概要
設計リソース
設計サポートファイル
- Schematic
- Bill of Materials
- Gerber Files
- PADS Files
- Assembly Drawing
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- EVAL-CN0292-SDZ ($135.36) Completely Isolated, Robust, 4-Channel, Multiplexed Data Acquisition System for Industrial Level Signals
- EVAL-SDP-CB1Z ($116.52) Eval Control Board
デバイス・ドライバ
コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。
AD7175 Microcontroller Renesas Driver
AD7176-2 FMC-SDP Interposer & Evaluation Board / Xilinx KC705 Reference Design
マーケット & テクノロジー
使用されている製品
参考資料
-
CN0292: 工業用レベル信号用の堅牢な完全絶縁型4チャンネル多重化データ・アクイジション・システム10/9/2015PDF500 K
回路機能とその特長
図1の回路は、16ビットのノイズフリー・コード分解能と最大42kSPSの自動チャンネル・スイッチング・レートを実現する、工業用の堅牢な完全絶縁型4チャンネル・データ・アクイジション・システムです。多重化シグナル・チェーンに独自の高速セトリング・デバイスを選択しているため、42kSPSのスイッチングでのチャンネル間クロストークは15ppm FS未満(−90dB未満)です。
この回路は±5V、±10V、0V~10V、0mA~20mAの標準的な工業用信号レベルを収集してデジタル化します。入力バッファは過電圧保護も行うので、従来型のショットキー・ダイオード保護回路に伴う漏れ誤差が除去されます。
この回路のアプリケーションとしては、プロセス制御(PLC/DCSモジュール)、バッテリ・テスト、マルチチャンネル科学計測、色層分析などがあります。

(簡略回路図:全接続の一部およびデカップリングは省略されています)
回路説明
信号経路
入力信号の4つのチャンネルは、±15V電源レールを最大32V超える入力での位相反転やラッチアップに対する過電圧保護機能を備えた、クワッド・レールtoレール入出力オペアンプ ADA4096-4 によってバッファされているため、過電圧保護回路を追加する必要がありません。
入力は±10Vの標準的な低周波数の工業用信号に合わせて設計されています。入力バッファは信号源に高インピーダンスを提供し、入力をマルチプレクサのスイッチング・トランジェントから絶縁します。
バッファの入力に接続されたRCネットワーク(10Ω/10nF)は1.6MHzの帯域幅を持ち、高周波ノイズを除去します。
ADA4096-4の出力に接続されたRCネットワーク(47Ω/47nF)は、バッファをマルチプレクサのスイッチング・トランジェントから絶縁します。等価回路を図2に示します。次のチャンネルに切り替える前に、ドレイン・コンデンサCDを入力電圧で充電する必要があります。チャンネル間の電圧は20Vにもなる可能性があり、マルチプレクサが次のチャンネルに切り替わるときに過渡電流を生じます。

低ドレイン容量(<4pF)を特長とするマルチプレクサ ADG1204 は、キックバック電荷を最小限に抑えます。
スイッチのオン抵抗による負荷誤差をなくすため、マルチプレクサの出力をオペアンプ ADA4898-1 でバッファします。ADA4898-1は、ユニティ・ゲインで安定、0.1%までのセトリングが85ns未満、入力電圧ノイズがわずか0.9nV/√Hzのデバイスです。バッファへのワーストケースの入力信号は、2つの隣接するチャンネルのそれぞれの入力が正のフルスケール電圧と負のフルスケール電圧のときの、±10V、21kHzの方形波です。
ADA4898-1の入力に接続されたRCネットワーク(1.8kΩ/68pF)は1.3MHzの帯域幅を持ち、広帯域ノイズ・フィルタとして機能します。このフィルタの時定数は122nsで、16ビットのセトリング・タイムは約1.34µs(時定数の約11倍)になります。
バッファADA4898-1の出力は、±10Vのバイポーラ・シングルエンド信号を2.5Vの同相電圧を中心とする±4Vの差動信号に変換する高精度差動減衰アンプAD8475を駆動します。トリミングで値を一致させた内蔵高精度抵抗によりゲインが0.4倍に設定されたAD8475は、5V単電源動作で最大±12.5Vの入力を受け入れることができます。同相電圧はAD7176-2 ADCのREFOUTピン(2.5V)から供給します。
AD7176-2の差動入力範囲は5Vリファレンス ADR4550 によって±5Vに設定します。
AD7176-2はADCとマルチプレクサ・コントローラの両方の動作をします。MUX_IOビットをイネーブルすることによってAD7176-2のGPIOピンがADCチャンネルのシーケンス制御と変換に同期して切り替わります。このため、チャンネル切替えがADCと同期することで、外部同期が不要になります。GPIOピンにより従来マルチプレクサの制御に必要だったデジタル・インタフェースの2本の制御ラインが不要になります。
0µs~1msに設定可能な変換遅延はAD7176-2で設定できます。変換遅延とは、各チャンネルの切替わり(GPIOビットで制御)と変換開始の間の遅延時間のことです。この遅延を調整することにより、マルチプレクサと処理回路のセトリング・タイムを追加することができます。
信号経路の全ての部品は、42kSPSのチャンネル・スイッチング・レートに対応する最小合計セトリング・タイムが得られるように選択されています。この結果、フルスケール信号でのチャンネル間の低周波クロストークは−90dB未満となります。
さらなる最適化が必要な場合、チャンネル切替えと変換開始の間に設定可能な変換遅延を挿入して、ADCを駆動する回路のセトリング・タイムを最大にすることができます。
デジタル絶縁とisoPower
ADuM3471は、パルス幅変調(PWM)コントローラと低インピーダンスのトランス・ドライバ(X1とX2)を内蔵する4チャンネル・デジタル・アイソレータです。絶縁型DC/DCコンバータに必要な追加部品は、トランス(CoilcraftのKA4976-AL、巻数比:1:5、1次側インダクタンス:64µH)とシンプルな全波ショットキー・ダイオード整流器(4個のSD103AW-7-Fダイオード)だけです。電源回路は、5Vまたは3.3V入力から給電される場合に最大2Wの安定化された絶縁型電源を実現するので、別の絶縁型DC/DCコンバータを追加する必要がありません。
iCoupler®チップスケール・トランス技術を使ってロジック信号を絶縁し、絶縁型2次側制御機能を備えた内蔵トランス・ドライバにより、絶縁型DC/DCコンバータの高い効率を提供します。内部発振周波数は200kHz~1MHzの範囲で調整可能であり、OCピンに接続した抵抗の値によって決まります。抵抗が100kΩの場合、スイッチング周波数は500kHzになります。
ADuM3471のレギュレーションは正電源で行います。レギュレーションの帰還は、出力電圧が16.76Vのときに帰還電圧が1.25Vになるように選択した分圧器ネットワークで行いま す。帰還電圧は、ADuM3471の1.25Vの内部帰還設定ポイント電圧と比較します。レギュレーションは、外部トランスを駆動するPWM信号のデューティ・サイクルを変化させることによって行います。
LDOレギュレータADP7102は16.76Vの出力電圧を15Vに安定化します。トランスからの負の安定化されていない整流電圧は約−21Vです。負のレギュレータ ADP7182 を使って安定化された−15Vを供給します。そして、安定化された±15Vを使って高電圧デバイス(ADA4096-4、ADG1204、ADA4898-1)に給電します。
性能測定
ノイズフリー・コード分解能
チャンネル入力をGNDに短絡して、この回路で測定した17ビットのノイズフリー・コード分解能を図3に示します。

チャンネル間を多重化したときのセトリング
システムのチャンネル1とチャンネル3の入力として9.6V電源(バッテリ・パック)を接続しました。−9.6V電源をチャンネル2とチャンネル4に接続しました。
GPIOビットを00に設定することによりマルチプレクサをチャンネル1に手動で設定し、図4に示す1000サンプルのヒストグラムが得られました。ノイズフリー・コード分解能は16ビットよりも良好でした。

次いで、マルチプレクサをイネーブル(4µsの遅延で42kSPS)し、図5に示すチャンネル1に対する1000サンプルのヒストグラムが得られました。ノイズフリー・コード分解能は16ビットよりも良好でした。

+9.6Vと−9.6Vを切り替えるチャンネル1の変換のヒストグラム
それぞれの設定の結果、図6に示すように、チャンネル間を多重化したときに平均値にわずかなオフセット・シフトが生じましたが、16ビットのノイズフリー・コード分解能よりも良好でした。このシフトは42kSPSで約300µV(15ppm FS、つまり16ビットで1LSB)であり、変換遅延(AD7176-2のADCモード・レジスタで設定)を追加することによって低減できるため、変換前のセトリング・タイムを増やすことができます。

積分非直線性
積分非直線性(INL)は、Fluke 5700多機能キャリブレータとAgilent 3458マルチメーターを使って、−11V~+11Vの範囲を1Vステップで測定しました。 この結果を図7に示します。ここで、エンドポイントの直線性誤差はゼロに調整されています。 AD7176-2の標準的なINL仕様は±3ppm FSです。ボード上のその他のデバイスも非直線性を生じますが、これらの全てが同じ電圧にピークを持つわけではないため、図7に示すようなU字型の曲線になります。

キャリブレーション・レジスタがデフォルト値の場合、−11V~+11Vの範囲のオフセットとゲイン誤差の25℃での計算値は、それぞれ318µVと0.04%FSでした。
各デバイスのオフセットおよびゲインの温度ドリフト成分を表1に示します。
Part No. | Offset Drift | Gain Drift |
ADA4096-4 | 0.4 µV/°C | Not applicable |
ADA4898-1 | 0.4 µV/°C | Not applicable |
AD8475 | 2.5 µV/°C | 1 ppm/°C |
AD7176-2 | 110 nV/°C | 0.5 ppm/°C |
ADR4550 | Not applicable | 2 ppm/°C (maximum) |
RSS Value | 2.56 µV/°C | 2.29 ppm/°C |
Maximum Value | 3.41 µV/°C | 3.5 ppm/°C |
CN-0292で使われる回路図、レイアウト、アセンブリ、部品表を含む設計サポート・パッケージは、CN-0292設計サポート・パッケージに記載されています。
バリエーション回路
4mA~20mAの入力設定
電圧入力を499Ω抵抗でグラウンドに接続することにより、この回路は0mA~20mAの4チャンネル・シングルエンド入力として動作します。フルスケール信号はADC範囲のほぼ半分になるので、システムのダイナミック・レンジは1ビットだけ小さくなります。コネクタJ2に適切な外部接続を行うことにより、入力を電流入力用に再設定することができます。
たとえば、チャンネル1の電圧モードでは、電圧をJ2の端子1に加え、グラウンドを端子3に接続します。電流モードでは、電流を端子1と端子2に加え、グラウンドを端子3に接続します。
Input | Voltage Mode Input Terminals | Current Mode Input Terminals |
Channel 1 | 1, 3 (GND) | 1 and 2, 3 (GND) |
Channel 2 | 4, 6 (GND) | 4 and 5, 6 (GND) |
Channel 3 | 7, 9 (GND) | 7 and 8, 9 (GND) |
Channel 4 | 10, 12 (GND) | 10 and 11, 12 (GND) |
±5Vの入力設定
図1の回路では、AD8475の0.4倍のゲイン設定を選択しました。0.8倍のゲイン・オプションを選択すると、フルスケール・レンジが±10Vから±5Vに縮小され、感度が2倍になります。また、0.8倍のゲイン・オプションにより、4mA~20mAの入力と250Ωの終端抵抗を使用した場合にADCの入力範囲の全てを使用することができます。
より広い帯域幅の実現
入力バッファを ADA4000-4 に変更し、2段目の入力フィルタ・コンデンサの容量を小さくすることにより、入力帯域幅を拡張することができます。AC信号測定時の歪み性能も大幅に向上します。
8チャンネルへの設計の拡張
バッファ、マルチプレクサ、アッテネータからなるもう1つのチャンネルを AD7176-2 ADCのAN2/AN3入力に接続して、8チャンネル動作を実現することができます。ただし、4チャンネル以上を同時に自動シーケンス制御することはできないので、ADCを単独変換モードで動作させ、4チャンネルの変換ごとにチャンネル配置を再設定することを推奨します。
AD7173-8は4ビットのGPIOを備え、外付けマルチプレクサの16チャンネル間のシーケンス制御が可能です。AD7173-8は低速(6.21kSPSでのチャンネル切替え)ですが、AD7176-2よりも低消費電力です。
回路の評価とテスト
必要な装置
以下の装置が必要です。
- EVAL-CN0292-SDZ評価ボード
- EVAL-SDP-CB1Zシステム・デモンストレーション・プラットフォーム
- CN-0292評価用ソフトウェア
- 5V/1AのDC電源、またはACアダプタ
- 高精度DC電源(Fluke 5700)
- デジタル・マルチメーター(Agilent 3458)
- 低ノイズの高精度電圧源(バッテリ・パックを推奨)
- USBポート付きWindows® XP(SP2)、Windows Vista、またはWindows 7(32ビットまたは64ビット)搭載PC
ソフトウェアのインストール
ソフトウェア・ユーザー・ガイドについてはCN-0292ユーザー・ガイドを参照してください。
CN-0292評価用キットには、ftp://ftp.analog.com/pub/cftl/CN0292/からダウンロードできる自己インストール型ソフトウェアが必要です。このソフトウェアは、Windows XP(SP2)、Windows Vista、Windows 7(32ビットまたは64ビット)で使用できます。セットアップ・ファイルが自動的に起動しない場合には、ファイルからsetup.exeを実行してください。
PCに接続したときに評価システムが正しく認識されるように、評価用ソフトウェアをインストールしてから評価用ボードとSDPボードをPCのUSBポートに接続してください。
評価用ソフトウェアのインストールが完了したら、EVAL-SDP-CB1ZをコネクタAとコネクタBのどちらかを介してEVAL-CN0292-SDZに接続し、次にEVAL-SDP-CB1Zを付属のケーブルを使ってPCのUSBポートに接続します。
評価用システムが検出されたら、順次表示されるダイアログボックスに従って進み、インストールを完了させます。
セットアップとテスト
図8にテスト・セットアップの機能ブロック図を示します。

回路をテストするためには以下のハードウェア設定が必要です。
- EVAL-CN0292-SDZボードの全てのリンクをデフォルト位置Aに設定します(これにより、ボードの±15Vと5Vの電源にisoPower®デバイスとLDOから供給されるように設定されます)。
- J14に接続された5V/1AのDC電源を使ってボードに給電します(図10参照)。
- ±10Vのシングルエンド信号をコネクタJ2のV1~V4に接続します。
性能を最適化するには以下のADCソフトウェア設定を推奨します。
- GPIO Muxをイネーブルする。
- Delay Conversionを4µsに設定する。
- Data + Statusをイネーブルする。
- 測定対象のチャンネルをイネーブルする。
- 外部リファレンスを選択する。
- その他のレジスタをリセット値のままにする。
- チャンネルを手動で選択するには、GPIO Muxをディスエーブルし、GPIO 0 OutputとGPIO 1 Outputをイネーブルし、GPIO 0 DataとGPIO 1 Dataのチャンネル番号を設定します。
これでテスト・セットアップが設定されます(図9参照)。サンプル数を1000に設定してから、Start Samplingをクリックします。
サンプルが収集されると、メインの波形グラフに結果が表示されます。電圧の測定値はADC入力を基準にしているため、J2/J15での10V入力はソフトウェアでは約4Vの測定値になることに注意してください。


ディスカッション
製品サンプル
評価用ボード
表示されている価格は、1個あたりの価格です。
analog.comサイトから購入できるボードは、最大で2枚までとなります。3枚以上の購入をご希望の場合は、正規販売代理店からご購入ください。
価格は1個当たりの米ドルで、米国内における販売価格(FOB)で表示されておりますので、予算のためにのみご使用いただけます。 また、その価格は変更されることがあります。米国以外のお客様への価格は、輸送費、各国の税金、手数料、為替レートにより決定されます。価格・納期等の詳細情報については、弊社正規販売代理店または担当営業にお問い合わせください。なお、 評価用ボードおよび評価用キットの表示価格は1個構成としての価格です。