マンチングでコストと部品を削減し、心も安らかに

質問:

アンプの 2つの入力のインピーダンスをマッチングさせる必要は本当にありますか?

RAQ:  Issue 116

回答:

テレビが家庭に普及し始めた 1940 年代、テレビは重く、複雑で、真空管が何本も組み込まれていました。多数の部品と、真空管からの発熱により、テレビは信頼性が低く、しかも高価でした。当時、機を見るに敏な起業家のイノベーションによってテレビを大衆のものにする好機が到来しました。

Earl “Madman ” Muntzは、独学でエンジニア知識を得た、傑出したビジネスマンでした。ポスター広告では、フランネルの下着にナポレオンハットという彼の姿がよく登場しました。 8 歳でラジオを修理し、14 歳で最初のカーラジオを組み立てた彼は、その後、高校を中退して中古車販売を始め、成功への一歩を踏み出しました。やがてテレビの販売を手掛けることに決め、まず 1 台購入して分解し、その仕組みを調べました。Muntzは、動作に必要な最小限の回路だけになるまで次々と回路を除去しました。複雑さ、真空管の数、電力、コストを減らし、競合製品よりも若干信頼性の高いテレビを開発したのです。

後に、彼のやり方は「マンチング」と言われるようになりました。これは、Muntzがペンチを持ち、デザインフロアを歩き回りながら、部品を 1 つずつ取り外して、テレビが動かなくなると、「では、この最後の部品を元に戻さなくてはならんね」と言ったことに由来しています。この手法により、初めて 100 ドル未満のテレビを販売できるようになりました。Muntzは最も成功した家電メーカーの 1 つとなり、1953 年のピーク時には年間 5,000 万ドル以上を売り上げました。

この教訓は、多くの電気技術者にとっては当たり前かもしれません。つまり、部品は少なければ少ないほど良いのです。多くの場合、シンプルで簡潔な設計は、信頼性の向上とコストの削減につながります。設計がほぼ完成したら、見直して、動作に必要ない部品を取り除くとよいでしょう。有益というより有害になっている部品はありませんか?どこから始めるべきでしょうか?

皆さんは、2 つのアンプ入力から見た信号源インピーダンスをマッチングさせることで、入力バイアス電流によるオフセットを低減できると教えられたと思います。例えば、一般に反転アンプ構成では、反転入力に接続する複数抵抗の並列値にマッチングした値の抵抗を非反転入力とグラウンドの間に接続します。しかし、これが有効なのは、入力オフセット電流(入力バイアス電流のミスマッチ)が入力バイアス電流よりも小さい場合のみです。ADA4077-2ADA4177-2など、多くの両電源用高精度アンプでは、入力バイアス除去機能があります。また、ADA4610-2などの FET 入力(および一部の CMOS)アンプの場合は、バイアス電流はごくわずかです。これらのアンプの入力バイアスをマッチングさせるために抵抗を接続していたとしたら、たぶんその抵抗を除去できるでしょう。抵抗によって、ノイズが付加され、製造時の不具合が発生する可能性が高くなります。抵抗が本来あるべき場所になければ回路は動作しないでしょうし、もしそこにあると、破損する可能性のある2 つのハンダ接合部も増えます。

これはほんの小さな一例ですし、この例にとどまらないことは確かです。ご自身の設計において、あるいは設計審査に参加した場合は他の人の設計においても、「マンチング」によってコストを削減し、信頼性を高めることで、品質管理部門(や不機嫌な上司)とのやり取りを避けることができます。

 

注意:

Madman Muntzは自分の広告さえもマンチングしました。宣伝のために飛行機雲で「Muntz Televisions」と空に書いたのですが、2 文字目の途中で文字がかすんでしまいました。このため、言葉を短くして「Muntz TV」としました。今や、この造語は広く使用されるようになりました。

著者

Gustavo Castro

Gustavo Castro

Gustavo Castroマサチューセッツ州ウィルミントンの高精度シグナル・コンディショニング・グループに所属するアプリケーション・エンジニアです。2011年1月のアナログ・デバイセズ入社以前は、10年間デジタル・マルチメータやDCソースなどの精密計測機器設計に従事していました。2000年にメキシコのモンテレイ工科大学で電子工学の学士号を取得しました。これまで2件の特許を取得しています。