく、患者さんがいるその場所に変えるものです。患者さんにとっては移動と費用に関する負担を軽減でき、QOL(Quality Of Life: 生活の質)の改善につながります。ポイントオブケアを実現するには、自宅や外出先でも患者さんの生体情報をモニターできる高性能で安価な携帯型装置が欠かせません。この装置の実現に必要な新しいテクノロジーの研究開発を担うのが、MEDRCです。
ここには世界中から優秀な頭脳と最先端の技術ノウハウ、そしてイノベーションに対する強い情熱を持った、数多くのエキスパートが参加。ウェアラブル医療機器経口摂取可能な体内センサー、超音波画像診断装置など、それぞれの専門知見を共有しながら、日々イノベーティブな開発に取り組んでいます。

 

ウェアラブル人体測定装置、前臨床試験へ

MEDRCが手掛ける数々の研究開発の中でも実現に大きく近づいているのが、人体インピーダンス測定装置です。患者さんの日常生活に支障を来さないよう、ウェアラブル型で提供。ワイヤレス・モニタリングで人体の水分量や電気皮膚反応*1、身体組成などを測定します。現在、鬱血性心不全の患者さんに対して臨床上有用な体液貯留情報が得られるか、前臨床試験が進められています。
また、測定装置本体の開発と併行して、人体と装置をつなぐインターフェースに関しても素材や方法の研究が行われています。導電性繊維、非接触型電極、心電計用電極、マイクロニードルなど、数多くの選択肢から状況に応じて最も効率的で患者さんの負担が少ないインターフェースを自由に選べるようにするのが狙いです。
さらに、普段の生活でストレスなく使えるようにするのも大きなテーマです。MEDRCでは、腕時計型やスマートフォン内蔵型など、測定装置のさまざまなスタイルも研究。これら多彩なセンシング/モニタリング技術が統合されれば、普段通りの生活を送りながら、多くの医学的モニタリング情報が自動的に得られる日が来るのも遠くないかもしれません。

 

若きイノベーターと二人三脚で、明日の医療を

より良い医療を実現するために設立されたMEDRC。アナログ・デバイセズでは、技術者の派遣と研究開発資金の提供を通じて、MEDRCのさまざまなプロジェクトを支援しています。また、博士課程の学生に対して設計アーキテクチャや回路設計に関するアドバイスを行い、学生の大胆なアイデアを具現化するための後押しとして、評価や改善に関する提案も実施しています。 アナログ・デバイセズは、50年の歴史の中でイノベーターの育成に注力し続けてきました。MEDRCとのパートナーシップもこの理念に基づいたものです。医療の新しい世界を拓くイノベーターに、コンセプトの段階からソリューションの完成まで寄り添い支援すること。これは、私たちアナログ・デバイセズにとっても得難い経験です。私たちはこれからも、明日を担うイノベーターと二人三脚で、次の医療のブレークスルーを目指していきます。

*1: 神経や発汗による湿度変化で、皮膚中の熱や電流の伝わり方が変化すること。




鬱血性心不全管理用
ポータブル生体インピーダンス分光測定装置について

 

MEDRC M.K. Delano氏、Tom O’Dwyer氏
MEDRC - Maggie Delano

現在、米国では鬱血性心不全の患者が約500万人おり、さらに毎年40万人以上ものペースで患者が増え続けています。患者のほぼ2人に1人が4~6ヶ月以内に再び入院していますが、早期に再入院した患者の半数はもっと早く再発の兆候が分かっていれば入院する必要はなかったと考えられます。
代償不全性心不全*2は、生体インピーダンスの測定をすれば発症の14日前までに予測できることが確認されつつあります。そこで私たちは、1kHz~1MHzの生体インピーダンスを手軽に測定できるポータブル測定装置を開発しました。
このシステムではマグニチュード比と位相差の検出法を用いてインピーダンスを割り出します(図1)。システムはアルミニウムのボックスに格納され(図2)、4本の同軸ケーブルを使用。これにより寄生容量の影響を低減します。
十分な性能を引き出すためRCネットワークの調整を行い、健康なボランティアの方々の協力を得てモニター試験を進めています。

 *2:心機能の低下を補う「代償機構」が働かなくなり、安静時も十分な心拍出量を維持できない状態

MEDRC Figure 1

図1:マグニチュード比および位相差検出の回路図(概略)
固定正弦波電流を人体と電流検出抵抗器に加えます。電圧はアナログ・デバイセズのRF/IFゲイン位相検出器「AD8302」によって増幅、検出されます。


MEDRC Figure 2

図2:ポータブル生体インピーダンス測定装置の外観
システムはアルミニウムのボックスに格納されています。



お客様と共に想像の先へ、50年の英知

世界をリードする信号処理技術で「アナログとデジタル」「夢と現実」との懸け橋を担ってきたアナログ・デバイセズ。私たちはこれか らも、夢とプロセスをお客様と共有しながら、イノベーションを加速し、ブレークスルーを生む、新たなソリューションを切り拓いてまいります。想像を超える可能性を―50年目のアナログ・デバイセズ。




パートナーの声

医療ケアの場所を、病院・診療所から家庭へとシフトさせるには、革新的な医療装置が不可欠です。私たちMITとアナログ・デバイセズは、連続的な生体信号モニター装置に必要なテクノロジーを医用機器メーカーに提供すべく、共同研究に取り組んでいます。世界中の患者さんの生活が改善されることを願って。

―マサチューセッツ工科大学(MIT) 教授
医療電子デバイス実現センター(MEDRC) 共同設立者
Charles G. Sodini博士








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