CN0255

16 ビット、100kSPS、単電源、低消費電力データ・アクイジション・システム

 ※Rev.Aを翻訳したものです。最新版は英語資料をご覧ください。

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回路機能とその特長

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多くのシステムでは、性能と低消費電力の間でトレードオフを行います。この回路設計では、これらのトレードオフのいくつかを調べ、さらに、16ビット、100 kSPSデータ・アクイジション・システムにおいて低消費電力(8mW標準)と高性能を実現することに焦点を当てています。

この回路には、 AD7988-1高性能、低電圧、低消費電力オペアンプによって直接駆動されるADA4841-1低消費電力(350μA)PulSAR® A/Dコンバータ(ADC)を使用しています。動的性能が優れており、単電源電圧での動作とレールtoレール出力が可能なので、このオペアンプが選択されました。さらに、入力同相電圧範囲に負電源レールが含まれます。

AD7988-1 ADCは、2.4V~5.1Vの範囲の外部電圧リファレンスを必要とします。このアプリケーションで選択された電圧リファレンスは、ADR4525 2.5V高精度リファレンスです。

図1. シングルエンド、低電圧、低消費電力、16ビット、100kSPSの基本的なADCソリューション

回路説明

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この回路の心臓部は、単一VDD電源で動作する AD7988-1 16ビット、100 kSPS逐次比較型ADCです。このデバイスは、低消費電力、高速16ビット・サンプリングADCと、汎用シリアル・ポート・インターフェース(SPI)を備えています。CNVの立上がりエッジで、アナログ入力IN+(0V~REF間)を、グランド検出ピンIN−を基準にしてサンプリングします。リファレンス電圧、REF、は外部より与えられますが、電源電圧、VDDとは独立して設定することができます。

この回路ノートで行った実験では、AD7988-1評価用ボードをシステム・デモンストレーション・プラットフォーム(SDP) EVAL-SDP-CB1Z とインターフェースさせました。この場合、ADCのSPI互換シリアル・インターフェースをDSPのSPORTインターフェースに接続しました。ADCのSPIインターフェースを使うと、単一の3線バス上で複数のADCをデイジーチェーン接続することができます。専用のVIO電源ピンを使用することにより、1.8V、2.5V、3V、または5Vロジックに対応します。

AD7988-1は、10ピンMSOPまたは10ピンQFN(LFCSP)パッケージに収められています。便宜上、このボードではMSOPパッケージを使用しています。

ADC入力は、1.1mA(typ)の静止電源電流で動作する、ユニティゲインで安定した、低ノイズ、低歪み、レールtoレール出力アンプ ADA4841-1 によってバッファされ、駆動されます。このアンプは、広帯域での電圧ノイズが2.1nV/√Hz、電流ノイズが1.4pA/√Hzと小さく、100kHzでのスプリアスフリー・ダイナミック・レンジ(SFDR)が−105dBcと優れています。低い周波数で低ノイズ環境を維持するため、このアンプの10Hzでの1/fノイズは低く、7nV/√Hzと13pA/√Hzです。

ADA4841-1の特長として、このアプリケーションでは負電源レールをグラウンドに接続した状態でシングル・レールによって動作可能なので、単電源アプリケーションに最適です。アンプ出力はグラウンド・レベルの50mV以内まで振幅することができ、このアプリケーションでは許容できます。入力同相電圧の範囲は負電源レールから正電源レールの1V以内であることに注意してください。このため、対象となる信号範囲(0V~2.5V)に対応するのに1Vのヘッドルームが必要になるので、この回路では4Vレールを使用しました。ADA4841-1は6ピンSOT-23パッケージまたは8ピンSOICパッケージで供給されます。

このアプリケーションで使用されている2.5V電圧リファレンスは、ADR45xxリファレンス・シリーズの ADR4525 です。このデバイスは高精度、低消費電力、低ノイズで、±0.01%の初期精度、優れた温度安定性、および低出力ノイズを特長とします。ADR4525は熱による出力電圧ヒステリシスが小さく長期出力電圧ドリフトが小さいので、システム性能が向上します。このデバイスは最大動作電流が700μAで、ドロップアウト電圧が最大500mVと低く、携帯機器で使用するのに最適です。

この回路で使用されている3つのデバイスはそれぞれ、−40℃~+125℃の工業用温度範囲で動作仕様が規定されています。


性能予測

このアプリケーションでは電力が鍵になるので、多くの利用可能なデバイスから適切に選択できるように、回路の各構成部品の影響を分析することが必要です。最初のステップとして、選択した3つのデバイスの個々の電源電流を調べました。

各構成部品の電源電流の代表的な計算値と測定値を表1に示します。ADCのデジタル・インターフェースのVIO電源からの影響はごくわずかなため、ここには含まれていません。電流の測定値と計算値は良く対応しています。小さな差は、受動部品と代表的なデータシートの仕様からの電源電流のわずかなばらつきに起因しています。
表1. 電源電流による影響の計算値と測定値

 負荷

 内容

計算値
測定値
電源電流
電源電圧
電力
電源電流
電源電圧
電力
ADC  AD7988-1  150 µA  2.5 V  375 µW  148 µA
2.5 V  370 µW 
Driver  ADA4841-1  1.1 mA  4 V  4.4 mW  1.95 mA  4 V  7.8 mW 
Reference  ADR4525  700 µA  4 V  2.8 mW 
Reference load  ADC ref current
60 µA  4 V  240 µW
 合計        7.81mW      8.17mW


低い値のリファレンス電圧を使用する場合、AD7988-1 ADCのAC性能がある程度低下することが予想されます。この性能低下を図2に示します。ここでは、信号対ノイズ比(SNR)、信号対ノイズおよび歪み比(SINAD)、および有効ビット数(ENOB)がリファレンス電圧の関数として示されています。2.5Vリファレンスでは、約86dB~87dBのSNR性能が予想されることに注意してください。


図2. AD7988-1 ADCのリファレンス電圧に対する SNR、SINAD、ENOB

この回路の測定結果を図3に示します。前の図2に示したように、86.17dBのSNR性能は2.5Vリファレンス電圧で予想された値と同程度です。


図3. 10kHzの入力トーンを100 kSPSのサンプリング・レートで測定したAC性能、SNR = 86.17dB


バリエーション回路

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PulSAR®ファミリーのその他のピン互換16ビットADCでは、高いサンプリング・レートのAD7988-5(500kSPS)、AD7980 (1MSPS)、AD7983(1.33MSPS)が利用可能です。サンプリング・レートが高いと、より多くの電力を必要とすることに注意してください。また、高い分解能が必要な場合は、ピン互換デバイスであるAD7691(18ビット、250kSPS)、AD7690(18ビット、400kSPS)、AD7982(18ビット、1MSPS差動入力)、AD7984(18ビット、1.33MSPS)が適しています。

高い入力電圧範囲が必要な場合には、リファレンスとADCドライバの両方に、高い電圧リファレンスと高い電源レールを選択します。

同様の条件(ただし、サンプリング・レートは500 kSPS)でのAD7988-5 ADC(16ビット、500 kSPS)の動的性能を図4に示します。SNRは86.37dBになります。



図4. 500 kSPSのAD7988-5 ADCを使用して10kHzの入力トーンを500 kSPSのサンプリング・レートで測定したAC性能、SNR = 86.37dB

入力同相電圧バイアス・アンプの追加 


AC結合のアプリケーションでは、入力信号をその中心がADCの入力範囲内(2.5Vリファレンスでは0V~2.5V)になるようにバイアスする必要があります。図5に示す回路は、この同相信号の要件に対応します。

このアプリケーションでは、多種のアンプをバッファ目的で使用することができます。AD8031は、80MHzの小信号帯域幅での高速性能、30V/μsのスルーレート、および125nsのセトリング・タイムを特長とする単電源の電圧帰還アンプです。このアンプは、容量性負荷のときにユニティゲインで安定し、3.3V単電源で消費する電力は2.5mW未満です。AD8031は5ピンSOT-23、8ピンSOIC、8ピンPDIP、8ピンMSOPパッケージで供給されます。この回路では、分圧器を使ってADA4841-1の入力に必要な1.25Vの同相電圧を供給します。この分圧器への2.5V電圧リファレンスをバッファするのにAD8031が使用されています。バッファで消費される追加の電力を表2に示します。




図5. AC結合アプリケーションの入力電圧範囲を中心に合わせるのに使用される同相バッファを追加して強化した回路



表2. VCMバッファ(AD8031)を含む電源電流の影響の計算値

負荷
内容 電源電流
電源電圧
電力
ADC  AD7988-1  150 µA  2.5V  375 µW 
Driver  ADA4841-1  1.1 mA  4V  4.4 mW 
Reference  ADR4525  600 µA  4V  2.4 mW 
VCM Buffer  AD8031  750 µA  4 V  3 mW 
 合計      

 10.17mW





図6. 同相バッファとリファレンス・バッファを追加して強化した回路


リファレンス電圧バッファの追加



電圧リファレンスが別の回路で共有されるアプリケーションの場合、最適な性能を確保するためにリファレンス電圧をバッファする必要があるかもしれません。この例では、図6に示すように、AD8032(AD8031のデュアル・バージョン)を使うと良好に動作します。ADCのリファレンス入力をバッファすると、デカップリング値を、できるだけデバイスの近くに配置した10μFのセラミック・チップ・コンデンサまで小さくすることができます。

 

図6に示すように、AD8032アンプを使ってVCM電圧レベルを生成し、リファレンス電圧をバッファするときの、AD7988-1とAD7988-5のそれぞれの性能を図7と図8に示します。この回路はEVAL-CN0255-SDPZボードに実装されています。



図7. 10kHzの入力トーンを測定したAC性能(サンプリングが100 kSPSのAD7988-1を使用)



図8. 10kHzの入力トーンを測定したAC性能(サンプリングが500 kSPSのAD7988-5を使用した同等の構成)


回路の評価とテスト

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回路の評価とテスト
必要な装置(相当品で置き換え可)


  • EVAL-CN0255-SDPZ
  • システム・デモ用ボード ( EVAL-SDP-CB1Z)
  • 今回のテストで使用されたAudio PrecisionのSYS-2522のような関数発生器/信号源
  • 2.5Vと4Vの電源
  • USBポート、USBケーブルを備え、10ピンPulSARのソフトウェアがインストールされたPC


セットアップとテスト

AC性能の測定セットアップのブロック図を図9に示します。2.5Vと4Vの電源を評価用ボードの電源端子に接続します。

周波数応答を測定するため、機器を図9に示すように接続します。Audio PrecisionのSYS-2522信号発生器を、周波数が10kHz、DCオフセットが1.25Vの2.5Vp-pサイン波に設定します。評価用ボードのソフトウェアを使ってデータを記録します。

ソフトウェアによる解析機能が評価用ボードのソフトウェアに含まれており、これにより、ACおよびDCの性能データの収集と解析を行うことができます。



図9. AC性能測定用回路のテスト・セットアップ

製品サンプル

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Samples

Product

Description

Available Product
Models to Sample

ADR4525 リファレンスIC、超低ノイズ、高精度、2.5V

ADR4525ARZ

ADR4525BRZ

AD7988-1 A/Dコンバータ、16ビット100kSPS、逐次比較型、超低消費電力

AD7988-1BCPZ-RL7

AD7988-1BRMZ

ADA4841-1 オペアンプ、レールtoレール出力、低消費電力、低ノイズ、低歪み

ADA4841-1YRJZ-R7

ADA4841-1YRZ

評価用ボード 表示されている価格は、1個あたりの価格です。
価格は1個当たりの米ドルで、米国内における販売価格(FOB)で表示されておりますので、予算のためにのみご使用いただけます。 また、その価格は変更されることがあります。米国以外のお客様への価格は、輸送費、各国の税金、手数料、為替レートにより決定されます。価格・納期等の詳細情報については、弊社正規販売代理店または担当営業にお問い合わせください。なお、 評価用ボードおよび評価用キットの表示価格は1個構成としての価格です。