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Ciscoケース・スタディ


Cisco logoCiscoのテレプレゼンス・ビジョンがBlackfin®ベースのHDビデオ・コーデックにより現実のものに

シリコン・バレーに本拠を置くCisco Systems は、今日のインターネットを可能にしたインフラストラクチャ機器の世界的リーダーとして、企業がネットワークベースのリソースを活用してビジネスの成果を高める方法を恐らく誰よりも知っています。そして今、アナログ・デバイセズ(ADI)のBlackfin®プロセッサがもたらすプログラマブルな柔軟性と卓越した価格/性能によって実現したCiscoの全く新しい「テレプレゼンス」ビジュアル・コラボレーション・ソリューションが、ビジネスの生産性を新たな高みへと引き上げます。

未来派の人たちは、離れた場所にあるものを正確に複製するというエクスペリエンスを実現する技術として、テレプレゼンスを長い間待ち望んでいました。その新しいIPベースのビジュアル・コラボレーション・ソリューションに対し「テレプレゼンス」という用語を使用できるようにするために、Ciscoは超高精細(HD)ビデオ(画面にアーチファクトがない)を備え、遅延がクラス最小(タイム・ラグを認識できない)で、なおかつ既存のエンタープライズ・ネットワーク・インフラストラクチャの限られた帯域幅で不確実な決定論を通じて通信を行う製品を開発する必要がありました。

この新しい機器のユーザにかつてないレベルの素晴らしい使用感覚を提供して初めて、Ciscoは遠隔地の同僚、パートナ、ベンダ、カスタマとの間により効果的なビジネス関係を築くことができます。世界初の超高精細1080p/30低遅延HDビデオ・コーデックの実装には、並外れたアルゴリズム処理能力が必要でしたが、Ciscoの開発者がテレプレゼンス製品の分解能にコスト、放熱、プログラマビリティの条件を加えた結果、更に高い能力が求められることとなりました。

計算負荷の高いテレプレゼンス・アプリケーションを処理するため、Ciscoは最終的にアナログ・デバイセズのADI Blackfin ADSP-BF561プロセッサのアレイを採用しました。2個の600MHz Blackfinコアを対称に配置したADSP-BF561は、強力かつコスト効率の高い処理エンジンで、Ciscoの先進のビデオ・プロセッシング・アプリケーションにはまさにうってつけです。固定機能のASICやFPGAでもシステムの技術条件を満足できたかもしれませんが、Blackfinがプログラマビリティを備えていることで、システム志向のCiscoの技術者たちは、非常に厳しいタイム・フレームの中で開発リスクを最小限に抑え、実際に機能するソリューションを開発することができました。また、Blackfinプロセッサの世界有数のパワー・マネージメント・アーキテクチャにより、システムに放熱処理を施すことも不要となりました。

テレプレゼンスとは?

テレプレゼンスは、参加者全員が同じ部屋にいるかのようにユーザが行動したり共同作業することを可能にする技術です。これまでのビデオカンファレンス・ソリューションは、多くはセットアップが不能で、ユーザが違和感を覚えることがよくありましたが、綿密に設計されたテレプレゼンス・ソリューションは、遠隔地への即時の接続、実際と同じように見える等身大の参加者映像を実現する自然な環境、そして、顔の表情に完全に同期し、会議室に入室した時点から参加者を追跡する高忠実度、低遅延で指向性のあるオーディオを提供します。

CiscoのBlackfinベースのテレプレゼンスには、役員室用に設計されたCTS1000と、全機能完備の「すぐに使える」会議室用ソリューションであるCTS3000の2つのモデルがあります。これらのソリューションには、2か所で現実感のあるミーティングを行うのに必要な機能がすべて揃っています。会議室システムには、ディスプレイ画面の反射を減少させるための天井灯、楕円テーブル、椅子、3台の65インチ・プラズマ・ディスプレイ、3台のカメラ、Blackfinプロセッサを収容したシステム・キャビネットが含まれています。

これはすべて遠隔地の「相手側」会議室でも全く同様に複製されており、それらが隣接しているかのような驚くべき錯覚が生み出され、2つの会議机が継ぎ目なく1つに連結しているように感じられます。CTS1000システムは1台の65インチ・プラズマ・ディスプレイ、1台の高精細1080pカメラ、1つのシステム・キャビネットで構成されています。企業が用意する必要があるのは、空いた会議室とイーサネット用ジャックだけです。(Ciscoはネットワークの検査を行い、顧客の企業内ネットワークが妥当な帯域幅と、ネットワーク全体を通じてエンドtoエンドで適切なサービス品質を確保できるよう構成されたネットワーク装置を備えているかを確認します。)

「ユニファイド・コミュニケーション」とIP技術におけるCiscoの先進性により、テレプレゼンス・システムは容易にセットアップ可能で、使いやすいものになっています。ユーザは2回クリックするだけで、何千キロも離れた同僚と直ちに「対面して」会議を開始できますが、システムのHDビデオの現実感が非常に高いため、相手が実際にはその部屋にいないことを忘れてしまいがちです。

高精細ビデオ

Ciscoのテレプレゼンス・システムで、最も重要な要素ではないとしても最も重要な条件の1つは、標準の比較的狭帯域の企業内ネットワークに対するHDビデオ・エンコーディングおよびデコーディングに対応できることです。Ciscoは、720pから1080p/30のビデオ・モードにスケール・アップできることが必要であることを定めました。数字の「1080」は垂直解像度が1080本であることを示し、「30」は毎秒30フレームを示すもので、現時点で1080p/30は最も高い解像度です。超高精細ビデオも1080p/30と呼ばれることがあります。更にCiscoは、IP QoS接続に対応して、帯域幅の条件を720pでは3~9Mbpsに、1080pでは9~12Mbpsに縮小したいと考えました。

先進的なビデオ・コーデック規格であるH.264は、これまでの規格よりも低いビット・レートで非常に高いデータ圧縮を実現するものとして知られ、未加工のビデオを経済的な企業内WANリンクに適合するよう圧縮できます。Ciscoのコーデックは、H.264ビデオ・コーデック規格に基づくビデオ・エンコーダ/デコーダで、クラス最小の遅延特性を備え、最大1080p/30のビデオ解像度をリアル・タイムで実現します。HDビデオのエンコード/デコード遅延を最小限に抑えることで、Ciscoのソリューションがより多くの「遅延バジェット」をネットワークに与えることができ、これにより、ハードウェアおよびソフトウェアのアップグレードをネットワークが新しいアプリケーションを処理できる最小範囲に抑えることができるため、迅速な展開が可能になります。2個の600MHz高性能Blackfinコアを対称に配置したBlackfin ADSP-BF561プロセッサは、Ciscoの非常に魅力的で複合的なビデオ・アプリケーションに最適な選択肢です。Ciscoのビデオ・コーデック機能は、複数のBlackfin ADSP-BF561プロセッサからなるマルチプロセッサ集積体全体に分配され、毎秒0.5テラ命令の処理能力を発揮します。これによって、ビデオ・サブシステムがクラス最高の性能レベルで機能し、実用的なソリューション展開が可能となります。

Blackfin ADSP-BF561プロセッサは、ハイエンドのマルチメディア・アプリケーションと電気通信アプリケーション用に選択されることも多いため、2つの独立したBlackfinプロセッサ・コアで構成されています。各コアは、2個の最先端16ビットMACシグナル・プロセッシング・エンジン、2個の40ビットALU、4個の8ビット・ビデオALU、1個の40ビット・シフタに加え、簡潔で直交性の高いRISCライクのマイクロプロセッサ命令セットとシングル命令マルチ・データ(SIMD)マルチメディア機能の長所を備えており、これらがすべて1つの命令セット・アーキテクチャに組み込まれています。

容易なプログラミング/低消費電力

Blackfin ADSP-BF561プロセッサがRISCライクなレジスタと命令モデルを採用しているため、プログラミングが容易なことから、開発コスト、リスク、製品の市場投入までの時間を短縮できたとCiscoは述べています。Blackfinのプログラマブル・アーキテクチャを使用すれば、コストのかかるASICハードウェアを再設計することなく、ネットワーク経由機能のアップグレードも可能です。Ciscoもアナログ・デバイセズのソフトウェアおよびハードウェア開発ツールを活用して市場投入時間の短縮とコスト削減を実現しています。ツールにはVisualDSP++ 開発環境が含まれており、プログラマはこれを使用して、アプリケーションの開発とデバッグ、および、ハードウェアおよびソフトウェアのテストとデバッグをするためのエミュレータ・ハードウェアの開発とデバッグを行うことができます。

CiscoはBlackfin ADSP-BF561プロセッサに統合されている多数の汎用デジタル・イメージング・ペリフェラルを活用して、テレプレゼンス・システム・コーデック用の高度に洗練されたシステムオンチップ設計を実現しました。Blackfin ADSP-BF561プロセッサの汎用ペリフェラルには、ITU-R 656ビデオに対応し、アナログ・フロントエンドADCへのグルーレス・インターフェースをサポートする、パラレル入出力ペリフェラル・インターフェース(PPI)2個、8つのステレオI2Sチャンネルに対応するデュアル・チャンネル全二重同期シリアル・ポート2個、デュアル16チャンネルDMAコントローラおよび1個の内部メモリDMAコントローラ、PWM機能を持つ汎用32ビット・タイマー/カウンタ12個、SPI互換ポート、IrDA®デュアル・ウォッチドッグ・タイマーをサポートするUART、プログラマブルなフラグ48個、1x~63xの周波数逓倍機能を持つオンチップ・フェーズ・ロック・ループ(PLL)があります。

Blackfinが低消費電力であるため、Ciscoでは、テレプレゼンス・システムの熱対策にはシステム・キャビネットにエアフローをもたらす小型の静音ファンの設置だけで済みました。これは会議室環境の雰囲気を維持する上で極めて重要です。Blackfinプロセッサは低消費電力かつ低電圧の設計手法で設計されているため、開発者は動作電圧と動作周波数の両方を変えることで全体的な消費電力を大幅に低減可能です。Ciscoではこの結果を、ビデオ・サブシステムを駆動する「クールに稼働しているBlackfinプロセッサの集積体」と評しています。設計においてヒート・シンクは不要でした。

Blackfinを使用したことで、Ciscoは次世代のテレプレゼンス・システムに必要であった高圧縮HDビデオを用意しています。その結果、企業のエグゼクティブや従業員の移動時間、移動コスト、それに長旅に伴うストレスが低減され、現在ではIPベースのビデオを使用してパートナ、同僚、カスタマと実際に対面しているのに近い環境で会うことができ、以前ではあり得ないほどの生産性とコラボレーションの向上を実現できるようになっています。

「…固定機能のASICやFPGAでもシステムの技術条件を満足できたかもしれませんが、Blackfinがプログラマビリティを備えていることで、システム志向のCiscoの技術者たちは、非常に厳しいタイム・フレームの中で、開発リスクを最小限に抑え、実際に機能するソリューションを開発することができました。