5つのモーション・センシング:MEMS慣性センシングの応用がアプリケーションの世界にもたらす変革

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MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)技術は、過去20 年にわたりエアバッグの実用化や自動車用圧力センサーなどへの活用が進められてきましたが、主要なゲーム・コントローラや、代表的な携帯電話の縦・横画面の自動切り替え機能にモーション・センシング・ユーザ・インターフェースが搭載されたことが契機となって、慣性センサーの応用についての認知が急速に広がりました。

しかしながら、慣性センサーが有効なのは主に加速や減速の検出が必要となるような製品に限られるといった認識が依然として根強いようです。純粋に科学的な観点からすれば、こうした考えは正しいのかもしれません。しかしそれでは、医用機器や工業用装置、民生用電子機器、自動車用電子機器など幅広い分野において、MEMS 加速度センサーやジャイロセンサーの利用が拡大しているという事実を見逃してしまうおそれがあります。

モーション・センシングにおける5つのモードについて、それぞれのモードで何が実現できるかを知ることによって、大量生産MEMSアプリケーションの現状の枠を超えた幅広い選択肢の広がりが見えてきます。これら5つのモードとは、加速(位置や方位などの並進運動を含む)、振動、衝撃、傾斜、回転を指します。

たとえば、あるデバイスにおいて、動きや振動が検知されないときに休止状態となるよう設定したい場合、動き検出機能を備えた加速度センサーを用いて最小消費電力モードになるよう信号を送ることで、パワーマネジメント機能を実現できます。複雑なコントロール装置や物理的なボタンによる操作は、指で軽くタップするだけの身振り認識インターフェースへの置き換えが進んでいます。他にも、手に持った方位磁石の傾きを補正するなど、最終製品の動作精度を高めることにも利用されています。

本稿では、現在販売されている最新のMEMS 加速度センサーとジャイロセンサーが、5つのタイプのモーション・センシングを活用することで、最終製品への応用範囲を飛躍的に拡大している例を紹介します。

モーション・センシングとMEMSの紹介

加速とは 振動とは 衝撃とは 傾斜とは 回転とは

加速、振動、衝撃、傾斜、回転という5つのモーションは、回転を除いて、加速という現象をさまざまな時間区分でとらえ、異なる方法で表したものです。私たち人間はこうした動きの感覚を加速や減速の変化に置き換えてとらえているわけではありませんが、これらのモードを個別に考察することにより、より多くの可能性が見えてくるのです。

加速(並進運動を含む)は、時間の単位で速度の変化を計測します。速度は毎秒メートル(m/s)の単位で表され、これには動きの変位速度と方向の両方が含まれます。同様に、加速度はメートル/秒の2 乗値(m/s2)を単位として計測されることになります。数値が負の加速度は減速度と呼ばれます(ブレーキをかけて車が減速する様子を想像してください)。

ここで、さまざまな時間区分における加速について考えてみましょう。振動は、加速と減速の急速かつ周期的な発生ととらえること ができます。

同様に、衝撃は瞬時に発生する加速です。しかし、衝撃は振動とは異なり、通常は一度だけ発生する非周期的な関数です。

再び時間の幅を引き延ばしてみましょう。ある物体が移動して、その傾斜角、すなわち勾配が変化するときに、重力に対する何らかの位置的な変化が伴います。

こうした動きは、振動や衝撃と比較すると、通常はるかに低い速度で発生します。これらの最初の4つのモードのモーション・センシングはそれぞれ、ある特定の方向の加速に関係するものであり、これらは物体に地球の引力がかかるときの力の単位であるg(重力)によって計測されます(1g は9.8m/s2に相当します)。MEMS 加速度センサー上の複数の軸にかかる重力を計測することによって、傾斜角を検出することができます。3 軸加速度センサーの場合、X、Y、Zの運動軸に沿った加速度を3つの独立した出力から検出します。

現在、最大の市場シェアを有する加速度センサーは、g(重力)の計測に差動コンデンサを使用しており、計測したg は電圧またはビット(デジタル出力加速度センサーの場合)に変換した後、この信号をマイクロプロセッサに送って、アクションを実行しています。最近の技術の進展により、帯域幅が以前よりも広い低gおよび高g センシング範囲の小型MEMS 加速度センサーの製造が可能になっているため、応用できるアプリケーションの分野が大幅に広がっています。低g センシング範囲は20gよりも小さく、人間の動きに対応します。高g は機械装置や自動車に関連する運動、すなわち人間の能力を超えた動きの検出に有効です。

ここまでは、加速、振動、衝撃、傾斜など線形の動きについて説明してきました。これに対し回転は角速度の動きの尺度です。回転は加速度が変化せずに発生するという点において他のモードと異なります。回転がどのように作用するかを理解するには、3 軸慣性センサーを想像してみてください。たとえば、このセンサーのX軸とY 軸が地球の表面に対して平行であると仮定しましょう。Z 軸は地球の中心を向いています。この位置でZ 軸の計測値は1g であり、X 軸とY 軸の計測値は0g です。このときに、センサーがZ 軸のみを中心に回転させます。X 軸とY 軸の面は、回転するだけなので0g のままであり、Z 軸の計測値は1g のままです。

MEMSジャイロセンサーは、このような回転運動の検出に使用されます。ある種の最終製品においては、他の運動形態に加えて回転の計測が要求されますが、その場合には、多軸ジャイロセンサーと多軸加速度センサーの両方を備えたIMU(慣性計測ユニット)にジャイロセンサーの機能を組み込んでしまうのも一つの方法です。

ユーザビリティとパワーマネジメントの改善

加速が動きと位置の検出に関わる要素であることについてはすでに述べました。MEMS 加速度センサーを応用すれば、装置を手に取ったこと、あるいはどこかに置いたことを検出することが可能になり、MEMS 加速度センサーが動きを検出するたびに自動的に機能をオンまたはオフにする割込み制御を行うことができます。機能をさまざまに組み合わせて、装置をアクティブ状態に維持することや、可能な限り消費電力を下げる設定にすることもできます。動きに対応したオン/オフ機能を実装すれば、ユーザがそのつど操作する必要がなくなり、よりユーザフレンドリーな操作性が実現します。さらに、装置の再充電やバッテリの交換の頻度を電源管理によって減らすことが可能になります。バックライト液晶のついたインテリジェントなリモコンなども、実現可能性のあるシナリオの1つです。

加速度センサーを利用して動きを検出し、割込み制御を行う他の応用例には、軍や公安関係の職員用の無線端末があります。無線機の着用や携帯が中断された場合に、ユーザ・アクセスをそのまま許可せずに再度の認証手続きを要求し、通信のセキュリティを確保することが可能になります。これら2 つの用途では、携帯性や小型の設計要件に対応するため、ほとんど電流を消費しない、すなわち消費電流が最大でも数マイクロアンペア(µA)に抑えられた加速度センサーを用います。

動き検出のもう1つの応用事例は、自動体外式除細動器などの医用機器です。一般的に、AEDは患者にショックを与えて心ポンプ機能を回復させるためのものです。し かしこれがうまくいかない場合には、手動による心肺機能蘇生を行う必要があります。救助する人の経験が浅いと、患者の胸部を十分に圧迫して心肺機能を蘇生させる ことができない場合があります。AEDの胸部パッドに組み込まれた加速度センサーによってパッドの移動距離を計測し、救助者に適正な圧迫量をフィードバックして伝えるこ とが可能になります。

振動センシングのモニタリングと省エネルギーへの応用

振動のわずかな変化は、ベアリングの磨耗、機械部品のアライメントのずれ、その他、工業用機器を含む機械装置のさまざまな問題の発生を表す重要な指標となります。帯域幅が非常に広い超小型のMEMS 加速度センサーは、モータ、ファン、コンプレッサの振動モニタリングに最適です。予知保全の実行が可能となり、製造企業は高価な装置の損傷を回避し、重大な生産損失を引き起こす工場設備の故障を未然に防ぐことができます。

装置の振動の様子の変化を計測することで、機械装置がエネルギー効率の高い方法で動作するよう調整されているどうかを検知する目的にも利用できます。非効率的な動作を補正せずに放置すれば、環境に配慮した製造に取り組む企業努力が無駄になり、電力コストが上昇し、ひいては装置にダメージをもたらしてしまうことになります。

衝撃回避、身振り認識など

多くのノートブックPCで見られるディスク・ドライブ保護は、これまでで最も幅広く実装されている衝撃センシング・アプリケーションの1つです。加速度センサーが、床にぶつかる衝撃事象の前兆であるノートブックPC の落下を示す小さなg(重力)を検出すると、数ミリ秒以内にシステムはハードディスク・ドライブ・ヘッドに対し退避命令を出します。ヘッドが退避することで、衝撃が加わった瞬間のディスク・プラッタとの接触が回避され、ドライブの損傷、およびその結果として発生するデータの消失を防ぐことができます。

身振り認識インターフェースは、この種の慣性センシングにとって有望な新しい分野です。軽くたたくタップ動作、これを2 回繰り返すダブルタップ、あるいは振る動作などの定義された身振りによって、ユーザは種々の機能を起動したり、動作モードを調整したりすることができます。身振り認識は、物理的なボタンやスイッチを操作することが難しい場合に、装置の有用性を高めます。ボタンのない設計は、システム全体のコストを削減できることに加えて、ボタン周囲に開口部があると本体に水が浸入するおそれのある水中カメラなどの最終製品の耐久性向上を実現できます。

小型の民生用電子製品は、加速度センサー・ベースの身振り認識の有用性がすでに認められている唯一のアプリケーション分野です。超小型の低消費電力MEMS 加速度センサーが普及したおかげで、投薬ポンプや補聴器などの着用や埋込みが可能な医用機器へのタップ・インターフェースの実装が可能になりました。

高精度な動作を保証する傾斜角センシング

同様に、傾斜角センシングも身振り認識インターフェースを活用する上で大きな可能性を秘めています。たとえば、建設用装置や工業用検査装置などのアプリケーションでは片手の操作が望ましい場合があります。装置を操作しない方の手が空くことにより、バケツや足場の台を操作したり、あるいは安全のためにロープを握ったりできます。運転員はプローブや装置を「回転」させるだけで、その設定を調整することができます。

こうした場合に、3 軸加速度センサーは、「回転」を傾斜角として検出します。つまり、重力が存在するなかで傾斜角の低速変化を計測し、重力ベクトルの変化を検出して、方向が右回りであるか左回りであるかを判別します。傾斜角検出をタップ(衝撃)認識と組み合わせて、作業員が装置のより多くの機能を片手でコントロールできるようにすることも可能です。

装置の位置補正は、傾斜角の計測が有用性を発揮するもう1つの重要な分野です。GPS(全地球測位システム)や携帯電話で使用されている電子方位磁石を例に挙げてみましょう。この場合の一般的な問題は、方位磁石が地球の表面に対して正確に平行に位置決めされていないために発生する進行方位の誤差です。

工業用重量計がもう1つの例です。このアプリケーションでは、地球を基準とする荷重バケツの傾斜角を計算した上で、重量を高精度に読み取る必要があります。自動車や工業用機械装置で使用される圧力センサーも同様に、重力の影響を受けます。これらのセンサーにはダイヤフラムが内蔵されており、そのたわみ量がセンサーの実装位置によって変化します。こうした状況下で、MEMS 加速度センサーは誤差の補正に必要な傾斜角センシングを実行します。

回転:ジャイロセンサーとIMUによる実測

すでに述べた通り、他の種類の慣性センシングに回転を組み合わせることにより、MEMS 技術の実社会におけるアプリケーションの有用性は一層高まります。具体的には、加速度センサーに加えてジャイロセンサーの活用が必要となります。

多軸加速度センサー、多軸ジャイロセンサー、そして進行方位精度を向上させる多軸磁気計を内蔵した慣性計測ユニットがすでに実用化されています。このIMUはさらに、6自由度(6DoF)に完全対応しています。したがって、医用画像処理装置、外科手術用計測器、人工装具、工業用車両用の自動式ガイダンスなどのアプリケーションにおいて超微細分解能を発揮します。

きわめて精度の高い動作に加えて、IMUを選択するもう1つの優位性は、こうしたセンサーの多彩な機能についての事前テストと事前キャリブレーションがメーカーの手で行われているという点にあります。

精度に関する要件が明確でないような場合でも、IMUは有用であることが実証されています。ゴルファーがスイングを行うたびにすべての軌跡を検出・記録し、技術向上に役立つインテリジェント・ゴルフクラブがその一例です。ゴルフクラブに組み込まれた加速度センサーが加速度とスイング面を計測し、ジャイロセンサーがスイング時のゴルファーの手の回内運動やひねりを計測します。プレイ中や練習時にこのゴルフクラブに記録されたデータは、後からPCで解析することができます。

信号処理の新しい波

使いやすい機能、消費電力の最小化、物理的なボタンやコントロールの排除、重力と位置の補正、あるいはより多くのインテリジェント動作など、どのようなニーズに対しても、MEMS ベースの慣性センシングは5つのモーション・センシングのすべてを網羅する非常に数多くのオプションを提供します。

iMEMS® Motion Signal Processing™ 製品ラインを備えるアナログ・デバイセズをはじめとする革新的企業が、次世代の信号処理技術の実現に必要な加速度センサーとジャイロセンサーの開発で世界をリードしています。こうしたICソリューションが提供する小型化、高分解能、低消費電力、高信頼性、シグナル・コンディショニング回路、集積化された機能などの利点を活かすことで、応用範囲がますます拡大するモーション・センシング・アプリケーションはさらに進化を遂げることでしょう。

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