未発表論文より

絶対値回路でより高い価値を生み出す
差電圧アンプを用いて低消費電力かつ高性能な絶対値回路を実現する

   Moshe GerstenhaberReem Malik共著 (コメントは英語でお願いいたします



これまで高精度な半波/全波整流回路は、高速オペアンプ、高速ダイオード、高精度抵抗などの厳選された部品を使用して実現されてきました。しかし部品点数が多くなるため、この 実現方法では高価となり、また部品間の温度ドリフト変動やクロスオーバー歪みに悩まされてきました。

本稿では、デュアル・チャンネルの差電圧アンプを用いることにより、外付け部品なしで高精度な絶対値出力回路を実現する方式を示します。この革新的な方式により、従来の方式に比べて 、高精度、低コストかつ低消費電力を実現することができます。

図1に示すように、差電圧アンプ 1は、減算器として設定された4本の抵抗と1個のオペアンプから構成されています。この低価格なモノリシックの差電圧アンプにはレーザ・ ウェハ・トリミングされた抵抗が内蔵されています。そのきわめて高いゲイン精度、低いオフセット/オフセット・ドリフト、高い同相ノイズ除去性能により、ディスクリート設計に比べても、高いトータ ル性能が実現できます。

差電圧アンプ

図1. 差電圧アンプ

従来の絶対値回路

図2に一般的に用いられている全波整流回路の回路図を示します。高性能を実現するため、この回路では高速オペアンプ2個と高精度抵抗が5本使用されています。「入力信号が正」 のとき、A1出力が負になるため、D1は逆バイアスされます。D2が順方向にバイアスされ、A1からR2を経由した帰還ループが閉じられることで反転アンプが形成されます。A2では、ゲイン-1 倍で入力信号は増幅され、ゲイン-2倍で増幅されたA1出力と足し算されるため、正味+1倍のゲインになります。「入力信号が負」のとき、D1は順バイアスされ、A1の周りの帰還ループが 閉じられます。D2は逆バイアスされるため導通しません。入力信号はA2で反転されるため、正出力が得られます。したがってA2出力は正電圧となり、正であれ負であれ、入力の絶対値を出 力として得られます。

教科書通りの全波整流回
路

図2. 教科書通りの全波整流回路2 , 3

この設計には、コスト、クロスオーバー歪み、ゲイン誤差、ノイズなど、性能やシステム構成の面でいくつか欠点があります。この設計には両極性電源と多数の高性能部品が必要であり、コスト と複雑度が大きくなってしまいます。入力信号が0V+ΔVから0V-ΔVに遷移するとき、A1出力は-VBEから+VBEまで急激にスイングする必要があるた め、応答時間が長くなることがあります。高速オペアンプと高速ダイオードを用いることで、この問題は軽減できますが、一方で消費電力が増大するという犠牲を払うことになってしまいます。また 絶対値出力のゲイン精度は、R1、R2、R3、R4、R5のマッチングによって決まります。そのため、たった1本の抵抗がわずかにミスマッチしていても、正と負のピーク絶対値電圧の間には、かなり の誤差が生じてしまいます。さらに、全体のノイズ・ゲインが6であることから、オペアンプのノイズ、オフセット、ドリフトの影響が増幅されてしまいます。

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改良された絶対値回路


図3は、たった1個のデュアル・チャンネル差電圧アンプ(AD82774)と、正極性の単電源だけで実現できる、より簡単かつ効果的な絶対値回路です。「入力信号が正」のとき、A1は電圧フォロワとして動作します。このときA2の両入力端子は入力信号と同じ電位になるため、A2出力には正極性の信号がそのまま表れます。「入力信号が負」のとき、A1出力は0Vになり、A2で入力信号が反転されます。こ れらの結果として、入力信号の絶対値を得ることができます。±10Vの大きな信号レベルであっても、10kHzもの高い周波数で整流が可能です。整流する信号がきわめて小さい場合は、各オ ペアンプ出力にプルダウン抵抗を接続することで、電圧が0V付近のときの回路性能の改善が可能です。

AD8277を用いた単電源絶対値回路

図3. AD8277を用いた単電源絶対値回路

この回路の動作は、見た目には簡単ですが、AD8277の並外れた入出力特性と、単電源で動作可能な性能によって実現できています。多くの単電源動作のオペアンプと異なり、この差電 圧アンプの入力には0V以下の電圧が印加されることになります。この場合、負の入力信号をA1の入力で受けながら、0Vの出力を維持する必要が生じます。入力側に内蔵されたESDダイ オードにより、さらに強力な入力過電圧保護が実現できています。図4は1kHzで20V p-pの入力信号のときの入出力波形と特性を示します。

改良されたこの絶対値回路は、通常の整流回路設計での制限のうちの多くが克服でき、想定外の結果までも得ることができます。最も注目すべきことは「必要とする部品点数の低減が可能 」ということであり、ここで必要なデバイスは1つだけです。外付けダイオードも不要になるため、クロスオーバー歪みもなくなります。レーザ・ウェハ・トリミングされた抵抗は正確に一致しており、 0.02%未満のゲイン誤差が保証されています。回路のノイズ・ゲインがわずか2であるため、ノイズ、オフセット、およびドリフトも低下しています。

(a)1kHzで20V p-pの入力信号に対する出力と入力。(

b)出力 対 入力特性

図4. (a)1kHzで20V p-pの入力信号に対する出力と入力。(b)出力 対 入力特性

AD8277は2~36Vの単電源で動作可能で、静止時消費電流は400µA未満です。

結論


単一のデュアル・チャンネル差電圧アンプで実現できる高精度な全波整流回路は、従来の設計と比べても複数の利点があります。特に高性能な外付け部品と両極性電源が不要にな るため、コストが激減し、複雑さも低減します。この差電圧アンプ構成では、クロスオーバーの問題がなく、広い温度範囲で低いドリフト性能が実現できるように最適化されています。AD8277 を使用すれば、消費電力とコストを抑えながら、「わずか1個のICで」高精度な絶対値回路が実現できます。

参考情報


1 www.analog.com/jp/amplifiers-and-comparators/difference-amplifiers/products/index.html
2 http://sound.westhost.com/appnotes/an001.htm
3 Sedra, A.S. and K.C. Smith. Microelectronics Circuits. 4th ed. New York: Oxford University Press. 1998
4http://www.analog.com/jp/AD8277

 

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