回路機能とその特長

この回路は、クワッドのパラメトリック計測ユニット(PMU)とそれを支援する部品の回路で、最低4個のDUT(テスト対象デバイス)チャンネルを提供します。通常、PMUチャンネルは、数多くのDUTチャンネル間で共用されます。AD5522は非常に集積度が高く、4個の完全PMUソリューションを提供しますが、ATEシグナル・チェーンを完成させるには、最低限外部リファレンスとADCを必要とします。一般的に、ここでのリファレンスとADCは複数個のPMUパッケージ間で共用することが出来ます。更なる柔軟性として、追加された外部スイッチは、AD5522がドライブできるDUTキャパシタンスの範囲を拡張することによってPMUの機能を拡張するために使うことが出来ます。
 


図1:パラメトリック計測ユニット(PMU)とそれを支援する部品の回路
(この回路図は一部簡略化されている部分があります)

回路説明

AD5522クワッドPMUは、DUTに対してフォーシング(DUTに必要な電源供給)と計測機能を提供しますが、デジタイジング機能はPMUの外部に必要とします。これは次のようにして実現されます:

  • 1つのADCは各おのおののPMUチャンネルに専用化させることができ、高速スループットと結果を提供します。
  • ADCは複数のチャンネルに渡って共用させることが出来ます。図1では、1つのAD7685 ADCが4個のPMUチャンネルにわたって共用されています。いくつかのアプリケーションでは、ADCはさらに多くのチャンネル、時には8または16PMUチャンネル、に渡って共用されることもあります。

ADCは、各MEASOUTxピンの内部ディセーブル機能を使うことによってチャンネル間で共用することが出来ます。これにはPMUのレジスタに、対応するスイッチのイネーブル/ディセーブルの書き込みコマンドを必要とします。もしこの方法を取る場合、1つのMEASOUTxチャンネル以上のチャンネルは、いかなる場合でも同時に選択することが出来ないことに注意してください。

代わりに、外部に4:1のマルチプレクサを使って、計測チャンネル選択を制御するために使うことが出来ます。この方法では、4個全てのMEASOUTx経路をイネーブルとすることができ、マルチプレクサで選択することが出来ます。同様にして、8:1または16:1のマルチプレクサを使うことで、1つのADCをより多くの計測経路で共用することが可能です。このマルチプレクサの選択は、使われるADCとその入力電圧範囲に依存します。バイポーラ入力のADCでは、ADG1404/ADG1204ファミリーのうちのどれか1つが適当で、単電源使用時には ADG706ADG708がより相応しいでしょう。MEASOUTx経路の出力インピーダンスは標準で60Ω、それにスイッチのインピーダンスが加わります。したがってADA4898-1のようなADCのバッファを、ADCをドライブするために考慮する必要があります。(ここではバッファは示されていません)

このアプリケーションでは16ビット、250kSPSのADC AD7685が使われていますが、それはMEASOUT経路の0V~4.5Vの出力範囲を扱うことが出来るためです。さらに、同じピン・アウトを持ったより高速の他のADC(例えば16ビット/500kSPSの AD7686)を使えば、より魅力的なアップグレード経路を実現できます。

もし20Vの出力範囲が必要な場合、AD5522では5Vのリファレンスを必要とします。ADR435、5VのXFETリファレンス、が使われていますが、これは低温度係数(10ppm/℃、Aグレード;3ppm/℃、Bグレード)、低ノイズ(8μVp-p@0.1Hz~10Hz)、および複数PMUチャンネルのドライブ能力(30mAソース、20mAシンク)が備わっているためです。

アプリケーションによっては、PMUがより広い範囲のDUTキャパシタンスをドライブする必要がある場合があります。これはPMUが電源ピンに接続されていたり、PMUがデバイスの電源として使われたりする場合で、DUTのデカップリング/バイパス・コンデンサを使う場合などです。このような場合、固定コンデンサを接続するより、むしろCCOMPピンに外部スイッチを接続して、CCOMPに追加のコンデンサをスイッチ・イン/スイッチ・アウトすることが可能で、こうすることによって各種容量性負荷でのセトリング時間と安定性の最適化を図ることが出来ます。ここでの回路では、ADG412SPSTがスイッチとして選ばれています、このスイッチは50Ω以下のオン抵抗を備えています。マルチプレクサの代わりにクワッドのスイッチを選んだ訳は、ほとんどのマルチプレクサは同時に複数チャンネルの内のわずか1つしかオンに出来ないためです。クワッド・スイッチを使えば、各ドレインはお互いに接続可能で、ソース側におのおの補正コンデンサを接続することができるため、CCOMPとして24 − 1通りの組み合わせが提供できます。

同様にして、この回路では、広い範囲のフィードフォワード・コンデンサをCFFxピンに接続して適応させるためにADG1209差動マルチプレクサが使われています、これによってAD5522は広範なDUTコンデンサをドライブすることが可能となっています。使用されるマルチプレクサの直列抵抗は次の条件を満たす必要があります:1/(2π × RON × CDUT) > 100 kHz。この例では、ADG1209は2つのAD5522チャンネルをまかなっています。

スイッチとコンデンサは、AD5522のFOHピンでの電圧範囲として同じ電圧で動作するように見えます。したがってスイッチとコンデンサの電圧定格はこの範囲以内でなくてはなりません。CFFコンデンサ、これはセトリング時間の余分な変化に直接影響を及ぼしますので、10%以内の誤差である必要があます、特に低電流での電流モード計測時には重要です。CCOMPコンデンサの選択では5%以内の誤差である必要があります。表1に、種々の容量負荷としての推奨する補正コンデンサCCOMPとCFFの公称値が示されています。

推奨補償コンデンサ


 CLOAD 
 CCOMP
 CFF
 ≤1 nF
 100 pF
 220 pF
 ≤10 nF
 100 pF
 1 nF
 ≤100 nF
 CLOAD/100
 CLOAD/10

この回路は、大きな面積のグランドプレーンを持ったマルチレーヤのPCB上に構築する必要があります。正しいレイアウト、グランディング、デカップリング技術が適正な性能を達成するためには必要です。(チュートリアルMT-031データコンバータのグランディングとAGND/DGNDの不可解さの解決(英語)、チュートリアルMT-101デカップリング技術(英語)を参照してください。)図1は簡易回路で、全ての必要なデカップリングは示されていないことに注意してください。

電源とグラウンド・リターンのレイアウトを注意深く行うことが、定格性能の保証に役立ちます。AD5522を実装するプリント回路ボードは、アナログ部分とデジタル部分を分離して、ボードの一定領域にまとめて配置するように、デザインする必要があります。複数のデバイスがAGNDとDGNDの接続を必要とするシステム内でAD5522を使用する場合は、この接続は1ヵ所で行う必要があります。デバイスのできるだけ近くでスター・グランド結線を構成する必要があります。


図2:ADG412スイッチを使って各種CCOMPで220pF負荷に11.25Vの電圧ステップを与えた時の出力電圧ステップ応答 



図3:FIMV誤差を計測するためにAD7685を使った積分非直線性性能(FI範囲:±2mA、計測ゲイン=0.2)



図4:FIMI誤差を計測するためにAD7685を使った積分非直線性性能(FV範囲:±10 V、5.6kΩ負荷に2mA範囲) 



図5:FIMV誤差を計測するためにAD7685を使った積分非直線性性能(FV範囲:±10 V、計測ゲイン=0.2) 



図6:FIMI誤差を計測するためにAD7685を使った積分非直線性性能(FI範囲:±2mA、計測ゲイン=0.2) 


複数のピン(AVSSとAVDD)を持つ電源の場合には、これらのピンを一緒に接続し、各電源を1箇所でのみデカップリングすることが推奨されます。

AD5522に対しては、10μFと0.1μFの並列接続により十分な電源デカップリングをパッケージのできるだけ近くの電源に、理想的にはデバイスに直接に、接続する必要があります。10μFコンデンサはタンタルのビーズ型を使います。0.1μFコンデンサは、高周波でグラウンドに対する低インピーダンス・パスを提供するセラミック型のような実効直列抵抗(ESR)が小さく、かつ実効直列インダクタンス(ESL)が小さいものを使って、内部ロジックのスイッチングに起因する過渡電流を処理する必要があります。

ノイズがチップに混入するので、デバイスの真下をデジタル・ラインが通らないようにしてください。しかし、ノイズ混入を防止するため、アナログ・グラウンドプレーンをAD5522の下に配置することは可能です(これは、パドルが上に付いたパッケージの場合に当てはまります)。AD5522の電源ラインには、できるだけ太いパターンを使って低インピーダンス・パスを実現して、電源ライン上でのグリッチの効果を削減する必要があります。高速スイッチング・デジタル信号はデジタル・グラウンドでシールドして、ボード上の他の部品へノイズを放出しないようにし、リファレンス入力の近くを通らないようにします。すべてのVREFライン上のノイズを小さくすることは重要です。

デジタル信号とアナログ信号の交差は回避する必要があります。ボードの反対側のパターンは、互いに右角度となるように配置してボードを通過するフィードスルー効果を減少させます。すべての薄型パッケージの場合と同様に、組み立て工程でパッケージを曲げたり、このパッケージの表面にポイント負荷を与えないように注意してください。

また、AD5522の露出パドルは負電源AVSSに接続されていることに注意してください。

バリエーション回路

PMU回路は、AD5522のフル20V出力範囲を必ずしも使う必要があるわけではありません。ほとんどのアプリケーションでは、この電圧のわずか一部のみを必要とするだけです。例えば、2.5V電圧リファレンス ADR421を使うと、ユーザは±5.6Vの公称出力電圧範囲を実現でき、この電圧は、オンチップのオフセットDACを使うことによってDUTの要求に適応するスケールに助長させることが出来ます。(より詳細については、AD5522のデータシートを参照してください)。また、より低い電源レールを使うことが出来る、追加の利点もあります。これは、AD5522で、特にチャンネル当たりフルの80mAの電流範囲で動作するような場合、電力消費を削減する手助けになります。

ADCチャンネル当たりにPMU計測チャンネルの部分を割り当てるような変形は、1つのADCをさらに多くのPMUチャンネル間で共用できることを意味します。(時によっては8:1または16:1)その代案として、オンチップのMEAOUTディセーブル機能、あるいはアナログ・マルチプレクサを、この機能のために使うことも出来ます。マルチプレクサは計測経路に更なる直列抵抗を加えることになりますので、ADC入力の直前にバッファを必要とする場合があります。

その他のバリエーションとしてADCの使用があります、バイポーラ信号範囲を扱うADCか、あるいはより高速なサンプリング・レートを持ったADCを使うかなど。

製品サンプル

製品

概要

サンプル提供可能な
製品型番

ADR435 電圧リファレンス、超低ノイズ、XFET®、電流シンク / ソース能力有

ADR435ARMZ

ADR435ARZ

ADR435BRMZ

ADR435TRZ-EP

ADG412 SPSTスイッチ、クワッド、LC2MOS、高精度

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AD5522 パラメータ測定ユニット、クワッド、レベル設定用16ビットDAC内蔵

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ADG1209 マルチプレクサ、4チャンネル、低容量、±15V/12V、iCMOS®

ADG1209YCPZ-REEL7

ADG1209YRUZ

ADG1209YRZ

AD7685 PulSAR® A/Dコンバータ、16ビット、250kSPS、MSOP / QFNパッケージ

AD7685ACPZRL7

AD7685ARMZ

AD7685BCPZRL7

AD7685BRMZ

AD7685CCPZRL7

AD7685CRMZ

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