CN0105

16 ビット、10MSPS ADC AD7626 用シングルエンド/差動高速駆動回路※Rev.0を翻訳したものです。最新版は英語資料をご覧ください。
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回路機能とその特長

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図1に示す回路は、高周波のシングルエンド入力信号を、16ビット、10MSPS PulSAR®ADC AD7626の駆動に使われる平衡差動信号に変換する方法を示しています。この回路は、低消費電力差動アンプADA4932-1を使ってADCを駆動することで、高周波数の入力トーンに対するAD7626の性能を最大限に維持します。デバイスをこのように組み合わせることの本当の利点は、低い消費電力で高い性能が得られることです。

AD7626は、10MSPSでのSNRが91.5dB、16ビットINL性能、パイプライン・ディレイなし、LVDSインターフェースという画期的な動的性能とともに、消費電力がわずか136mWという特長を備えています。AD7626で採用されているSARアーキテクチャの主な特長は、優れた直線性性能を持つパイプライン型ADCに通常生じる待ち時間つまり「パイプライン・ディレイ」なしに10MSPSでサンプリングできる能力です。

ADA4932-1は、低歪み(10MHzでのSFDRが100dB)、高速セトリング・タイム(0.1%まで9ns)、広帯域幅(−3dB帯域幅:560MHz、G = 1)、低消費電流(9.6mA)のデバイスです。これらの特性はAD7626の駆動に最適です。また、必要な出力同相電圧を容易に設できる機能も備えています。

この組合せにより、業界最先端の動的性能と、5mm × 5mm 32ピンLFCSPパッケージのAD7626、3mm × 3mm 16ピンLFCSPパッケージのADA4932-1、5ピンSOT-23パッケージのAD8031を使った小さな基板面積を実現します。

回路説明

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差動アンプを使ってADCを適正に駆動することは、差動アンプの両側を正しくバランスさせることにつながります。


図1は、ADA4932-1、AD7626、および関連する回路の回路図を示しています。使用したテスト回路では、信号源の後に2.4MHzのバンドパス・フィルタが接続されています。このバンドパス・フィルタは2.4MHz信号の高調波を除去し、対象となる周波数のみを通過させてADA4932-1とAD7626で処理できるようにします。

図1. AD7626を駆動するADA4932-1(全接続の一部およびデカップリングは省略されています)


この場合の信号源は特性インピーダンスが50Ωで、バンドパス・フィルタを介してADA4932-1にAC結合されています。信号源をADA4932-1 の非反転入力に加えるには、信号源を50Ωで適切に終端することも必要です(つまり、信号源インピーダンスが50Ω)。終端抵抗R2は、R2と ADA4932-1の入力インピーダンスの並列接続の値が50Ωに等しくなるように選択されています。ADA4932-1の入力インピーダンス(抵抗R3 から見た値)は次式で計算することができます。

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ここで、RG = R3 = R5 = 499 Ω、およびRF = R6 = R7 = 499 Ωです。これらの値に対するこの回路の入力インピーダンスは約665Ωです。ADA4932-1の665Ωの入力インピーダンスと53.6Ωの抵抗(R2)の並列接続の値は50Ω(つまり、入力信号源インピーダンス)に等しくなります。

ADA4932-1の2つの入力の間で平衡と対称を適切に維持するため、入力信号源インピーダンスと等価なテブナン・インピーダンスと終端を反転入力に追加する必要があります。この場合、フィルタのAC特性がこの影響を受けます。

図1のADA4932-1の反転入力にテブナンの等価回路が示されています。この回路は2.4MHzで最適な性能になります。C1とR4の直列接続に抵抗R1が並列接続されています。2.4MHzでは、C1とR4の直列接続の合成抵抗は55.6Ωに等しい値です。R1と並列接続された55.6Ωのインピーダンスは、非反転入力のテブナン等価回路の入力インピーダンスの数オーム以内の小さな差異です。2つの入力を一致させることにより、出力を対称にし、平衡させ、低歪みになるように最適化することができます。

シングルエンド入力の終端方法の詳細についてはADA4932-1のデータシート、またはアプリケーションノートAN-1026「高速差動ADCドライバの設計についての考察」を参照してください。また、ADI DiffAmpCalcuator™設計ツールによりこの作業が大幅に簡略化され、その他の差動アンプの設計関連問題に対する深い理解が得られます。


ADA4932-1差動ドライバは、シングルエンド入力から差動出力までのゲインが約1に設定されています。50Ωの信号源抵抗とADA4932-1の入力の終端抵抗が一致することから、チャンネル全体の実質のゲインはテブナン等価信号源電圧を基準にして約0.5になります。

ADA4932-1出力の同相電圧は、ユニティ・ゲイン・バッファとして構成されたAD8031を使ってAD7626からのVCM出力電圧(公称+2.048V)をバッファすることによって設定します。AD8031は、ADA4932-1のVOCMピンに低インピーダンスのDC信号源を供給するとともに、図1に示されているように大きなバイパス・コンデンサを駆動することもできます。


ADA4932-1は、スイッチド・キャパシタ入力を備えた10MSPS ADC AD7626の入力を高い周波数まで駆動するときには特に有用です。ADA4932-1とAD7626のIN+ピンおよびIN−ピンの間の抵抗(R8、R9)とコンデンサ(C5、C6)の回路は、ノイズに対するローパス・フィルタとして機能します。このフィルタはAD7626への入力帯域幅を制限しますが、その主な機能は駆動アンプとAD7626のインターフェースを最適化することです。直列抵抗は、ADCのスイッチド・キャパシタのフロントエンドから生じる高周波スイッチング・スパイクからドライバ・アンプを絶縁します。AD7626のデータシートに20Ωと56pFの値が示されています。図1の回路では、これらの値は33Ωと56pFに実験的に最適化されています。抵抗とコンデンサの回路は、RとCの組み合わせを変えることで回路と変換される入力周波数に対して多少最適化することができますが、不適切な組み合わせにするとAD7626のTHDと直線性性能が制限されることに注意してください。また、ADCから見た帯域幅を拡大するとノイズがより大きくなります。

最適化の別の側面はADA4932-1の電源電圧の選択です。この回路では、AD7626の4.096Vの内部リファレンス電圧に対する出力同相電圧(VCMピン)は2.048Vで、各入力(IN+、IN−)は180°の位相差で0Vと+4.096Vの間を振幅します。これにより、ADCへの8.2Vp-pフルスケール差動入力が得られます。リニアな動作を維持するためは、ADA4932-1の出力段は各電源電圧に対して約1.4Vのヘッドルームを必要とします。電源電圧が同相電圧に対してほぼ対称のときに最適な歪み性能が得られます。−2.5Vの負電源を選択した場合、2.048Vの同相電圧に対して対称にするためには、+6.5V以上の正電源が必要になります。


行った実験では、+7.25Vの正電源が2.4MHzのトーンに対して全体的に最良な歪み性能を与えることを示しています。

低ジッタのクロック源と、振幅が−1dBFSで2.402MHzのシングルトーンをAD7626に入力したFFTの測定結果は、図2に示すようにSNRが88.49dB、THDが−86.17dBcです。このプロットから分かるように、基本波の高調波が通過帯域に折り返されています。例えば、10MSPSでサンプリングする場合、3次高調波(7.206 MHz)が10.000MHz – 7.206MHz = 2.794MHzの通過帯域に折り返されます。振幅が−6dBFSのトーンに対するもう1つのFFTプロットを図3に示します。


図2. AD7626出力の64,000ポイントのFFTプロット(振幅:−1dBFS、入力トーン:2.40173MHz、サンプリング・レート:10.000MSPS)



図3. AD7626出力の64,000ポイントのFFTプロット(振幅:-6dBFS、入力トーン:2.40173MHz、サンプリング・レート:10.000MSPS)


SNRとTHDを計算する場合、回路で使われるバンドパス・フィルタの通過帯域を通る非高調波ノイズをナイキスト帯域幅の平均ノイズに置き換えます。
このような高速回路の性能は適切なPCBレイアウトに大きく依存します。これには電源バイパス、管理されたインピーダンス・ライン(必要な場合)、部品配置、信号配線、電源プレーン、グラウンド・プレーンなどが含まれますが、これらに限定されるわけではありません。PCBレイアウトの詳細についてはチュートリアルMT-031チュートリアルMT-101、および技術記事「高速プリント回路基板レイアウトの実務ガイド」を参照してください。)




AD7626—標準的な接続とリファレンス設定

AD7626の標準的な接続図を図4に示します。AD7626は内部リファレンスを備えているだけでなく、システム条件に応じた2つの外部リファレンスに対応しています。リファレンス電圧は、ADR280のリファレンス出力(1.2V)をREFINピンに供給し、内蔵リファレンス・バッファで4.096Vの適正なADCリファレンス値に増幅して生成することができます。ADR280の例ではAD7626に使われているものと同じ5Vアナログ電源レールからの給電が可能で、内蔵リファレンス・バッファを利用することもできます。代わりに、4.096V外部リファレンス(ADR434またはADR444)をADCのバッファを経由しないREF入力に供給することもできます。これは、一般にシステムのリファレンスが個別にバッファされ(AD8031を使用)全てのADCチャンネルで共有されるマルチ・チャンネルのアプリケーションでは標準的な手法です。ADR434およびADR444の構成は、小さいリファレンス電圧温度係数(ADR434BおよびADR444Bで最大3 ppm/℃)を必要とするシングル・チャンネルのアプリケーションにも適しています。ADA4932-1アンプの給電に使われる正電源レールは、ADR434またはADR444のVIN電源ピンに給電することができます。


図4. デカップリングとLVDSのインターフェース接続を示すAD7626の代表的な接続図

バリエーション回路

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この回路は、図に示された部品の値を使うことで、優れた安定性と高精度を提供します。この回路はDC結合ですが、その他AC結合の一般的なアプリケーションも可能です。この回路のバリエーション回路には、単電源電圧、差動で駆動する入力、信号の減衰を要する入力が組み込まれています。他のADCドライバ/差動アンプを使って、アプリケーションの性能(消費電力、ノイズ、帯域幅、アーキテクチャなど)を調整することができます。

入力周波数が1MHz以下の場合、AD7626のデータシートに示すように、推奨する駆動アンプはADA4899-1です。AD7626のデータシートに記載された「代表的な性能特性」のセクションの高周波数のプロットに示されているように、最大10MHZの高速信号でAD7626を駆動する効果的な方法はADA4938-1を使用することです。

製品サンプル

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Description

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Models to Sample

AD8031 オペアンプ、シングル、2.7V、800 µA、80MHz、レールtoレールI/O

AD8031ANZ

AD8031ARTZ-REEL7

AD8031ARZ

AD8031BNZ

AD8031BRZ

AD7626 A/Dコンバータ、16ビット、10MSPS、差動、PulSARシリーズ

AD7626BCPZ

ADA4932-1 差動A/Dコンバータ・ドライバ、低消費電力

ADA4932-1YCPZ-R7