アナログ・マイクロコントローラで低価格、高効率のPAモニタの心臓部を構成

   Neil Zhao、Mariah Nie、Ning Jia著

  • はじめに
  • システム・ブロック図
  • PAモニタ・モジュール
  • ユーザ・インターフェース
  • ハードウェア接続
  • 結論
  • はじめに
    世界的にエネルギー危機が叫ばれ、傷つきやすい環境を保護しようという声も高まる中で、効率的な無線ネットワーク動作にとって省エネが非常に重要になっています。パワーアンプ(PA)は、基地局やリピータの中核をなしており、それらの総電力消費の半分以上を占めている可能性があります。こうしたPAを監視、制御すれば、効率性や運用コストを改善でき、出力電力を最小限に抑えて最大可能直線性を達成できるとともに、システム・オペレータは問題を発見して解決し、信頼性や保守性を改善することができます。

    アナログ・デバイセズは、PAモニタ1を実装するための3つのオプションを用意しています。ディスクリート・ソリューション、12ビット監視/制御システムAD72942を用いた集積ソリューション、高精度アナログ・マイクロコントローラADuC70263を用いた集積ソリューションです。ディスクリート・ソリューションは、多くの部品、複雑なPCBレイアウト、広いPCB領域などの制約を伴うため、コストがかさみます。AD7294は高レベルの集積、低コスト、高信頼性を特長としますが、機能を実現するには外付けのマイクロコントローラ(MCU)が必要となります。ADuC7026はAD7294と多くの利点を共有しており、さらにMCUを内蔵しています。また、TD-SCDMAアプリケーションに有用な外部同期サンプリングをサポートしています。

    本稿では、ADuC7026を用いてパワーアンプの監視/制御機能を実現するためのリファレンス設計について説明します。この機能には、出力電力の設定、電圧定在波比(VSWR)の監視、横方向拡散金属酸化半導体(LDMOS)のドレイン電流/温度の監視、さらにパラメータが事前定義のスレッショールドを越えたときのアラーム送信が含まれます。

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    システム・ブロック図
    図1はPAモニタのブロック図を示しています。RF信号はアンテナで送信される前に、電圧可変減衰器(VVA)、ADL5323プリドライバ、パワーアンプ、双方向カプラを通ります。ADuC7026 MCUはPAモジュール内の2つのLDMOS段の温度と電流、それにPAモジュールの順電力と逆電力をサンプリングします。MCUはサンプリングしたデータをPCに送信してユーザ・インターフェース(UI)で表示できるようにします。オペレータは、UIを通してシステム・パラメータを調整できます。

    図1. システム・ブロック図

    PAモニタ・モジュール
    温度の監視:パワーアンプの電力消費はその性能に影響します。PAは高稼動の休止状態、かつ低い出力電力で動作するときがあります。多くのエネルギーが浪費され、LDMOSデバイスの温度が上昇し、その信頼性が低下します。PAの温度を監視しその動作点を調整すれば、最高のシステム性能を引き出すことができます。

    図2は、ADT75デジタル温度センサーを使って2つのLDMOS段の温度を監視する温度モニタの機能ブロック図を示しています。8ピンMSOP/SOICパッケージを採用したADT75は、温度を0.0625℃の分解能にデジタル化します。シャットダウン・モード時には、電源電流が3µA(typ)にまで低減されます。

    図2. 温度モニタの記機能ブロック図

    図3は温度監視ルーチンのフローチャートを示しています。ADuC7026 MCUは温度検出コマンドを受信すると、温度検出フラグを設定します。次に、I2C®バスを介してADT75から温度データを読み取り、それをPCに送信します。さらに、ADT75の過大温度ピン(OS/ALERT)を調べて、温度がスレッショールドを越えていたらLEDをオンにします。ADuC7026は温度スレッショールド設定コマンドを受信すると、設定データをPCから読み取り、I2Cバスを介してスレッショールド温度をADT75に書き込みます。マイクロコントローラは温度スレッショールド読取りコマンドを受信すると、スレッショールド温度をADT75から読み取り、それをPCに送信します。

    図3. 温度モニタ・ルーチンのフローチャート

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    電流監視:PAの性能は、時間の経過や温度の変化に対してLDMOSドレイン電流を安定させることで改善できます。また、これによって出力電圧を予想範囲内の値に維持することもできます。温度と高電圧電源はドレイン電流に影響し、また高電圧電源はドレイン電圧にも影響します。LDMOSドレイン電流は、高電圧の電流シャント・モニタで測定できます。ドレイン電流を継続的に監視すれば、オペレータは高電圧電源での電圧サージ発生時にゲート電圧を再調整して最良動作点でのLDMOS動作を維持することができます。

    図4は、電流モニタの機能ブロック図を示しています。このモニタは、高精度、高電圧の電流シャント・アンプAD8211を使ってPAモジュール内の2つのLDMOS段のドレイン電流をサンプリングします。AD8211は20V/Vの固定ゲインを提供しており、ゲイン誤差は全温度範囲で±0.5%(typ)です。典型的なA/Dコンバータ(ADC)と直接インターフェースするバッファ付きの出力電圧は、ADuC7026のオンチップADCでサンプリングされます。ドレイン電流スレッショールドは、I2Cバスを介してADuC7026で制御されるデジタル・ポテンショメータAD5243により設定されます。ドレイン電流がいつスレッショールドの上下限を越えたかは、ADCMP600コンパレータの出力で確定します。ドレイン電流がスレッショールドを越えると、システムは対応するLEDを点灯してオペレータに警告します。

    図4. 電流モニタの機能ブロック図

    VSWRの監視:アンテナ・システムのキー・パラメータであるVSWRは、アンテナ・システムの全構成要素間のマッチングを示します。逆電力はPAの出力電力に影響し、それが高すぎると送信信号が歪められます。したがって、基地局で最適な性能を維持するにはVSWRの監視が必要となります。

    図5はVSWRモニタの機能ブロック図を示しています。このモニタは、双方向カプラとデュアルTruPwr™検出器AD8364を使って順電力と逆電力を測定します。AD8364はデュアル・チャンネルのRMS応答RFパワー検波器で、信号パワーを高精度に計測します。優れた検波性能をもっているため、RFパワーアンプや無線トランシーバのAGC回路などの通信システムを簡単に監視・制御できます。AD8364の出力は、VSWRの計算や送信ライン上でのマッチングの監視にも使用できます。大きなVSWRはアンテナに問題が生じていることを示しているので、PAゲインまたは電源電圧を調整してシステムを保護する必要があります。

    図5. VSWRモニタの機能ブロック図

    自動電力制御:トランスミッタに必要なのは、パワーアンプがシステム条件を満たし出力電力を目標値に保持できるようにすることです。この場合、出力電力は想定領域をカバーできるだけの高い値にしますが、ほかの基地局に影響を与えるほど高くしてはなりません。パワーアンプが過電力状態で動作しないようにするには、過電力保護を提供する必要があります。そうしないと、パワーアンプが飽和し、信号に非線形歪みが生じる可能性があります。したがって、出力電力はテストと制御を行い、安定性を維持する必要があります。

    図6は自動電力制御ループの機能ブロック図を示しています。このループは、双方向カプラ、TruPwr検出器、マイクロコントローラ、電圧可変減衰器などで構成されます。双方向カプラは順電圧をTruPwr検出器に送信し、検出器は信号振幅の変化を追跡します。ADuC7026内蔵のADCは出力をサンプリングします。マイクロコントローラは実際の出力電圧と予想電圧を比較し、比例・積分・導関数(PID)アルゴリズムで制御電圧誤差を調整してパワーアンプが最良の性能を発揮できるようにします。

    図6. 自動電力制御の機能ブロック図

    図7はPIDアルゴリズムのフローチャートを示しています。まず、プログラムは制御パラメータKp、Ki、Kdを初期化し、予想出力電力を設定します。次に、ADCがAD8364の出力をサンプリングします。サンプリング・データはフィルタ処理されて電力に変換されます。その後、予想出力電力と実際の出力電力の差、次の予想サンプル値、および制御電圧がシステム伝達関数に従って計算され、DACレジスタが設定されます。これでサンプル&制御プロセスの1サイクルは完了し、次のサイクルが循環的に実行されます。

    図7. PIDアルゴリズムのフローチャート

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    ユーザ・インターフェース
    ユーザ・インターフェース(UI)は検出されたデータを表示し、オペレータのコマンドに応答します。図8はUI関連のフローチャートを示しています。シリアル・ポートをオープンしたら、通信リンクをUI実行後に起動します。このあと、検出/制御を行うために個別のモジュールを選択できます。

    図8. UI制御のフローチャート

    図9は温度のテスト結果を示しています。高温または低温スレッショールド設定値はいつでも変更できます。この例では、高温スレッショールドが35℃から31℃に変更されています。周囲温度が新しいスレッショールドを上回ると過大温度警告ライトが赤色に点灯し、PCは連続警告音を発します。

    図9. 温度のテスト結果を表示するインターフェース

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    ハードウェア接続
    図10はPAモニタ・デモの接続を示しています。メイン・ボードは6Vアダプタを使って駆動されます。ボードはシリアル・ケーブルでPCに接続されるため、下端のADuC7026 MCUは上端のPCとやり取りすることができます。フラクショナルN型PLLシンセサイザ評価用ボード(EVD)から生成されるRF信号は、メイン・ボードのRF入力と接続されます。RF信号は次の順序でシグナル・チェーン内を送信されます。RF入力→可変減衰器→PAプリドライバ→双方向カプラ→RF出力→スペクトル・アナライザ。ADF4252 EVBの出力周波数は、パラレル/シリアル・ケーブルを介してPCで制御されます。

    図10. PAモニタ・デモのハードウェア接続

    結論
    今回のリファレンス設計は、携帯基地局(GSM、EDGE、UMTS、CDMA、TD-SCDMA)、一対多通信、あるいはその他のRF伝送システムに用いられるPAを監視・制御するための集積ソリューションを提供しています。アナログ・デバイセズの高精度アナログ・マイクロコントローラADuC7026を使ってPAモニタ・アプリケーションを実現すれば、マルチチャンネル、高性能12ビットADC/DAC、オンチップのプログラマブル・ロジック・アレイ(PLA)により柔軟な実装対応が可能となります。変換処理は、外部の変換入力またはPLAの変換出力により開始できます。この処理は、順電圧のサンプリングに同期信号を必要とするTD-SCDMAにとって有用です。集積PLAの利点は明らかです。つまり、ユーザが自社のニーズに従って簡単、簡潔にロジックを実装できるということです。さらに、PID制御、VSWRモニタ、温度モニタ、電流モニタなど、いかなる種類のアルゴリズムもADuC7026で実現できるので、ほかのコントローラはいっさい不要となります。システム設計の観点からすると、この集積ソリューションにより、PCB領域の節減、PCBレイアウトの簡素化、システム・コストの削減、信頼性の改善が可能となります。

    参考文献
    1 www.analog.com/jp/analog_dialogue_vol42_no2_3
    2 アナログ・デバイセズの全製品のデータシートとその他の製品情報については、www.analog.com/jpをご覧ください。
    3 www.analog.com/jp/microconverter

    著者
    Neil Zhao [neil.zhao@analog.com]は、アナログ・デバイセズの中国アプリケーション・サポート・チームでフィールド・アプリケーション・エンジニアの職を務めて1年になります。中国国内のアナログ製品全般を技術サポートする仕事を担当しています。2008年1月に北京航空航天大学を卒業し、通信情報システムの修士号を取得しました。これまでに複数の論文を発表しています。

    Mariah Nie [mariah.nie@analog.com]は、中国アプリケーション・サポート・チームのマネージャです。アナログ・デバイセズに勤務して5年になり、中国国内のアナログ製品全般をサポートする仕事を担当しています。2003年に北京理工大学を卒業し、電気工学の修士号を取得しました。

    Ning Jia [ning.jia@analog.com]は、フィールド・アプリケーション・エンジニアであり、中国アプリケーション・サポート・チームに所属しています。アナログ・デバイセズに勤務して2年になり、中国国内のアナログ製品全般を技術サポートする仕事を担当しています。北京郵電大学を2007年に卒業し、信号情報処理学の修士号を取得しています。

     

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