Brendan Cronin著
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fOUT = εx× fC
ここで、スケーリング係数εxは、時に正規化周波数と呼ばれます。 この式は、必ず実数の段階的な近似化のアルゴリズムを使用して実装されます。スケーリング係数が有理数で2つの互いに素である整数の比であるとき、出力周波数と基準周波数の比は調和関係になります。しかし多くの場合、εxは非常に広い範囲の実数に属しており、値が許容範囲に入るとすぐに近似化は打ち止めされます。
周波数シンセサイザのこのような実用化の1例が、ダイレクト・デジタル周波数合成(DDFS)です。一般的に、短縮してダイレクト・デジタル・シンセシス(DDS)といいます。この技術は、デジタル・データ処理によって、固定周波数リファレンス(つまりクロック源fC)に関連させて周波数または位相を同調する出力を生成します。DDSアーキテクチャでは、プログラマブルなバイナリ同調ワードで設定するスケーリング係数によって、基準周波数つまりシステム・クロック周波数を分周します。 簡単に言えば、ダイレクト・デジタル周波数シンセサイザは、一連のクロック・パルスをアナログ波形(一般的にはサイン波、三角波、または矩形波)に変換します。図1に示すように、その基本的な構成要素には、位相アキュムレータ(出力波形の位相角に対応する数値を生成するもの)、位相デジタル・コンバータ(特定の位相角で生じる出力振幅の瞬間的なデジタル比を生成するもの)、D/Aコンバータ(DAC:デジタル値を サンプリングされたアナログ・データ・ポイントに変換するもの)があります。

図1. DDSシステムの機能ブロック図
ここで
Mは、同調ワードの分解能です(24~48ビット)。
Nは、位相アキュムレータの出力ワードの最小の漸進的位相変化に対応するfCのパルス数です。

図2. DACを使った代表的なDDSアーキテクチャと信号経路
Nが変化すると、出力の位相と周波数が即時に変化するため、システムは本質的に位相連続になります。これは、多くのアプリケーションにおいて重要な特性です。フェーズ・ロックド・ループ(PLL)などのアナログ型システムとは異なり、ループ・セトリング時間は必要ありません。 DACは一般に、DDSコア(位相アキュムレータと位相/振幅コンバータ)と使用するように特に設計された高性能回路です。多くの場合、このようにして得られるデバイス(通常はシングル・チップ)を一般的にコンプリートDDSまたはC-DDSと呼びます。 さまざまな周波数/位相変調方式に対応できるように、実用的なDDSデバイスは通常複数のレジスタを集積しています。位相レジスタが内蔵されている場合、その内容は位相アキュムレータの後で加算されます。これによって、位相同調ワードに合わせて出力サイン波の位相遅延ができます。この機能は、通信システムの位相変調アプリケーションにとても便利です。位相同調ワードのビット数、したがって遅延の分解能は、加算器回路の分解能によって決まります。 DDSエンジンとDACを1つのデバイスに集積することには、利点も欠点もあります。しかし、集積されているかどうかにかかわらず、きわめて高純度の高品質なアナログ信号を生成するにはDACが必要です。DACはデジタル・サイン波出力をアナログ・サイン波に変換しますが、シングルエンドでもよいし差動にすることができます。重要な条件をいくつかあげると、低位相ノイズ、広帯域(WB-)と狭帯域(NB-)の優れたスプリアスフリー・ダイナミック・レンジ(SFDR)、低消費電力です。外付け部品のDACの場合、信号処理に十分な速度を必要とするため、パラレル・ポートを備えたものを使用します。
周波数を生成するその他の方法としては、アナログのフェーズ・ロックド・ループ(PLL)、クロック発生器、そしてFPGAを使用してDACの出力をダイナミックに設定する方法などがあります。これらの技術を簡単に比較するには、スペクトル性能と消費電力を調べます。これを定性的に示したのが表1です。
表1. DDSとこれに代わる技術のハイレベル比較
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消費電力 |
スペクトル純度 |
備考 |
DDS |
低 |
中 |
同調が簡単 |
ディスクリート DAC + FPGA |
中 |
中~高 |
同調可能 |
アナログ PLL |
中 |
高 |
同調は困難 |
フェーズ・ロックド・ループは、位相比較器、デバイダ、電圧制御発振器(VCO)で構成される帰還ループです。位相比較器は、基準周波数と出力周波数(通常は係数Nによって分周)を比較します。位相比較器が生成した誤差電圧はVCOに印加され、出力周波数が生成されます。ループがセトリングすると、出力のリファレンスに対する周波数や位相の関係が正確なものになります。PLLは、特定の対象帯域で高い忠実度と安定した信号を必要とする低位相ノイズ、高スプリアスフリー・ダイナミック・レンジ(SFDR)のアプリケーションに優れたデバイスであると長い間考えられてきました。
しかし、PLLは周波数出力と波形を正確かつ短時間に同調させることができず、応答も遅いため、アジャイルな周波数ホッピング、あるいは一部の周波数/位相シフト・キーイング・アプリケーションには向いていません。
その他の方式、たとえば、DDSエンジンを内蔵したフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を市販のDACと組み合わせて出力サイン波を合成する方法では、PLLの周波数ホッピング問題は解決しますが、ほかの弱点があります。システム上の主な欠点としては、動作やインターフェースのために必要な電力が高いこと、高コスト、サイズが大きくなることに加えて、システム開発ではソフトウェア/ハードウェア/メモリのオーバーヘッドが増えることがあげられます。たとえば、最新のFPGAでDDSエンジン・オプションを使用する場合、60dBのダイナミック・レンジを持つ10MHzの出力信号を生成するには、最大72kBのメモリが要求されます。さらに設計者には、微妙なトレードオフやDDSコアのアーキテクチャに精通し、簡単に扱えることが求められます。
実際には(表2を参照)、CMOS処理の急速な進歩に最新のデジタル設計技術と改善されたDACトポロジーを組み合わせることによって、これまで広範なアプリケーションでは実現できなかった消費電力、スペクトル性能、コストを可能にするDDS技術が生まれました。コンプリートDDS製品は、ハイエンドのDAC技術とFPGAのユーザー仕様の組み合わせによって実現できる最高の性能と設計の柔軟性にはかないません。しかし、DDSデバイスの単純さとサイズ、電力、コスト面のメリットを考慮すれば、多くのアプリケーションでDDSデバイスが第一候補になると考えられます。
また、DDSデバイスは基本的に出力波形をデジタル方式で生成する仕組みを採用しているため、一部のソリューションのアーキテクチャを簡素化したり、波形をデジタル設定することもできます。一般にDDSの機能と動作を説明するにはサイン波が使用されていますが、最新のDDS ICの場合、三角波や矩形波(クロック)の出力も簡単です。前者の場合はルックアップ・テーブル、後者の場合はDACが不要であり、簡単で正確なコンパレータを集積するだけです。
表2. ベンチマーク解析の要約:周波数生成技術 (<50 MHz)
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フェーズ・ロックド・ループ
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DAC + FPGA
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DDS
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| スペクトル性能 |
高
|
中~高
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中
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| システム電源条件 |
高
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高
|
低
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| デジタル周波数同調 |
なし
|
あり
|
あり
|
| 同調応答時間 |
高
|
低
|
低
|
| ソリューション・サイズ/フットプリント |
中
|
高
|
低
|
| 波形柔軟性 |
低
|
中
|
高
|
| コスト |
中
|
高
|
低
|
| 設計再利用 |
中
|
低
|
高
|
| 実装の複雑さ |
中
|
高
|
低
|

図3. DDSでのSin(x)/xロールオフ
一般的なDDSアプリケーションでは、出力スペクトル内のイメージ応答の影響を抑制するためにローパス・フィルタを利用します。ローパス・フィルタのカットオフ条件を適切に保ち、簡単なフィルタ設計にするには、目安として、経済的なローパス出力フィルタを使用してfOUT帯域幅をfCLOCK周波数のおよそ40%に制限するとよいでしょう。
基本波に対する任意のイメージの振幅は、式sin(x)/xを用いて計算できます。この関数は周波数とともにロールオフするため、基本波出力の振幅は同調された周波数とは逆に減少します。DDSシステムでは、この減少はDCからナイキスト帯域幅までの全域で-3.92dBになります。
最初のイメージの振幅は相当に大きく、基本波の3dB以内です。DDSアプリケーションのフィルタ処理条件を簡素化するには、周波数プランを作成し、必要なfOUTおよびfCLOCK周波数におけるsin(x)/x振幅応答とイメージのスペクトル上の注意点を解析することが大切です。アナログ・デバイセズのDDS製品ファミリーに対応するオンラインのインタラクティブ設計ツールを使用すれば、イメージの位置を迅速かつ簡単にシミュレーションし、イメージが対象帯域の外側になる周波数を選択することができます。その他の役に立つ情報については、「詳細な情報と便利なリンク」を参照してください。
出力スペクトルにおけるその他の異常(DACの積分/微分直線性誤差、DACに関連するグリッチ・エネルギー、クロックのフィードスルー・ノイズなど)は、sin(x)/xのロールオフ応答に従いません。これらの異常は、高調波やスプリアス・エネルギーとして出力スペクトル内の多くの場所に現れますが、通常、その振幅はイメージ応答に比べてごくわずかです。DDSデバイスの全体のノイズ・フロアは、サブストレートノイズ、熱雑音、グラウンド結合、その他の信号結合を生じさせるものを累積的に総合したものによって決まります。DDSデバイスのノイズ・フロア、スプリアス性能、ジッタは、基板のレイアウト、電源の品質、さらにこれが最も重要ですが、入力基準クロックの特性に大きな影響を受けます。

図4. バイナリFSK変調
バイナリ1とバイナリ0は、それぞれ2つの異なる周波数f0とf1として表されます。このエンコーディング方式は、DDSデバイスで簡単に実装することができます。出力周波数を表すDDS周波数同調ワードを変更して、1と0の送信によってf0とf1が生成されるようにします。アナログ・デバイセズのコンプリートDDS製品ファミリーの少なくとも2つの製品(AD9834とAD9838。付録も参照)では、ICに内蔵されている周波数レジスタに現在の2つのFSK周波数同調ワードを設定することができます。出力周波数をシフトするには、専用ピン(FSELECT)によって適切な同調ワードを含むレジスタを選択します(図5を参照)。

図5. DDS(AD9834またはAD9838)の同調ワード・セレクタを使用したFSKエンコーディング
位相シフト・キーイング(PSK)は、データ・エンコーディングのもう1つの簡単な形式です。PSKでは、搬送波の周波数は一定であり、送信される信号の位相が変化して情報を伝達します。いくつかの方式を使用してPSKを実現することができます。最も簡単な方法は一般にバイナリPSK(あるいはBPSK)と呼ばれ、0°(ロジック1)と180°(ロジック0)の2つの信号位相だけを使用します。各ビットの状態は、先行するビットの状態によって決定されます。搬送波の位相が変化しない場合は、信号の状態は同じままです(ローまたはハイ)。搬送波の位相が180°変化した場合(つまり、位相が反転した場合)、信号状態が変化します(ローからハイまたはハイからロー)。大部分のデバイスには位相値を格納できる独立した入力レジスタ(位相レジスタ)があるため、PSKエンコーディングはDDS製品で簡単に実装することができます。この値は、搬送波の周波数を変更することなく、搬送波の位相に直接加算されます。このレジスタの内容を変更すると、搬送波の位相が変調され、PSK出力が生成されます。高速変調を必要とするアプリケーションの場合、位相レジスタが1組あるAD9834とAD9838を使用すれば、PSELECTピンの信号で予め値が格納されている位相レジスタを切り替えて、必要に応じて搬送波を変調することができます。 もっと複雑な形式のPSKでは、4種類または8種類の位相を使用します。これによって、それぞれの位相変化でBPSK変調より高速レートでバイナリ・データを送信することができます。4相変調(直交PSK)では、可能な位相角は0°、+90°、-90°、+180°です。各位相シフトは、2つの信号エレメントを表現できます。AD9830、AD9831、AD9832、AD9835には4個の位相レジスタがあり、これを使用すれば、さまざまな位相オフセットで連続的にレジスタを更新することによって、複雑な位相変調方式を実装することができます。

図6. 2個のDDS部品の同期
複数のDDSデバイスの同期に関する詳細は、アプリケーション・ノートAN-605『複数のAD9852 DDSベースのシンセサイザを同期させる』を参照してください。
Figure 7. Typical network analysis architecture using frequency stimulus.

図8. 超音波流量計
インタラクティブ設計ツール これは、DDS向けのオンラインのインタラクティブ設計ツールです。基準クロックと必要な出力周波数や位相がわかれば、同調ワードを選択するために使用できます。同調ワードのほか、シリアル・インターフェースを介してデバイスを設定するのに使う一連のコード化されたその他の設定ビットも提示します。外付け再構成フィルタを適用した後、選択した基準クロックと出力周波数において理想的な出力高調波を提示することができます。アナログ・デバイセズの設計ツールへのリンクについては、インタラクティブ設計ツール(英語)のホームページをご覧ください。たとえば、AD9834の設計ツールがあります。
評価用キット AD983xシリーズの製品には、回路図やレイアウトを備えたフル能の評価用キットが付属しています。評価用キットで提供するソフトウェアを使用すれば、デバイスのプログラム、設定、テストを簡単に行うことができます(図9を参照)。

図9. AD9838評価用ソフトウェアのインターフェース
その他の便利なDDS情報については、DDSのウェブサイトをご覧ください。

図10. AD9838 DDSのブロック図
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