スタンバイ時間を維持しながら携帯電話のインジケータLEDを表示する方法

携帯電話メーカーは、スタンバイ状態のときに、着信メッセージやカレンダーに予定されているその日の約束、その他の通知を行うステータスLEDを提供する必要に迫られています。最近発売された携帯電話機の中には、通知LEDがないために不評を買ったものさえあります。それと同時に、ユーザはもっと長いスタンバイ時間を求めています。一見すると単純そうな問題ですが、メーカーにとっては驚くほど難しいジレンマです。全体的に低いスタンバイ消費電力を維持しながら、通知LEDに電力を供給するにはどうしたらよいのでしょうか。

インジケータLEDには、一般にパワーマネジメントIC(PMIC)またはその他の小さなプロセッサから電力を供給します。電話が動作状態のときはこれで十分ですが、プロセッサはスリープ・モード中も各LEDを自動的にイネーブル/ディスエーブルにするためにタイミングを計る必要があります。この機能のためにPMIC全体に電力を供給すると、スタンバイ時の消費電流が数ミリアンペアも増える可能性があります。表1のデータと計算の例から、平均消費電力がオフタイムの無信号時消費電流ドレインによって大きく左右されることがわかります。

表1. 電流ドレインと消費電力(7.5sオフ/300ms オンの点滅パターン、10mAのLED電流、3.7Vの入力)

パワーマネジメント Iq,
オフ時
Iq,
オン時
Iq, 平均 消費電力
標準 PMIC 5 mA 15 mA 5.39 mA 19.9 mW
ADP8866
300 µA 11 mA 710 µA 2.6 mW
ロスレス 0 µA
10 mA
385 µA 1.4 mW

この問題を解決するために独自に考案されたADP8866 LEDドライバは、簡単な設定で最大4個のインジケータLEDについて自動点灯プログラム(各LEDのオフタイム・レンジは100msから25.2秒)を実行できます。自動点灯プログラムを実行中でも、LEDがオフのとき、IC全体の消費電流は300μA未満に低減します。また、ADP8866がすべてのタイミングを制御するため、複雑なパターンや長期のパターンの場合もLEDの完全な同期が維持されます。次の2つの例で考えてみましょう。

例1:混色インジケータLED

携帯電話機は、バックライト・ディスプレイ用に7個のLEDと、表示用に2個のLEDが必要です。コストと機械的な条件のために、携帯電話機メーカーは、赤/緑(RG)LEDを使用して3つの状態(着信メッセージ、バッテリ低下、カレンダーのアポイント)のスタンバイ通知を効率的に行います。LEDには、3つの状態のそれぞれに赤、緑、黄(赤+緑)という特定の色が割り当てられます。

図1に示すように、ADP8866はこの一般的な要求に最適なソリューションを提供します。9つのLEDチャンネルのうち7つをディスプレイの照明に使用します。RG LEDへの赤と緑の信号は残りの2チャンネルによって制御され、図2に示す点滅パターンを生成します。

Figure 1
図1. ADP8866はバックライト照明とインジケータLEDを
制御するためにセットアップされています。

ADP8866の評価用ボードには、図3に示すグラフィカルなプログラミング・ユーティリティが含まれています。そのI2Cレジスタは、インジケータを点滅する設定になっています。

図3に示すレジスタ設定によって、10mAの赤(Sink 8)パルスが250ms 点灯し、それが消灯してから500ms 後に2番目の250msの赤パルスが点灯します。2番目の赤パルスは、緑パルスとペアになって黄色に点滅するとき、半分の消費電流(5mA)で同一の輝度になります。緑のLED(Sink 9)の設定も同じですが、最初のパルスは遅延します。2番目の緑のパルスが消灯すると、システムは12秒間待機してから反復します。このシーケンスがイネーブルになると、図2に示すように、3色すべてが連続的に繰り返し点滅します。赤または緑のインジケータが必要な場合は、最初のパルスか3番目のパルスだけがイネーブルになります。赤色と黄色の通知だけを生成する場合は、赤のLEDは最初のパルスと2番目のパルス、緑のLEDは2番目のパルスだけイネーブルになります。

Figure 2
図2. 赤と緑の点滅パルス・シーケンスとその結果得られる色
Figure 3
図3. インジケータLEDを設定するためのADP8866のグラフィカル・ユーザ・インターフェース

赤と緑の電流は重ね合わせるときに減少するため、3色すべてのインジケータで同じ輝度が得られます。あるいは、赤と緑の電流を変化させて、RGスペクトルに他の色を生成することも可能です。パルスの幅、オフ時間、大きさは完全にカスタマイズ可能であるため、さまざまな効果を実現することができます。

例2:視覚効果が高い
ダイナミック・インジケータ・ディスプレイ

携帯型電子デバイスは、背景にさまざまなものがあってもすぐに識別できるように視覚効果の高いダイナミックな光で通知する必要があります。ADP8866は、その点においても理想的なソリューションとなります。LEDチャンネルのうち最大4つ(Sink 6 ~Sink 9)を複雑な点灯シーケンスで駆動することができます。残りの5つのLEDチャンネルは、バックライトやキーパッドの照明に使うことができます。この例では、Sink 6 ~Sink 9の設定によって、4個のLEDが右から左に点灯した後、また左から右に点灯し、この動作を10秒間おいて繰り返します。このパターンを図4に示します。

Figure 4
図4. 4チャンネルのダイナミック・インジケータ・ディスプレイ

最初のパルスとHB(ハートビート)パルスに、フェードイン時間、フェードアウト時間、フェード・プロファイル(平方または立方)が設定されています。DELAYパラメータは、0 ~ 1.270秒の範囲で10ms 単位の調節が可能です。ここでは、DELAYはフェードイン時間の半分に設定されていますが、別の遅延設定を使用すれば別の効果が得られます。最初のパルスとHBパルスの間のオフ時間は、最初のパルスのOFF Time制御によって設定されます。対称にするために、これらは遅延の倍数に設定されています。HB OFF Timeが遅延を設定してから、シーケンスが繰り返されます。この例では、待ち時間は10秒であるため、Sink 6のHB OFF Timeは10秒です。ほかの3つのHB OFF Timeは、10秒+(DELAY時間の倍数)になります。このシーケンスのレジスタ状態を図5に示します。

Figure 5
図5. ダイナミック・インジケータを設定するためのADP8866のグラフィカル・ユーザ・インターフェース

ファンライトの点滅、電話の着信音による通知、その他のパターンも、これと同じ設定方法で生成することができます。自動フェードイン/フェードアウト機能によって視覚的効果は強くなりますが、フェード時間の増加によって平均消費電力は若干増大します。どんな条件でも、すべてのLEDがオフになると、ADP8866は自動的にスリープ状態に戻り、次のLEDシーケンスを開始する時間が来るとウェイクアップします。

ADP8866は、バックライトLEDのチャージポンプ・ドライバと自動点滅機能を組み合わせることによって、最大25mAの電流で9個のLEDドライバをそれぞれ設定することができます。電流レベル、フェード時間、点滅速度は一度設定すれば、後は自動的に実行されます。バックライトLEDに、別のフェードイン/フェードアウト時間を設定することもできます。2コンデンサ型のチャージ・ポンプは、2.5 ~ 5.5Vの電源電圧で最大240mAを供給します。堅牢な設計によって、ソフト・スタート機能のほか、短絡、過電圧、過昇温度に対する保護機能も内蔵されています。サンプルは、4mm×4mmの20ピンLFCSP(QFN)パッケージで提供されています。評価用ボード、グラフィカル・プログラム、ドキュメントも利用できます。


著者

Jon Kraft

Jon Kraft

Jon Kraftは、2007年にアナログ・デバイセズに入社し、コロラド州ロングモントのパワーマネジメント・デザイン・センターにアプリケーション・エンジニアとして勤務しています。ローズハルマン工科大学で電気工学士、アリゾナ州立大学で電気工学修士の資格を得、3つの特許を取得しています。