DN-312: 全負荷範囲にわたって高効率を実現する65A高性能3フェーズ電源

はじめに

ノートブック・コンピュータやその他のモバイル・アプリケーションに使用されるCPUは30Aを超す電流を流し、近い将来65Aもの電流を流す可能性があります。このような重い負荷には、システムを過度の熱ストレスから保護するために高効率電源が必要です。この点に留意して、PolyPhase®スイッチングDC/DCコンバータはこのような重い負荷で効率が非常に高いので、CPU用電源の標準になっています。にもかかわらず、スリープ・モードや待機モードに長時間とどまる携帯用アプリケーションでは、軽負荷時の効率も重要性を増してきており、この場合、バッテリ寿命を最大限延ばすために省エネも優先事項になります。従来のPolyPhaseコンバータは重負荷時に無比の性能を示しますが、軽負荷時には残念ながら同等の効率を実現しません。リニアテクノロジー社はこの問題の解決策としてPolyPhaseコントローラの新しい製品群を提供します。これらを使うことによりCPUの全負荷範囲にわたって効率の良いコンバータを設計することができます。

これらの新しい3フェーズ・コントローラLTC®3730LTC3731およびLTC3732は重負荷と軽負荷の両方で効率良く動作します。これらの新しいコントローラにはStage Shedding動作が採用されており、軽負荷時の効率を向上させています。LTCの2フェーズ・コントローラ同様、これらの新しい3フェーズ・コントローラは正負両方の出力レールの真のリモート検出を備えており、高出力電流でも厳密に出力を安定化します。各電流センス抵抗のパッドに対してケルビン検出(正と負)をおこない、たとえ並列電力段のレイアウトが対称でなくても、正確な電流分担を実現します。すべてのコントローラにはスイッチング周波数が最大600kHzの高電流MOSFETドライバが内蔵されていますので、電源全体のサイズと部品点数が最小に抑えられます。

LTC3731 は多用途の3フェーズ・コントローラで、PHASMDピンの電圧レベルに基づいて位相が30度または60度ずれたクロック出力を発生します。この機能を使うと、複数のLTC3731を並列接続して最大12フェーズ動作を実現することができます。出力電圧は外部抵抗によってプログラムされます。LTC3730はIMVP2およびIMVP3と互換性のある5ビットVID出力プログラミング機能を備えた専用3フェーズ・コントローラです。内部オペアンプを使って、異なったCPU動作モードの電圧オフセットをプログラムすることができます。LTC3732はIntel社のVRM9.x仕様と互換性のある5ビットVID出力プログラミング機能を備えた別の3フェーズ・コントローラです。3つのコントローラはすべて省スペースの36ピンSSOPパッケージで供給されますが、LTC3731ははるかに小さな、熱対策の強化された5mm×5mmのQFNパッケージでも供給されます。

Stage Shedding動作

高電流アプリケーションでは、低RDS(ON)のMOSFETが通常選択され、全負荷時の導通損失を最小に抑えます。ただし、軽負荷では、これらのMOSFETのゲート電荷や寄生容量が大きいため、多くの場合ゲートのドライブやスイッチングにともなう電力損失が生じます。また、軽負荷ではインダクタのコア損失がインダクタの全電力損失を支配します。スイッチング損失、ゲートのドライビング損失、およびインダクタのコア損失は負荷電流とともに減少しないので、軽負荷時の効率が低下します。

軽負荷時の効率低下の別の原因は並列段間の循環電流です。PolyPhase同期式降圧コンバータでは、各同期式降圧段のインダクタ電流が軽負荷で同期整流により反転することがあります。実際のPolyPhaseのデザインでは、センス抵抗の許容誤差とコントローラ内部の並列チャネル間のわずかな相違により、電流分担誤差が常に存在します。並列段間のどんな電流分担誤差も循環電流を生じさせるので、追加の電力損失が生じます。

軽負荷時のこのような電力損失を減らすため、Stage Shedding動作により、1つのチャネルを除いてすべてのチャネルをシャットダウンし、循環電流を完全になくします。さらに、このモードでは、使われないチャネルのゲート・ドライブ損失、MOSFETのスイッチング損失、およびインダクタのコア損失が除去されます。その結果、軽負荷時の効率がはるかに向上しますが、コントローラは基本的な安定化ループを維持しますので、Stage Shedding動作は出力安定化の精度には影響を与えません。

Pentium®4 CPU用の3フェーズ高効率VRM9.x電源

Pentium 4マイクロプロセッサ用の3フェーズVRM9.x電源を図1に示します。これにはLTC3732が使われており、9個の小型PowerPak SO-8入りMOSFETをドライブして65Aの出力電流を供給します。さらに大きな出力電流を供給するには、単にもっとRDS(ON)の小さなMOSFETと電流定格の高いインダクタを使います。R3とR4は損失のないアクティブ電圧ポジショニング(AVP)手法を実装しており、出力コンデンサのサイズを最小に抑えています。AVPの技術的詳細については、LTC1736のデータシートまたはデザインノート224を参照してください。異なる負荷条件で測定された効率を図2に示します。入力は12V、出力電圧は1.4V、スイッチング周波数は450kHzです。StageShedding動作がイネーブルされたときの効率と、従来のPolyPhase動作で測定された効率を図2に示します。グラフに示されているように、Stage Shedding動作では軽負荷時(10A以下)の効率が大幅に改善されています。たとえば、全負荷の1%(0.6A)では、Stage Shedding動作により効率が25%以上改善されています。

図1.3フェーズLTC3732 65A VRM9.x電源の回路図

図1.3フェーズLTC3732 65A VRM9.x電源の回路図

図2.効率の測定値(Stage Shedding動作と従来の動作)。負荷の範囲は0.6A~65A

図2.効率の測定値(Stage Shedding動作と従来の動作)。負荷の範囲は0.6A~65A

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Wei Chen