静止電流6.2µAのデュアルチャンネル42V、2A、モノリシック、同期整流式降圧Silent Switcher 2デバイス

LT8653Sは、入力電圧範囲3V~42Vのデュアルチャンネル2A同期整流式降圧レギュレータです。このデバイスは、Silent Switcher® 2技術により、高周波数かつ高効率という動作条件を満たすと同時に、優れたEMI性能を発揮し、自動車、産業、コンピューティング、通信などの環境における厳しい条件を満たします。

LT8653Sは、熱的に強化された3mm×4mmのパッケージに、2つの独立したレギュレータ・チャンネルを組み込んだデバイスです。各チャンネルは2Aの連続出力電流を同時に供給できる他、パルス型の負荷アプリケーションの場合は最大3Aの電流を供給することができます。LT8653SはBurst Mode®動作をサポートしており、両出力をレギュレーションした状態での静止電流は、わずか6.2μAです。これはバッテリ電源システムにとって重要な特性です。

LT8653Sは、強制連続モードや拡散スペクトラム周波数変調(SSFM)で動作させることもできます。SSFMモードは、広範囲のスペクトラムにエネルギーを拡散することによって、基本動作周波数や高調波付近でのピーク放射値を低く抑えます。

LT8653Sは過渡応答を最適化するために使用できる外部補償のオプションを備えていますが、内部補償を使用して設計を単純化することも可能です。また、2本の出力電圧選択ピンを使う固定出力オプションを選択して、5V、3.3V、および1.8Vの出力を生成することができます。この場合、外付けの帰還抵抗は不要です。

低EMI、高効率のデュアル2Aレギュレータ

LT8653Sを使った低EMI、高効率のデュアル出力降圧レギュレータ・アプリケーションを図1に示します。入力電圧範囲は5.8V~42V、出力は5V/2Aと3.3V/2Aで、スイッチング周波数は2MHzに設定されています。内部レギュレータの電源は、消費電力を低く抑えるためにBIASピンを通じて3.3V出力から供給されます。軽負荷時の効率を最適化するために、バーストモード動作がイネーブルされています(SYNC/MODEをGNDに接続)。

図1 高効率、低EMI、広入力範囲のデュアルチャンネル2A降圧レギュレータ

図1 高効率、低EMI、広入力範囲のデュアルチャンネル2A降圧レギュレータ

図2は図1に示すレギュレータの放射EMIで、車載向けの厳格なCISPR 25クラス5の放射EMI仕様に適合しています。LT8653Sのスイッチング周波数を2MHzとした場合、12V入力/5V出力におけるレギュレータのピーク効率は94.8%に達しますが、24V入力/5V出力では92.1%に止まります。

図2 図1に示す回路のCISPR 25放射エミッション
図2 図1に示す回路のCISPR 25放射エミッション

図2 図1に示す回路のCISPR 25放射エミッション

内部または外部ループ補償

LT8653Sは、部品数を最小限に抑えるために内部ループ補償機能を備えており、これはほとんどのシステムに適しています。負荷過渡応答性能を最適化することが求められる設計の場合は、外部補償を使用して、出力電圧変動と過渡応答時間を最小に抑えることができます。過渡応答を最適化するために設計されたデュアル出力レギュレータを図3に示します。

図3 高速負荷過渡応答の5V/2A出力と3.3V/2A出力

図3 高速負荷過渡応答の5V/2A出力と3.3V/2A出力

図4は、0Aから2Aへの負荷ステップに対する5V出力(VOUT1)の応答です。この場合のVOUTの変動は80mV未満です。このように高速の過渡応答をLT8653Sの高い初期精度と組み合わせれば、VOUTの許容差に関する厳しい条件を満たすことができます。

図4 図3に示す回路の5Vレールの0A~2A負荷過渡応答

図4 図3に示す回路の5Vレールの0A~2A負荷過渡応答

固定出力電圧オプション

LT8653Sの出力電圧選択ピン(D0とD1)の利点を生かせば更に部品数を減らすことが可能で、出力電圧を設定するために外付け抵抗を使用する必要がなくなります。選択したD0ピンとD1ピンの組合せに応じて内部帰還抵抗分圧器がイネーブルされ、FBピンをVOUTに直接接続すれば、5V、3.3V、または1.8V出力にレギュレーションが可能です。また、外付けの抵抗回路が不要になることで、ソリューション全体を大幅に小型化することができます。

内部帰還抵抗分圧器の合計抵抗は12MΩなので、無負荷時静止電流の値は、外付けの抵抗分圧器を使用した場合に実現できる値よりかなり小さくなります。内部帰還抵抗分圧器は外付けの分圧器より良好なレギュレーションを実現します。外付け分圧器の場合は抵抗の許容差が精度に影響するためです。部品数を最小限に抑えるように最適化したデュアル出力レギュレータを図5に示します。5V出力と3.3V出力は、D0ピンとD1ピンをフロート状態にすることによって設定できます。

図5 部品数の少ないデュアルチャンネル2A降圧レギュレータ・ソリューション

図5 部品数の少ないデュアルチャンネル2A降圧レギュレータ・ソリューション

まとめ

Silent Switcher 2技術は、高効率と低EMI放射を同時に実現しながら、高い周波数でLT8653Sを動作させることを可能にします。LT8653Sは広い入力電圧範囲と低静止電流が特長で、2つの2Aレギュレータ・チャンネルを4mm×3mmの小型パッケージに収容しているので、部品数を減らしソリューションを小型化することができます。サイズが小さく、必要な外付け部品数が少なくて済むにも関わらず、LT8653Sは広範なアプリケーションに対応できる柔軟性を備えています。

Tao Tao

Tao Tao

カリフォルニア州サンタ・クララのアナログ・デバイセズに勤務するパワー製品担当シニア・アプリケーション・エンジニア。現在、降圧スイッチング・レギュレータICのアプリケーション・サポートを担当。前職ではIntersil Corporationで集積化パワー・モジュールの開発を担当。高効率高密度のパワー・コンバータとレギュレータ、パワー・コンバータのモデリングと制御、EMI軽減技術、電子パッケージング技術、PCBボード設計、その他の技術的問題解決に取り組む。バージニア州ブラックスバーグのバージニア工科大学で電気工学の修士号を取得。