はじめに
単一の電源電圧を使用する先端的エレクトロニクス・システムは過去のものとなりました。最近のエレクトロニクス・システムには複数の安定化された電圧が必要です。比較的簡単なサブシステムでさえ少なくとも2つの電源を必要とします。たとえば、マイクロプロセッサとDSPは1.8Vのコア用電源とI/Oおよびメモリ用の3.3V電源の両方を必要とするでしょう。多くのボード・レベル・システムには3.3Vと5Vの両方が必要です。この複数電源の併用に加えて、エレクトロニクス製品のパッケージング密度はますます高くなっています。電圧レギュレータを敏感な回路のすぐ近くの狭いスペースに収める必要があります。つまり、電圧レギュレータは小型で、効率が高く、ノイズが低くなければなりません。リニア・レギュレータは過度に発熱し、アプリケーションによってはサイズが大きすぎます。また、スイッチング・レギュレータはEMIの問題を生じる可能性があります。
回路の説明
LT1940はデュアルの降圧スイッチング・レギュレータで、2つ以上の安定化された電圧を必要とするシステムに対してこれらの問題を解決します。入力範囲が3.6V~25Vと広いので、多様な電源を使うことができます。低プロフィールの16ピンTSSOPパッケージの裏面は金属パッドが露出しているので熱特性が改善されており、LT1940はヒートシンクを付けないで2つの1.4A出力を供給することができます。高周波数の2フェーズ・スイッチングにより、リップルとEMIが最少に抑えられ、各チャネルにはソフトスタートとパワーグッドの独立したインジケータが備わっています。これらの機能により、既存のシステムに簡単にインタフェースできる、小型で低ノイズの電源を設計することが可能になります。
図1の回路は7V~25Vの入力から3.3Vと5Vを発生させます。この回路では、2つのRUN/SSピンが一緒に結合され、1個のコンデンサでソフトスタートをプログラムします。さらに、2つのパワーグッド・ピンが一緒に結合され、単一のパワーグッド信号を出力します。この信号は両方の出力が安定化しているとき"H"になります。
図1.LT1940は小型のセラミック・コンデンサを使って2つの低ノイズ出力を供給する
図2.図1の回路は全負荷時にも高い効率を維持する
高周波数の電流モード・スイッチングによる部品サイズの最小化
LT1940はスイッチング周波数が1.1MHzと高く、電流モードの制御方式なので、低プロフィールのインダクタやセラミック・コンデンサなど、小型部品を使用することができます。広いループ帯域幅でも制御ループを簡単に補償することができるので、出力コンデンサの値は比較的小さくすることができ、それでも高速で安定した過渡特性が得られます。高いスイッチング周波数をセラミック・コンデンサの低いESRと組み合わせると、出力リップルが非常に小さくなります(<5mVP-P)
2フェーズのスイッチングによるEMIの緩和
降圧レギュレータは入力電源から電流パルスを流すので、EMIの問題を生じる可能性のある大きなAC電流が生じます。LT1940の2個のレギュレータは単一の発振器に同期して、位相を180度ずらしてスイッチングします。このため、入力リップル電流が大幅に減少するので、EMIを減らし、1個の入力コンデンサを使うことができます。同期しているので、2個のスイッチャがわずかに異なった周波数で動作するときに発生する可能性のある可聴ノイズも除去されます。
ソフトスタート・ピンとパワーグッド・ピンによる電源シーケンス制御の簡素化
複数電源システムでは多くの場合出力のシーケンス制御が必要です。たとえば、マイクロプロセッサのコア電源は、I/O回路に電源が接続される前に安定化状態になっている必要があります。LT1940の2つの出力のシーケンスを制御する簡単な方法を図3に示します。チャネル1は1.8Vのコア電源を供給します。そのパワーグッド・ピンはVC2を“L”に引き下げて、1.8V出力が安定化状態になるまでチャネル2をディスエーブルします。
図3.この1.8V/3.3V回路はチャネル1のパワーグッド出力を使って、2つの出力のシーケンスを制御する(チャネル1が先に起動)
図4.図3の回路の起動波形
まとめ
LT1940には高性能のデュアル出力電源を実装するために最適な機能が揃っています。スイッチング周波数が高く、2フェーズ動作で、さらにコンデンサはすべてセラミックなので、小型で低リップル低EMIの回路を実現することができ、どんなシステムにも簡単にインタフェースできます。