想像できたでしょうか
世界の食卓を変える、“Internet of Tomatoes ?”
東を美しい海岸線で縁取られ、内陸には豊かな緑を抱える、米国・北東部のニューイングランド地方。ここには、小さな農場が多数点在しています。近い将来、もしかするとこの地が“究極のトマト”の産地となるかもしれません。
高品質な作物を、大量かつ安定的に収穫したい――。農業を営む人なら誰もが抱く願いです。ニューイングランドのトマト生産者も、例外ではありませんでした。しかし、その願いを実現するために迎えたパートナーが少し変わっていました。それは農業の専門家でもなければ、肥料メーカーでもありませんでした。驚くことに、私たちアナログ・デバイセズだったのです。
IoT革命の舞台、ニューイングランドのトマト畑
アナログ・デバイセズの大きな使命は、リアルな世界とデジタル世界の懸け橋となること。この使命を果たすべく、私たちは懸け橋に欠かせないセンシング技術や計測技術、コネクト技術を磨き上げてきました。そして、これら先進技術の新しい応用先として期待されたのが、ニューイングランドのトマト畑だったのです。
美味しく高品質なトマトを大量に、かつ継続して収穫するには、水の量や収穫の時期をどうするべきか? こうしたさまざまな選択について、生産者のベストな判断をアシストする、センサーとクラウドコンピューティングを一体化したソリューションの提供。これがアナログ・デバイセズのエンジニアのゴールでした。
さて、スマート・アグリカルチャーは、作物、農家、そして食卓を囲む消費者に、どのような未来をもたらすでしょうか。今回は、“Internet of Things”ならぬ、“Internet of Tomatoes”のお話です。
アナログ・デバイセズのエンジニア、トマトを学ぶ
アナログ・デバイセズのエンジニアにとって、トマト栽培はまさに“畑違い”。そこでまず、地元農家に足を運びトマト栽培について学ぶことから始めました。最初に学んだのは、理想のトマトは何だろうか? ということ。一口に“理想のトマト”と言うのは簡単ですが、味、形、香り、糖度、酸味、リコピン酸含有量など、その指標は多岐にわたります。次に、エンジニアが学んだのは、理想のトマトを大量に収穫するための“理想の条件”です。こちらも温度や湿度、日照時間など、数多くの環境指標がありますが、これも実地で教わりました。
こうして長期間にわたりトマト栽培の知見を積んだエンジニア。いよいよ本領発揮です。着手したのは、環境データを正確に計測/処理するセンシング技術と、そのデータを迅速に共有/伝送するクラウドコンピューティング技術を融合させたソリューションの開発でした。
ソリューション全体の仕組みはこうです。まず、畑のさまざまな場所で栽培されているトマトの蔓(つる)にセンサー装置を設置。装置はトマトの生育環境を24時間モニタリングし、品質や味、収穫量、病気のリスクなど、作物の出来を左右する環境データをリアルタイムで生産者の携帯機器に送ります。そして、このデータに基づき、生産者が散水量の加減、土壌の調整、最適な収穫時期を見極めるというものです。その結果、生産者はこれまでのように経験や勘に頼ったり、生育環境を見て回る必要はなくなりました。
また、畑に設置されたセンサー装置は、収集した環境データを携帯機器に送ると同時に、クラウド上のストレージアプリケーションにも伝送します。データはデータベースとして積み上げられ、蓄積が増えるほど、より良い品質、より多くの収穫を得るための貴重なヒントとなります。さらに、共有データベースとすれば、他の農家でも簡単にノウハウを活用することが可能です。
晴れの日も、雨の日も、センサー×クラウド
このInternet of Tomatoesソリューションは、大きく2つのテクノロジーで構成されています。ひとつは、センサー装置ですが、高レベルの要件を満たす必要がありました。まず、微妙な環境変化も作物に大きく影響するので高精度であること。次に、日光や風雨、土・砂に曝されるので極めて堅牢なこと。そして、長期間使用されるので電池交換の手間が少なくて済む低消費電力であることです。アナログ・デバイセズのセンシング技術は、この厳しい要件をクリアすることを可能にしました。
ソリューションを構成するふたつ目のテクノロジーは、クラウド技術です。こちらの課題は、高精度のデータをリアルタイムで表示させることでしたが、課題を解決するためにThingWorx™のIoTクラウドアプリケーションを採用。このアプリケーションの「リアルタイム・ダッシュボード」という機能を使うことで問題をクリアすることができました。
さまざまな工夫や技術、ノウハウが詰まったスマート・アグリカルチャー・ソリューションがもたらす恩恵は、ニューイングランドのトマト畑だけにとどまりません。トマト以外の作物でも、途上国の農業でも、収穫量向上に貢献することでしょう。また、農薬使用量や栽培コストの削減、水や農地の効率活用にも新しい道を開くことでしょう。さらに言えば、農地のリアルな情報を、クラウドコンピューティングを介して分析/共有し、農地にフィードバックするという手法は、もしかすると世界を食糧危機から救う一助になるかもしれません。
世界にIoT革命を、まだまだ沃地は広がっている
リアルな世界とデジタル世界との懸け橋、アナログ・デバイセズのテクノロジー。それは農業の分野だけでなく、スマート・シティやスマート・ファクトリー、医療システムなど、さまざまな領域で進行するIoT革命を、さらに推し進めていくことになるでしょう。
私たちはこれからも、お客様とのパートナーシップのもと、先進技術とシグナル・チェーンやIoTのノウハウを発揮し、困難な課題をシステムレベルのソリューションで解決していきます。今回、エンジニアがトマト畑で学んだように、私たちが多くを学ぶほど、お客様には新しいサクセス・ストーリーを、そして世界中の人々には新しい未来の姿をご覧いただけると信じています。
お客様と共に想像の先へ、イノベーションというDNA 1965年の創業以来、世界をリードする信号処理技術で「アナログとデジタル」「夢と現実」との懸け橋を担ってきたアナログ・デバイセズ。半世紀以上におよぶ歴史の中で、私たちは常にイノベーションを追求してきました。イノベーティブな開発姿勢こそ、アナログ・デバイセズのDNAです。 そして今、次の50年に向けて…。私たちは長年の英知を基盤にしながら、ますますイノベーションを加速。これからも、夢とプロセスをお客様と共有しながら、ブレークスルーを生む、新たなソリューションを切り拓いてまいります。 “想像を超える可能性を”―アナログ・デバイセズ。 |